第20話 魔法を使う為の器官?
俺と真はこの世界にアマエリヤ帝国の元宮廷魔術師のザルーダさんの召喚魔法によって召喚された。
召喚される前の世界の季節は桜の咲き誇る山々から新緑の葉が眩しい山々になる春の初めだった。
召喚された世界の季節は、これから雪が降り始め山々が真白に綿帽子を被ったようになる秋から冬への世界だった。
本格的な冬への世界になる前に越冬のための準備で狩りをした帰り、雪道を俺達はエルフ族の隠れ里に向かって歩む。
戻り付いたエルフ族の隠れ里は暖かかった。
真冬の世界から元居た世界と同じ春の温かさだ。
この里に戻って俺と真は魔法を勉強することにしている。・・・この世界は魔法を使うことができるファンタジーな世界だ。何としても手に入れたい。
ザルーダの爺さんのキノコの家の隣に同じようなキノコの家が建っている。
このキノコの家は俺と真の家・・・ではない!?
アマエリヤ帝国帝都の城で元宮廷魔術師ザルーダの爺さんにあてがわれた部屋の中にあったこの世界では珍しい書籍や科学実験の諸機材をエルフの隠れ里にある元居た家の地下に入れたが、並べきれなかったので図書館兼機材置き場として新築されたものだ。
そうは言っても、俺と真はザルーダの爺さんに魔法の勉強をこのキノコの家で教えてもらっており、この家で俺は寝泊まりしていることから俺の家みたいなものだ。
真は残念ながら夜はザルーダ爺さんの弟子であるアリアナの家で魔法の勉強をして泊まっている。
アマエリヤ帝国帝都の城であてがわれたザルーダの爺さんの部屋から持ち出した書籍は全てこの家の図書館の書棚に並べられている。
その書籍の中で魔法大全なる百科事典が全巻揃っている。
これが俺と真の魔法の教科書だ。
魔法を使う為には、まず基本的な魔法の素養が必要で、その知識を基に魔法を使うのだが、魔法を使うと言っても俺と真は魔法を使う為の重要な
『魔法を使う為の器官』
自体が体に無い。
この魔法を使う為の器官はこの世界に住むザルーダの爺さんのようなエルフ族等の特定の亜人種は産まれた時から持っており、動物でこの器官を持つものを魔獣と呼んでいるそうだ。・・・この世界の人類も持っていないが時々この魔法を使う為の器官が発現することがある。
当然俺と真は魔法を使うこの世界に無理やり連れてこられたので魔法を使う為の器官はない。
それでも、この魔法を使う為の器官を作る事ができるそうだ。
先にも書いたが、この世界の人類も人によってはある一定の年齢の期間に魔法を使う為の器官が発現することがある。
その器官がエルフ族や魔獣のように心臓付近に発現すれば良いが、それ以外の場所に発現すると生活が出来なくなる事もあるそうだ。
その危険性を最大限抑えるために試行錯誤して考えられたものが、このエルフの隠れ里で行われる魔法を使う為の器官を作るための儀式である。
魔法を使う為の器官を作るための儀式には条件が幾つかあるが、その条件の一つが先ほども言ったが魔法の素養である。
その為にザルーダの爺さんの図書館で意味の良く分からない魔法大全と言う教科書を読まされ書き写させられた。
魔法には精霊と契約して出来るようになる火魔法や水魔法等の精霊魔法と、身体強化魔法や結界魔法等の個人個人特有の魔法があるようだ。
条件のまた一つが20歳以下で無いと魔法を使う為の器官が出来ない事だ。
俺の顔を見ながらザルーダの爺さんが
「そんなわけで淳一には器官を作ることが出来ない。」
と重々しく宣言された。・・・エッ!
途端に俺の横に座っていた真が腹を抱えて笑い出した。
失礼な!俺はまだ、前の世界で言えば高校1年生、真と同じ16歳だ!
真はまだ誕生日が来ていないので15歳だって?・・・そんなの関係ない見た目で判断するなよ!
俺の年齢を聞いてザルーダの爺さんは謝ったが
「ここで問題がある。
条件のもう一つが、夫婦の契り、要はセックスをした事があっては駄目だ。」
という。・・・見かけは大人だが実際は童貞だよ。
隣の真と赤い顔をして
「問題ない!」
と声を揃えてしまった。・・・恥ずかしい!
さらに
「儀式を行う場所はエルフ族の隠れ里を取り囲む山脈の最高峰にある泉に浸かりひたすら座禅を組んで己を見つめるのだ。
儀式の間は泉から出ることは
その場所では七日七晩の間、
と説明された。
それで真が
「それなら私は来年その儀式を行う。」
というがザルーダの爺さんは
「問題は儀式を行えるのが20年間の間で、その期間も明日から14日間だけしか儀式を行う日が残っていないのだ。
この儀式が行える最後の14日だ。その後50年間は山が怒りこの儀式が行えない。」
というのだ。
その泉のある場所には3日程歩いていかなければならず、往復を考えると明日から向かわないと日程的にきつくなるという。
それに山が怒ると言うのは火山活動が活発化する事だ。
復路で火山活動に遭遇するかもしれない危険な行事になった。
何はともあれ、その長い周期を持つ
エルフ族には元々魔法を使う為の器官があるので儀式を行う必要が無い。
それでザルーダの爺さんが魔法について教えていたが、魔法を使う為の器官の儀式を今まで完全に失念していたのだ。
特にエルフ族にはそのような儀式自体が必要ないので間欠泉の期間についても完全に忘れていたと言うのだ。
ザルーダの爺さん自分が儀式を忘れていたのにしれっとしてさらに
「問題はこの儀式を始めてから5日後あたりから最後の日までが試練なのだ。
性欲が異常に高まり特に体が火照り、お互いが体を求めあうが夫婦の契りは駄目だ。
肌を合わせるな、自慰行動など精を放ってもならない。
この溜まった精がエルフ族と同様に耳が尖り、魔法を使う為の器官に変化するのだ。」
と説明してくれた。
しかし、俺にとってはとんでもない試練だ。
こんな美少女と二人で、それもお互い素っ裸で七日七晩もの間、同じ温泉に浸かっているなんて、思っただけで下半身がむずむずする!
しかし、この試練に耐えなければ魔法を使えない!
ザルーダの爺さんは
「時間が無いので明朝早朝には出発だ。
それまでには答えを出せ。
持ち物はこれだけだ。」
と言って俺と真の前に、お遍路さんのような白装束に菅笠そして魔法使いの杖に背負子に往復の保存食の入った魔法の袋と儀式の間に読む経典として法華経の経典を置いた。
俺と真はその晩二人で相談した。
直ぐに結論は出た!
翌朝には二人ともお遍路さんの様な白装束を着て菅笠をかぶり手には魔法の杖を持ち懐に食糧の入った魔法の袋と経典を入れて、魔法を使う為の器官の儀式を向かう事にしたのだった。
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