第2話ー5
それは昨晩の話である。
「いやー、食べた食べた。ステーキ旨し」
カルマちゃんはロッキーの案内で行ったお肉屋さんと提携している食堂で晩御飯を食べてきたところである。
カルマちゃんはステルスの機能が付いたグランピングでキャンプを張って、公園生活をしていたらしい。
そして今日、お金を手に入れたのにそれでもキャンプ生活をするらしい。
「いやぁ~、癖になっちゃたかな。キャンプ生活」
なんて言ってるが、
「カルマちゃん。ちゃんとお風呂入ってる」
「う、実は公園の噴水で水浴びです」
「いや、ここらへん、温かい気候だけどそれでいいの」
「う~ん、ダメな気がするけど今はサバイバルだからと割り切ってたし、研究中なら1週間ぐらいはいらないこともざらだからいいかなぁ~って」
「ダメダメだよカルマちゃん。明日ロッキーと会ったらお風呂とかの相談もしようか」
「そうですね」
そう言ってテントに戻って来たカルマちゃんは、テントの中からロッキングチェアを持ち出して、公園の芝生においてそこに腰かけた。
公園は今では星明りに照らされるだけで人気のない暗い場所、――――になるはずが、俺様達にはテントから漏れる明かりで十分な光源となっている。
「これって電力はどうしてるの?」
俺様が疑問に思って聞いてみると。
「メガソーラー。テントの外幕がソーラー発電のパネルの役割を兼ねてるんだ。」
「へぇ~、エデンではそんなものも作られていたんだな。」
「何を隠そう私の制作物である」
「マジ?」
「マジである。だからメンテも自分でできるのだ。――とは言え材料とかこっちでも手に入るもので代用できないか要研究です」
さすがは化学が発展したエデンで最高峰の頭脳が集まる大学の院生なだけはあるじゃないか。
「それでカルマちゃんは何で工科院生になったの」
「ん~~~~~」
カルマちゃんはテントからの明かりを絞って星空を眺めはじめた。
そこで、俺はなんか雰囲気が変わったことに気が付いた。
「ごめん」
「ザック~。なんで急に謝るの~」
「なんか聞いちゃいけないことだったみたいに感じたから」
「そんなことはないよ~。――ただ、ちょっと感傷的になっちゃっただけ~」
暗く星明りだけではカルマちゃんの表情は見えない。
暗視モードに切り替えれば見えるのだろうが、ソレはダメじゃないかと思って使わなかった。
「私てっさ~、大学の研究室で生活してたのよ~。なんでか分かる?」
「それだけ研究熱心だったんだろ」
俺様はカルマちゃんの質問に答えながらふと気になることがあった。
「ソレもあるんだけどね~。家に帰る意味が無かったんだよ」
家に帰る意味がない?家族は心配しなかったのか。
今も家族の心配とかしてないみたいだし、もしかして――――
「私には家族が居なかった。事故でみんな死んじゃったから。そしてね」
カチャッと軽い音が聞こえた。
暗がりの中に浮かぶカルマちゃんのシルエットは、片手でもう一方の腕を外していた。
「私も体の大半を損傷しちゃったの。この体はほとんどがサイボーグなんだ」
そう言って外した腕を元に戻すカルマちゃん。
「私の研究テーマは義肢、自分の体をもとにサイボーグの研究をしてたの」
しばし沈黙が流れた。
俺様はどう声をかけるべきか悩んでしまった。
「研究は自分の為でもあったけど、同じ様に義肢を求める人のためにより良い物を作るのが目的だったんだ」
なんて言っていたが、なんだか寂しそうだ。
そりゃそうだろう。
家族を失って、友もいない一人っきりで異世界に漂流してきたカルマちゃん。
「話し相手が欲しかったから」と言って俺様を創ったカルマちゃんだが、きっとそこには自分の研究をこの世界でも続けたいという思いもあったのだろう。
今はサイボーグは無理でも、今後の研究を続けられるかの実験も兼ねてたはずだ。
今のカルマちゃんには俺様を作ったということ以外に心のよりどころがないのだろう。
だから伝えるべきだ。
「カルマちゃん。俺様は……いや、私は貴方の武器であり、家族であり友である。――――だから貴方は一人ぼっちじゃない」
「――――ザック」
言ってやった。
出来るだけ紳士らしく、口説き落とすくらいのつもりで言ってやった。
それにカルマちゃんは――――
「ぷ~~~~~。似合わないよザック。キザすぎ~~~~~」
と笑って返された。
あれ~~~、そこ感動してくれないの~~。
俺様、ショック。
「ふふ、……ありがとう」
その風に消えそうな小さな声は俺様の高感度センサーに届いた。
これはこれで嬉しいものだ。
「さて、明日は仕事だろ。そろそろ寝ようか」
俺様は何があってもカルマちゃんのお世話はやめない。
そして、改めてやもリンとの戦闘シーンに切り替わるのだが。
やもリンはカルマちゃんの力を警戒して距離を取っている。
しかし、戦意は失ってないらしく口を開けて威嚇しながらカルマちゃんを食べようと狙っている。
だがそうはさせない。
俺様がカルマちゃんの武器であり、カルマちゃんがオレ様を振るう限り、やもリン程度には負けるはずがない。
なんてったってこっちは世界征服を目指しているんだからな。
ギュンッ!っという音がカルマちゃんの下肢から聞こえると、爆発的な――いな、実際に地面が弾けるほどのパワーを発揮して、カルマちゃんの体を跳躍させた。
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