第98話 羽柴陽菜の本性?
【放課後】
「えっ? 毛利さんが生徒会長に推す人って長曾我部さんなの?」
あれ? 伊緒奈が思っていた人とは違うのか?
「あ、ああ……そうみたいだよ……正式に紹介されたしさ」
「そうなんだぁ……毛利さん、意外な人を推してくるわねぇ……」
「意外なのか? 伊緒奈は誰だと思ってたんだ?」
「従妹の二年生コンビのどちらかなって思ってたんだけど……そっかぁ、長曾我部さんかぁ……これは色々な意味で困ったわねぇ……」
いつも冷静な態度をとる伊緒奈が少し焦っている様な気がするけど長曾我部さんと伊緒奈との間に何かあるのだろうか?
「色々な意味で困るってのはどういう事なんだ?」
「うーん、そうねぇ……颯君には教えておこうかなぁ……」
な、何を教えてくれるんだ?
「で、できれば教えて欲しいけど……」
「あのね、今回、毛利さんが長曾我部さんを推すという時点で……もし長曾我部さんじゃなくて三組の島津さんを推したとしても同じ事なんだけど、毛利さんが『竹中颯争奪戦』の一番の脱落者になると思うわ」
『竹中颯争奪戦』ってなんちゅうネーミングだ!?
「も、毛利さんが一番の脱落者って……?」
「颯君は羽柴副会長をどう思っている?」
「えっ!?」
ひ、陽菜さんの事をどう思っているかと言われても……
で、何で急に陽菜さんの事を聞いてくるんだ?
でもまぁ、アレだ。
ひ、陽菜さんをどう思っているかといえば、小柄で可愛らしくてアニメ声で……そ、それに……む、胸がデカい……デカすぎる……
「フフフ……颯君、羽柴副会長の見た目ばかりを思い出していない?」
「うっ!!」
ば、バレてるぞ!!
伊緒奈、お前はエスパーか!?
「あのね、羽柴副会長はああ見えて仙石学園随一の『策士』なのよ」
「えっ? 伊緒奈よりも策士って事かい?」
「えーっ? 私は策士じゃないわよぉ。私は『好機が来るのをじっと待つタイプ』かな? でも羽柴さんは違うわ。色々と策をめぐらせて自分に好機を持ち込んで来るタイプなの」
「へぇ、そうなのかぁ……でもそれはそれとして今回、茂香さんが長曾我部さんを推す事と何の関係があるんだい?」
伊緒奈は何が言いたいんだ?
全然、意味が分からんぞ。
「あのね、中等部の頃から毛利さんと長曾我部さん、そして島津さんとは先輩後輩関係無く仲良しだったわ。でもね、毛利さんは気付いていないみたいだけど、本当に二人と仲良しというか強い主従関係で結ばれているのは羽柴副会長なのよ。二人なら羽柴副会長の言う事なら何でも聞くわ……」
「えっ!? って事は……」
「そうよ。恐らく長曾我部さんは毛利さんに生徒会長に推されている事は羽柴副会長に伝えているでしょうし、それに対して何か指示を出しているかもしれないわね。まぁ、生徒会長に立候補するには今度の『学年人気投票』で一位か二位に入らないとダメだし、そこらへんで何か考えているかもしれないわ」
「わ、わざと三位以下になるとか……?」
「フフフ……さすが颯君、理解が早いわね。そうなれば三年生の毛利さんは自分が立候補できる訳では無いし、当然脱落よね」
「でも、茂香さんが切り替えて違う人を応援するって事もあり得るんじゃないのか? って事は再び権利を得るんじゃ? もし伊緒奈を応援するって言ってきた時はどうするんだ?」
なんか分からないけど、『投票部』を退部してまで参戦してきた茂香さんがなんだか気の毒に思えてきたぞ……
まぁ、俺のせいではあるんだけど……
「実はそこがネックなのよ。今回の『竹中颯争奪戦』に
伊緒奈はそういうところは冷たいんだなぁ……?
しかし、恐るべきは陽菜さんだ。
そういえば外部入学の乃恵瑠さんを会長に推したのも陽菜さんだったよな?
自分が前に出ずに乃恵瑠さんを頭にして陰で支える……いや、影で動かすって感じか?
乃恵瑠さんは陽菜さんの事をどれだけ理解しているんだろうか?
乃恵瑠さんだって頭はキレるし、陽菜さんの手のひらで動いている様には見えないんだけどなぁ……
しかしアレだな。
逆にそういった陽菜さんの動きや考えを理解している伊緒奈に対しては警戒をしているからこそ前に『徳川さんはタヌキだから気を付けて』と俺に言っていたのだろうか……?
でも、島津さんの事はよく知らないけど、あの口の悪い金髪ギャルの長曾我部さんが陽菜さんの言う事は何でも聞くってのはマジで信じられないなぁ……
一体、中等部の頃に何があったんだろうか?
「それに最終的には一年生の中でも人気者の長曾我部さんも島津さんも羽柴副会長の応援をするだろから、それって凄い戦力になっちゃうよね。生徒会長選挙で羽柴副会長がとても有利になっちゃうかもしれないわねぇ……私、勝てるかしらぁ……?」
「な、なるほど……そういう事かぁ……」
ほんと、この学園の美少女達は何を考えているのかよく分からない人達ばかりだな。
恐らく静香さんやケイトさん、魔冬、それに乃恵瑠さんだって何も考えていない訳では無いはずだ。
彼女達だって生徒会長選挙で勝利する為に色々と策をめぐらせているかもしれないぞ。
俺をめぐる戦いはもう始まっているという事か……
って、自分で言ってて恥ずかしいぜっ!!
しかし何でこんな『陰キャ』の俺が学園の美少女達にこんなにモテるんだよ!?
不思議で仕方が無いぞ。
絶対にこんな事になったのには何か理由があるはずなんだが……
いくら考えても全然、分からない。
その理由が分かる時がいつか来るんだろうか……?
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
颯をめぐる美少女達の戦いが静かに始まっている。
果たして颯と付き合う事ができるのは誰なのか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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