第84話 遭遇してしまった

 【ファミレスにて】


 俺達は映画を観た後、近くのファミレスで夕飯をとることにした。


 しかしアレだな?


 俺は今日一日だけで初めての経験を結構しているよなぁ……


 遊園地も映画もファミレスだって家族としか来たことがないからなぁ……


 俺のの将来を考えれば、こういった経験が少しでも無いと社会に出てから同僚や先輩達にバカにされる可能性もあるから、内容的に疲れるところもあるけど、良い経験にはなるはずだよな?


そういうことで、デートを勧めてくれた伊緒奈には感謝しないといけないかもな。


「は、颯君!? あの映画、とっても良かったわね!? 私、凄く感動したわ!!」


「えっ? そ、そうですね……」


 俺は静香さんに握られている手が気になって全然、映画の内容が入っていないんだけどなぁ……


 映画の内容を聞かれたらどうしよう……


「颯君?」


「ひゃい!?」


 しまった!! 焦って変な声で返事をしてしまったぞ!!


「ハハハ、『ひゃい』って……颯君、可愛い~♡」


「う、うぅぅ……」


「顔、真っ赤よ? フフ、照れてる颯君も可愛いなぁ……」


「そ、それで何でしょうか?」


「あ、そうそう……今日の映画のシーンで颯君が一番グッときたところを教えて欲しいなぁと思って……」


「えっ!? お、俺が一番グッときたシーンですか!?」


 ヤ、ヤバいぞ……一番恐れていた事が起こってしまった。


「ん? どうかしたの? ああ、グッときたシーンが多過ぎて一つに絞れないのね?」


「え、ああ……そ、そうなんです!! あれだけ感動するシーンが多いと……」


「うーん、それじゃぁ、ヒロインの姫と結婚の約束をしていた侍が切腹するシーンはどうだった? 私、あのシーンが一番泣いちゃったんだけど」


「あっ、ああ……俺もそのシーンは号泣しました!!」


 えっ? そんなシーンあったのか?


「だよねぇ? ほんと、『戦国恋愛夏物語』は名作だわ。そしてその名作を好きな人と観ることができて私はとても幸せよ!!」


 静香さんが嬉しそうな顔をすればするほど、胸が痛くなるし、あの条件を言うタイミングが難しくなってくるよなぁ……



「あれ? お兄ちゃん……」


「え?」


 えっ!? えっ!? えっ!? な、な……


「何で詩音がここにいるんだ!?」


「えっ!?  この可愛い子は颯君の妹さんなの!?」


「初めまして~竹中颯の妹で詩音と言います」


「は、初めまして!! わ、私は颯君と同じ高校に通っている竹中静香と言います!! ど、どうぞよろしくお願い致します!!」


 うわっ、静香さんらしくないぞ!!

 めっちゃ緊張しているじゃないか!!


「し、静香さん? うちの妹はまだ中三なので、そんな敬語なんて使う必要ありませんから……っていうか、何で詩音がファミレスにいるんだ?」


「何でって言われても……今日は日曜日だし、お兄ちゃんは帰りが遅いって聞いていたからお母さんも夕飯作るのは止めて外食しようって事になっただけなんだけど」


「えっ!? ってことは、父さんや母さんもここに来ていると……?」


「勿論よ。ほら、あそこの席で二人共手を振っているでしょ?」


 あちゃ~


 家族に一番見られたくないところを見られてしまったぞ。


 それに父さんも母さんもめちゃくちゃ笑顔じゃねぇか!?


 いや、父さんなんて『陰キャオタク』の俺がこんな可愛い女子と一緒にファミレスにいるのを感動して涙ぐんでいる様に見えるぞ!!


「しかし、お兄ちゃんも隅に置けないわねぇ? まさか、こんな美人な人と一緒にいるだなんて……」


「い、いや……それは、そのぉぉ……」


「うわーっ、美人だなんて~!! 颯君の妹さんの方がずっと可愛らしいわ!!」


「いえいえ、そんなことないですよぉぉ。でも、こんな素敵な方にそう言っていただけて私、とても嬉しいです」


「す、素敵だなんて、もう、嫌だわ~」


 二人で何、意気投合してるんだよ!?


 ってか……


「し、詩音? そろそろ自分の席に戻ってくれないか?」


「あっ? ゴメンお兄ちゃん。私、お邪魔だったわね? それじゃぁ二人でごゆっくりどうぞ……あっ、そうだ!! お兄ちゃん? 私、今決めたわ!!」


「え? 何を決めたんだよ?」


「前に言ったけど、来年私も『仙石学園』を受験するから!!」


「マジかっ!?」


「えーっ!? そうなのぉぉ!? そ、それは大歓迎よ!! あっ、でも……」


「『武田先輩』? でもどうされたんですか?」


「うん、えっとねぇ……『詩音ちゃん』が入学した頃には私は卒業していて学園にはいないんだぁと思って、少し寂しくなっちゃったの……」


「えーっ!? そうなんですかぁ!? うわぁぁああ、詩音も寂しいです~!!」


「詩音ちゃーん!!」


「静香お姉さま~っ!!」


 ガバッ


 何なんだ、二人で抱きしめ合って……


 ってか、詩音のコミュニケーション能力の高さに感動すら覚えたぞ。


「静香お姉さま、今度うちに遊びに来てくださいね?」


「ええ、颯君が了解してくれたら遊びに行かせてもらうわ」


「それは大丈夫です!! 兄は私の言いなりですので!!」


 おい、詩音?



 【伊緒奈サイド】


 ピロンッ


「あっ、ファミレス潜入部隊の華ちゃんからラインだわ」


「おっ、何て書いているんだ、伊緒奈?」


「えっ? ファミレスのお客さんに颯君のご両親と妹さんがいるって……」


「そ、そうなんですか伊緒奈さん!?」



 ピロンッ


「今度は八雲ちゃんからだわ……えっと……えっ!?」


「どうしたの、伊緒奈ちゃん?」


「武田さんが颯君の妹さんとめちゃくちゃ仲良しになったって書いてあるわ」


「ほぉぉ、身内と仲良くなったのかぁ。これは織田会長よりも武田さんの方が一歩リードかもしれないよな?」


「でも、これはこれでマズいわ。私達もファミレスに入りましょう」


「 「 「えーっ!?」 」 」


「これは颯君のご家族の方とお近づきになれるチャンスだし……」


「別に俺達がお近づきにならなくても……」


「私がお近づきになりたいの!!」




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


まだまだ続くデート編

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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