第155話 いざ、徳川邸へ!!
「と、俊哉……助けてくれてありがとう……」
「何を言っているんだよ、陽菜ちゃん!! 俺は当たり前の事をしただけだよ。でも無事で良かったよ……ほんと良かった……」
「俊哉……」
俺は監視台の上にいたので陽菜さんを助ける事は出来なかったが、俊哉が直ぐにプールに飛び込み助けてくれたので大事には至らなかった。
「春日さん、羽柴さんの足の具合はどうですか?」
「伊緒奈お嬢様、私は医者では無いので何とも言えないですが、急に足がつっただけだと思いますのでしばらくすれば痛みは引くと思われます」
「そう、なら良かったわ。羽柴さん、足の痛みはどうですか?」
「ありがとう、徳川さん。痛みはあるけど、つった時よりはマシだよ。春日メイド長さんの言われる様にしばらく休んでいれば痛みは治まると思うけど……」
「それはダメだよ、陽菜ちゃん!! 一応、病院に行っておいた方がいいよ!! 万が一って事もあるしさ……」
俊哉の言う通りかもしれないな。
「陽菜さん、俺も俊哉の言う通りだと思います。念のために近くの病院に行った方が良いのでは?」
「うーん、俊哉や颯君がそう言うなら病院に行こうかなぁ……」
「羽柴さん? 病院に行かれるのは私も賛成ですが、この『水泳対決』はどうされるおつもりですか? 一応、第三試合は私が勝ったわけですが……徳川さん、上杉さん、私の三名で決勝戦をやっていいのですか?」
「あら? 第三試合は伊達さんが勝ったんだねぇ? そうね、言い出しっぺの私がこんな形で負けちゃったのは恥ずかしいけど約束は約束だからねぇ……私が病院に行っている間に三名で決勝戦を進めていてくれていいわよ」
イヤイヤイヤッ、こんなアクシデントの後に決勝戦をやっても盛り上がらないというか、俺もこんな気分で誰かの身体に日焼け止めクリームを塗るって気持ちにはなれないというか……
第三試合は千夏とデッドヒートを繰り広げた末、魔冬が勝利したらしい。
らしいというのは陽菜さんの事が気になっていたので俺は勝負の結果を見ていなかったのだ。
「ちょっと待ちなさい、伊達さん」
「何でしょうか、春日メイド長?」
「第三試合は無効だわ。そうですよね、黒田先生?」
「フフフ……ですねぇ。それにやり直しも必要ないかと……」
「無効ってどういう事ですか? 私が確実に勝ったのは間違いないのですからやり直す必要も元から無いと思いますし」
「伊達さん、私達は大人だからね……勝つことだけに気を取られている訳じゃないの。ちゃんと周りの事も見ているのよ」
「そうよ、伊達さん。先生達は羽柴さんに何かアクシデントが起こった事に気が付いてスピードを落としたの。そして前田君が羽柴さんを助ける為にプールに飛び込んだのを確認してから、スピードを上げ直したんだよぉ」
なるほど、そういう事か。だから二人は途中で減速したそんな状態で魔冬が勝っても無効だと言いたいんだな?
「で、でも勝負は勝負ですし……」
「あ、あーしも一瞬、陽菜先輩の事が気になってスピードが落ちたから負けたんだっつーの!!」
千夏、目が泳いでいるぞ。お前は絶対に見ていないだろ?
「伊達さん……水泳対決はもう止めにしない? 春日さんも黒田先生もそうおっしゃりたいのよ」
「えっ、そうなの? で、でも徳川さん、せっかくあなたも勝ったのにそれでいいの? 颯君に日焼け止めクリームを塗ってもらいたくは無いの?」
「う、うん……別にいいわ。それよりも、うちのプールで怪我人が出た事の方がショックだし責任を感じるわ。春日さん、羽柴さんに早く病院に行ってもらう為にタクシーを呼んでくれませんか?」
さすが伊緒奈、冷静な判断だな。
「伊緒奈お嬢様、それには及びません。私が車を運転して羽柴さんを病院にお連れ致しますので」
「そうですか。それは助かります。お願いしますね?」
「かしこまりました。それでは羽柴さん、行きましょうか? あ、誰か付き添いがいた方がいいかもしれないわね。誰か一人、一緒に来てくれないかしら?」
付き添いはやはり陽菜さんを助けた……
「弟の俺が付き添った方がいいかな? それともマーサちゃんか緋色ちゃんが付き添ってくれてもいいけど……」
「 「私達は全然、構わないわよ」 」
「お、俺が陽菜ちゃんの付き添いで行きますよ!!」
「と、俊哉は付いて来ないで!! 絶対、来ちゃダメ!! うん、そうね……で、出来れば颯君に付いてきて欲しいわ!!」
「ガーーーン!!」
自分の口から『ガーン』って言う奴っていたんだな!?
でも、俊哉がショックを受けるのは良く分かるし……ただ、陽菜さんの今の拒否の仕方は少し違和感があったような……
「それでは竹中君、悪いけど羽柴さんと一緒に病院に付いてきてちょうだい」
「は、はい、分かりました……」
俊哉、ゴメンな……
トントン
「え? ああ、上杉さん……」
「残念だけど仕方が無いわ。無理に対決を進めても伊達さんのイメージが悪くなるだけよ。颯君だってそれは望んでいないだろうし、伊達さんも嫌でしょ?」
「そ、そうですね……上杉さんのおっしゃる通りです。私、どうかしていたみたいです。私はメイドの仕事があるから合宿に参加出来ないし、颯君と一緒にお仕事ができるといってもそんなに親密になれるわけでもないので……この対決で勝てば颯君と親密になれるチャンスだと思い、つい焦ってしまって……」
「フフフ……日焼け止めクリームを塗ってもらう事が親密になれるって思うところは可愛らしいわねぇ……それに私が少し話しただけで直ぐに冷静さを取り戻すのは大したものだわ。さすが伊達さんだねぇ」
「なんかライバルの上杉さんに褒められるっていうのは変な感じですが……」
「私はライバルだろうが誰だろうが良いと思ったら褒める女なの」
「そうですか……私も上杉さんみたいに心の広い人間になれるように頑張ります……」
ということで俺と陽菜さんは春日メイド長の運転する車に乗り込み、近くの総合病院に向かうのだった。そして、その頃……
【織田乃恵瑠邸】
「はぁぁぁ……なんか私達、織田さんの家でミニ合宿中だけど部屋の中でゲームばかりやってない?」
「そうだね~静香ちゃんの言う通りだよ~織田さん、そろそろ違う事をやろうよ~?」
「私は先輩達とこうして一緒にゲームできるだけでも幸せですけど……」
「イヤイヤイヤ、詩音ちゃん、私達はピチピチの女子学生よ。もっと外で遊ぶべきだと思わない?」
「まぁ、静香お姉さまのおっしゃることも分かりますが……乃恵瑠先輩、どうされますか? どこかにみんなでお出かけでもしますか? っていうか、昔のお友達からラインが来てから少し元気が無い様に思えるのですが大丈夫ですか?」
「え? ああ、ゴメンなさいね、詩音ちゃん。私は大丈夫よ。それよりも皆さんは他に何かやりたいのですね? それなら一つ、行きたい所というか、確認したい事があるのですが……」
「 「えっ? どこに行きたいの?」 」
「はい、現在、合同合宿中の徳川さんのお家です……」
「 「 「え——————————————————っ!!??」 」 」
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