第22話 魔法修行
俺と真はエルフ族の隠れ里の周り山脈、その中で一番高い山にある乳白色の泉で素っ裸で浸かったまま七日七晩寝ずに修行すると
『魔法を使う為の器官』
ができるというのだ。
その泉で、武者振り付きたい裸の真という誘惑に耐えて七日七晩の修行した結果、どうやら魔法を使う為の器官が出来たようだ。・・・この修行の結果エルフ族特有の耳にはならなかったのでエルフ族と同様に長命になったかどうかはわからなかったのだが・・・。
朝日が昇る七日七晩の修行を終えたところで丁度魔法を使う為の器官が出来たと思った途端、乳白色の泉が沸騰し始めて、乳白色の泉から赤黒い泉に変わった。
予定よりも早く御山が怒ったのだ。
火山が活動し始めたのだ。・・・修行が終わったと思って真と濃厚なキスまでしたのに後が火山活動の影響でそれ以上できなかった。
俺の下半身の
『蛇の生殺し』
だ。
俺と真は白装束に着替える間に火山活動がさらに活発になり状況が悪化する。
噴火して小さな火山弾が飛びまわり始めた。
俺は真をお姫様抱っこをして駆ける。
真が
「足はとうに治っているよ。」
そういわれても・・・真を降ろすよりも俺が真を抱えて走った方が速いうえに、少しでもここから離れたい。
『ボン』
というさらに大きな爆発音が聞こえて、大きめの小石が飛んでくる。
俺が足に力を入れると。・・・何かを感じた。
体が飛ぶようにして進む。
これが身体強化魔法か?
抱いている真の体が緑色に輝き広がった。・・・飛んできた小石が緑色の輝きが広がって出来た緑色の障壁にぶつかって
『ガーン』
という音をたてて落ちていく。
この緑色の障壁が念動力のバリアか?結界魔法か?こいつのおかげで寒さも、噴き出す火山性の悪性ガスも影響しなくなった。
二人で一体になって火山の噴火活動を避けながらエルフの隠れ里に向かって走っていく。
峠の道で、
ここはエルフ族の隠れ里の出入り口だ。
魔法を使えるようになったらエルフ族の隠れ里に自由に出入りできると言う。
真は念動のバリアを使っていたので彼女は間違いなく魔法を使える。
問題は俺だな、体力勝負な俺なので、身体強化魔法が本当に使えているか不安だ。
ままよ!真を抱いたまま隠れ里の出入口に走り込む。
入れた魔法を使う為の器官を手に入れたのだ。
いきなり走り込んできた俺と真を見てザルーダの爺さんが喜んだ。
「三日も早く火山の活動が開始されたようじゃ。
普通は一番高い山の乳白色の泉が噴火口で、泉が沸騰して湯煙が上がり水の色が赤黒く変わるだけだと言われていたのじゃ。
それが火山が噴火して、噴石による火山弾が飛び交い始めて、火砕流も起きそうなのじゃ。
それはそうとして如何やら二人とも魔法を使う為の器官ができたようなので、結界強化に協力してくれないか。
場所はこちらじゃ。」
と言ってザルーダの爺さん俺達の前を歩き始めた。
少し歩くと俺達の方を振り返って
「しかし仲が良いの。
さぞかし、今回の修行は苦しかったじゃろうに。
フォッ、フオッ、フオ。」
と笑われて気が付いた。
俺がいまだに真を大事そうにお姫様抱っこしている事に。
どうりで、火山弾が飛び交っているのにエルフ族の皆がニヤニヤと笑って俺達を見ていたはずだ。
真を慌てて降ろす。
真が
「ざ~んねん。」
と節をつけて小声で言った。
俺が真を見ると小声で言ったのが聞かれたと悟ったのか茹でタコのように真赤になっている。・・・ちょ~可愛い!俺も変な節で考えた。
ザルーダの爺さんが連れて来てくれたのは、エルフ族の隠れ里の丁度中心にある大きな緑色の魔石を安置した
お寺の中では七人の白装束の巫女さんが・・・(やっぱり社か?)緑色の魔石に手をかざしている。・・・異世界なのに何か俺の知っている文化がごちゃ混ぜ状態だ。
巫女さん達の魔力で緑色の魔石が輝き脈動している。
ザルーダの爺さんが真に
「勇者様、この魔石に手をかざして下され。」
という、真は言われたように手をかざすと緑色の魔石の輝きが増して、さらに力強く脈動する。
魔石に手をかざしていた巫女さん達が驚いて真を見る。
ザルーダの爺さんが今度は俺に
「淳一、勇者様の腰に手を当てて魔力を注いでみなされ。」・・・エッ俺!
上手くできるかな、本当に身体強化魔法が発動したかも疑わしいのだが。
ままよ、俺は真の
真をお姫様抱っこをして走りだす時に感じた何かを引っ張り出して、手から真の腰に向かって流す。・・・イメージだ。
「ア、ア~ン」
等と
思わず手に力が入って、何かがさらに真の中に押し込まれた。
さらに緑色の魔石が見ていられない程の輝きが増して、強い脈動を感じた。
噴石が結界に当たる音も、小さな地震の振動も無くなった。
ザルーダの爺さんが結界が強化されたと言う。
それを聞いて気持ちが緩んだのか俺にもたれかかるように真が倒れてきた。
思わず真の腰から手を離して、体を抱き留めた。
「あれ?俺も力が入らない!」
俺も真と倒れてしまった。
倒れた途端、今まで九日以上まともに寝ていなかったのを思い出した。
寝ると泉の底の灰色の土が無くなって深くなり、俺達を溺れさせたのだ。
ここは緑色の魔石を安置した神聖な社だが床板がある。
溺れる心配はない!
硬い床と俺のお腹の上に眠る真。・・・俺愛に溺れそうだ!
愛よりも睡魔に負けた!
俺は真をお腹に乗せた状態でそのまま眠りに落ちた。
美味そうな良い匂いがしてきた。
目を覚ますと、俺のお腹の上に真がいた。
真は俺に背中を預けるようにして寝ていたはずだ。・・・今は俺の方を向いて抱き付くようにして寝ている。
可愛い頭が動く、顔を上げて真がいつもの口角を上げてニッと笑う
「淳一君だ~!お早う!だ~い好き!」
と言って腕に力を込めた。
途端に俺も真も覚醒した。
真は俺から飛び降り、俺も真も何故か正座した。
ザルーダの爺さんが俺達に
「オッ、起きたのか。
あれから三日三晩あの状態で寝ていたのじゃ。
ここで食事を摂る許可は取ってあるのじゃ。
さあ飯にしようかの。」
肉が食いたかったが、出されたのは薄い粥だった。
長い間、ほぼ絶食の状態で硬い物を食べると胃がびっくりして吐くそうだ。
胃が小さくなったのかあまり食べられなかった。
食事が終わると、ザルーダの爺さんが
「もう一度この緑の魔石に魔力を注いでみろ。軽くでいいぞ。」
と言われた。
俺と真が立ち上がると、巫女さん達が見学だと言って入ってきた。
見学する巫女さん達の目が怖い。
緑の魔石は思った以上に大きい。
真が目を閉じて、手をかざす。
緑の魔石が輝いて脈動を始めた。
俺は真の腰に手を添えて、俺の魔力を注いで見る。
前回から魔力をはっきりと感じるようになった。
また真が
「ア、ア~ン」
等と
すると爆発的な輝きが起きた。
ごっそりと魔力を持って行かれるのを感じた。
今度も二人とも目を回して腰を落として気を失った。
俺のお腹の上で真も倒れていた。
一晩倒れていたようだ。
ザルーダの爺さんがまた薄い粥を渡してくれた。
真が童女のように俺の膝の上に座っている。
真はまだ急激な魔力切れでボーッとしているので俺が粥を飲ませた。
ザルーダの爺さんが
「やっぱりお前は20歳以上にしか思えないのじゃ。
勇者様の保護者のようじゃの。
フォッ、フォッ、フオ。」
と笑われた。
俺は真を肩にのせて、ザルーダの爺さんの家に行った。
真を肩から降ろして、真に続いてザルーダの爺さんの家に入ろうとしたら、家の玄関の梁に額を
『ゴーン』
とぶつけた。
真に笑われた。・・・完全にかがんで梁にぶつけないようにして入ったのだけれど?梁が動いた?
ザルーダの爺さんの家の地下室に三人でいた。
「今回の修行は上手くいったようじゃのう。
二人には魔法を使う為の器官が発生したが、エルフ族の身体的特徴の耳が尖っていないようだ。
そうなると年齢が延長されて長命になったかどうかは分からないのじゃ。
これは十年後、二十年後でないと分からないのじゃ。
実は先代の勇者様の武田信虎も魔法を使える器官の儀式に挑戦したことがあるのじゃ。
先代の勇者様は儀式6日目、以前はいた8人目の巫女が懸想して泉の中に裸になって入ったのじゃ。
先代の勇者様は達成目前に巫女を抱き、精を放ってしまったのじゃ。
それで先代の勇者様は魔法を使う為の器官を作る儀式は失敗したのじゃ。
その巫女はエルフ族の隠れ里から逐電してしまったのじゃ。
巫女は代々血族の女性が引き継ぐのじゃが、8人目の巫女の血統には男ばかりで女の子が生まれないので、その地位は空位のままじゃ。
そこで勇者様には8人目の巫女の役職も兼ねてもらうことにしたのじゃ。
真様を勇者様と何故呼ぶようになったかと?
それは勇者様のお腰の太刀が宝剣シルバーソードに変わっておろう。
森に狩りに行った時に見つけたのじゃろう。
それで勇者様に格上げじゃ。
この異常気象のせいか雪融けがなかなか進まないのじゃ。
山岳地帯の為もあるのじゃろうが、どうやらまだ長い間、雪で閉ざされた社会になりそうじゃ。
それにお山がまだ怒っておいでじゃ。
この分では経験や言い伝えから3ヶ月は閉じ込められそうじゃ。
その間だけでも8人目の巫女役をやってもらえんかの?
どうじゃ。」
と言われて、真は同意した。・・・8人目の巫女修行に夜は緑の魔石が安置された社で真は眠ることになった。
真と別れた俺は、ザルーダの爺さんの家で魔法の特訓中だ。
魔法を使う為の器官をつくる儀式によって、二人とも魔法を使うことが出来るようになったが、真は多彩な魔法を使えるが魔力量は俺ほどではなく、俺は魔力量は膨大だが身体強化魔法が使えるぐらいで、他の魔法がほとんど使えない状態だ。
それにさらに問題なのが二人とも魔力のコントロールが効かない事だ。
それで真の腰に手を置いただけで、真の色香に惑い一気に魔力を流すと言う魔力暴走を引き起こした。
俺はまずはザルーダの爺さんがアマエリヤ帝国の王城内の自室から持ってきた魔法の教科書、魔法大全なる全巻揃った百科事典を書き写すことを命じられたのだ。
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