第24話 雪融けの一日
俺達が無事に魔法を使う為の器官の儀式を終えて手に入れた。
普通ならばその頃にはもう既に雪解けが終わっているのだが、まだ雪が降っているうえに火山活動の火山灰まで降り積もってエルフの隠れ里から一歩も外に出ることが出来なかった。
それでエルフの隠れ里を歩き回った。
隠れ里の結界のほぼ中心に緑の魔石が安置された社がある。
その敷地内には神木として、エルフ族が大事にしている世界樹の子孫の若木が植えられている。
まだ天を突くほど大きくは無いが神木と呼ぶにふさわしい大きさに育っている。
その社を中心にしてエルフ族が住み暮らすキノコの家が何棟か建ち並び、田畑が作られているのだ。
結界のおかげで田畑には常に植物が育っている。
そのおかげで俺が連れて来た馬達も肥えている。
問題は長命なエルフ族に子供が出来にくい事だ。
エルフの隠れ里に住む人口は二百人弱で、数十年に一人の出産率だという。
ただこの長い冬の影響かお腹の大きな女性が目立つ。
今年のその異常に長かった冬がやっと終わり、いつもは夏真っ盛りの時期になってようやく雪融けが始まった。・・・前世は地球温暖化もあって異常気象が多かったがこの世界も魔王復活の兆しの為か異常気象が続くそうだ。
何はともあれ雪解けが進んだことから今日の仕事は、エルフ族の隠れ里の近くで倒した地竜の解体だ。・・・俺が倒したのではなく、ドルウダという6本足の狼との共倒れなのだが。
ドルウダについては、俺が色々な魔法の習得で、真は魔力量の増加をしている間に、エルフ族の隠れ里の住民総出で雪の中で解体したそうだ。
エルフ族の隠れ里の住民と言っても二百人にも満たないので何をするにも総出で仕事をすることになるのだ。
ドルウダの毛皮は防寒着として重宝している。
ドルウダは夏場は体毛は黒い色で、冬場になると白くなる。
不思議なことに、雪が降る前に黒い体毛のドルウダを倒して、雪の中に埋めておけば真白な体毛に変わっていくのだ。
体毛が抜け落ちて生え変わって色が変わるわけではない、体毛の管の中の色素が脱色と着色によって色が変わるようだ。
脱色された体毛は毛の管の中の色素の代わりに空気の層ができて暖かくなるそうだ。
真も空気の層が出来た暖かい白いドルウダの毛皮を着ている。
帽子はドルウダの頭部を体は貫頭衣風にして革紐で縛っているのだ。
裁縫の技術やボタンの技術が低いと言うか無いので、俺と真が持ち込んだ裁縫セットが凄い興味を持って迎えられたが、厚い毛皮で針が折れた。・・・これは何とかしなければいけない!エルフの隠れ里には鍛冶屋が無い。
鍛冶師と言えばこの世界ではドワーフ族なのだがエルフ族とは仲が悪い。
俺がドワーフ族の里を訪れて鍛冶仕事を注文するのは良いのだが、ドワーフ族の里もエルフの隠れ里同様に結界があるそうだ。
その結界は自然の結界で風魔法が使えないと行けないそうだ。
どんな場所なのだろう?
話がそれた、何百体ものドルウダの毛皮でエルフ族の隠れ里の収入はいつもにもないほどになっているそうだ。
見栄えの良くないドルウダだが、白い毛皮と肉の方も柔らかくて美味しい。
山に降った雪や、永久凍土の
それにドルウダから取り出した魔石は真黒な魔石で爆裂魔法石と呼ばれている。
成獣だと拳ほどの大きさの魔石で魔力を注いで投げると爆発する。・・・前の世界の手榴弾みたいなものだ。魔力の注ぎ方で殺傷力の高い手榴弾や爆発の音響により行動を不能にする音響手榴弾にもなる優れものだ。
少し大きさを調整して魔銃の弾丸にもなるのだ。・・・弾丸と言っても飛ばすのではなく魔法を噴射させるのだ。魔銃の銃把に魔力を注ぎながら引き金を引くと弾丸替わりの魔石は粉々になってエネルギーを放出するのだ。俺の持っているボルトアクションのライフル銃とは比較にならない破壊力だ。ただ単発なのだよ。それに下手をすると魔石のエネルギーによって銃身が吹き飛ぶこともある。
手榴弾や魔銃の弾丸にもなるドルウダの爆裂魔法石も千個以上も手に入ったのだ。
何はともあれ、雪融けで天気の好い今日は地竜の解体をする。
真は宝剣シルバーソード、和泉守兼定作で刃渡り2尺1寸9分(約66.4センチ)の鞘を払って構える。
ザルーダの爺さんがあらかじめ地竜の解体用に記された線に沿って宝剣シルバーソードを振るう。・・・宝剣を解体に使うなんてと思っている方もおいでると思いますが、地竜の体表はとんでもなく硬い、硬さだけならダイヤモンド並みだ。
宝剣を振るわないと切れないのだ。
切り取ったダイヤモンド並みの硬さを誇る地竜の鱗も加工するのが大変なのだ。
高熱で加熱して、柔らかくなったところで加工する。・・・まるで鍛冶仕事だ。
これだけ苦労した鱗は、下手な金属の鎧よりも強固なうえに軽い。
地竜の鎧や盾はこの地域の兵士達には垂涎の的なのだ。・・・その分とんでもなく高価だ。
そんな硬い地竜に食らい付いていたドルウダの牙や爪も武器として加工される。
俺も真にだけ働かすわけにはいかないので、地竜の首を切り落とすことにした。
ザルーダの爺さんがこの線で切り落とせと言って、ニヤニヤ笑っている。
真も手を止めて俺を見る、それに気が付いた手伝いの皆が俺を見ている。
俺も愛刀、刃渡り2尺5分(約78センチ)で少し刀身が長く薩摩の国の名刀工、波平行安の作刀の鞘を払い、じっと地竜の首の線を見つめる。
「エーイ」
と気合と共に愛刀を振り下ろす。
『ズシャ』
と言う音共に太い地竜の首が一刀のもとに切り落とされた。
『ドサリ』
と落ちた地竜の首が俺を恨めし気に見ていた。
地竜の俺を見つめる目は死後高価な宝石になる。
四つ目の一つは俺が投げた両刃の剣が突き刺さっている。
それを知っていれば・・・無理か他はとんでもなく硬いのだ。
見学していた皆からパチパチと拍手が起こった。
ザルーダの爺さんが残った6本の足も切り飛ばしてくれというのだ。
しかし人使いが荒い爺さんだ。
地竜の6本足どころか尻尾も切り飛ばして運びやすくして、エルフ族の隠れ里に運び込んだ。
今日も最近これほどの大物を狩ったことがないので宴会だ。
地竜の魔石も運び込まれた。・・・魔石は地竜の心臓で、鼓動が止まると心臓に血が集まって魔石に変わるのだ。赤い地竜の血で出来た地竜の魔石は何故か緑色になり結界魔法石になるのだ。
里の中央の社に置かれている緑色の魔石に次ぐ大きさだ。・・・扱いについては後日協議することになった。
宴会で酒を飲まされた。・・・。
気が付いたらまた裸の真を抱いていた。
今度もまた真に睨まれた。
酒は止めよう。・・・それにこの世界では酒を飲むことができても、前世は駄目だからな!
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