第61話 人気投票制度の意味

 【屋上にて】


「だ、伊達さん?」


「え、なーに?」


「い、いやさ……三年の山本さんにあんなことを言って大丈夫だったのかなぁって思ってさ……後で嫌がらせなどされたら……」


「フフフ……心配してくれて有難う。でも大丈夫よ。もしかして竹中君はこの学園に何故『人気投票制度』があるのか知らないんじゃない?」


「えっ? ああ、実はそうなんだよ……高等部に進級する前に担任から説明があったとは思うけど聞いていなかったというか、もしかしたらその時に学校を休んでいたのかもしれないし……」


「フフフ……そうかもしれないわね。でも『中等部』では説明は無かったかもしれないけど、友達や先輩達から話を聞く機会はあったと思うのだけど……」


「いや、中等部の頃の俺は友達や先輩なんて一人もいなかったから……」


「そうなんだぁ……それじゃぁ、『本題』の前に私から簡単に説明しようかな……」


 ほ、本題?


 伊達さんは俺と話をしたいって言っていたけど何か言いたい事があったのか?


「あのね、この仙石学園は数年前まで中高一貫の『女子校』だったというのは知っているでしょ?」


「う、うん……それは知っているよ……」


「でね、昔の仙石学園内は凄く『イジメ』が酷かったというのはは知っていたかな?」


「えっ? そうなのかい?」


「うん、そうみたい。今の学園の様子を見ていたら信じられないことだと思わない?」


「そ、そうだね……」


「それでね、このイジメが酷い状況を何とかしたいと当時の先生達も色々と対策を考えていたらしいのよ。でも全然良い対策案が浮かばなくて……すると当時の『生徒会長』が学園長に『ある提案』をしたの」


「え? ある提案……?」


「そうよ。その提案こそが今、当たり前の様に行われている『人気投票制度』なの」


 そうだったのか!!


 この訳の分からない制度は先生達が考えたんじゃ無かったんだ……


 ん? でも待てよ?


 ってことは俺が以前、何気に感じたことが正解なのかもしれないぞ。


「あっ、竹中君……もしかしたら、その顔は『投票制度』が導入された意味が分かったみたいね?」


「う、うん……なんとなくだけどね。要はこの『人気投票制度』のお陰で生徒達は皆から好かれたいからクラスメイトに嫌われるような事も言わなくなるし、勿論、イジメは激減するよね……?」


「そういうこと。でも、ただ『人気投票』をするだけでイジメが激減はしないわ。やっぱり特典が無くては……」


「と、特典?」


「そうよ。『人気投票』で上位になった人達が得られる特典、もしくは『生徒会長』になった時の特典よ」


 やはりそうか……ってか、何で俺は中等部からこの学園に在籍しているのに何も知らないんだ?


「ど、どんな特典があるんだい?」


「そうねぇ……まずは『生徒会長』になったアカツキには『安土あずち大学』もしくは『室町むろまち大学』の無条件での入学かな」


「えーっ!? そ、そうなのか!? 日本の大学ツートップじゃないか!?」


 俺が行きたい大学じゃないか……まぁ今の俺の実力では到底無理だけどな。


「凄いでしょう? それに生徒会長から任命された生徒会役員も大学ナンバー2クラスの『鎌倉かまくら大学』や『飛鳥あすか大学』に無条件で入学が出来るし、学期ごとの『学年一位』になっても同じ大学の推薦がもらえたりするのよ。他にも色々と細かい特典があるみたいよ……」


「で、でもさ……人気だけでそんなレベルの高い大学に進学できるものだろうか……?」


「フフフ……そうよね? 普通はそう思うわね。でも考えてみて? うちの学校は元々、全国的にも偏差値が高いクラスの『進学校』でしょ? そんな学園の生徒で人気のある人が勉強ができない訳無いじゃない。まず生徒達から尊敬されないわ。だから一流大学側も仙石学園の『人気投票制度』に対して感銘を受けているみたいだし、それにこれからの『新しい教育スタイル』として期待をしているらしいの。だから喜んで受け入れてくれるみたいよ」


 いや、マジで驚いたぞ。『人気投票制度』ってのは日本の教育関係者がめちゃくちゃ期待しているシステムだったんだな?


 現にイジメに対して『トラウマ』のある『陰キャオタク』の俺が中等部から誰からもイジメられることなく平和に学園生活をおくることができたんだからな。


 『人気投票制度』様様じゃないか……


「それにしても竹中君は本当にうちの学園のシステムを知らなかったのね?」


「そ、そうみたいだね……何か恥ずかしいというか、情けないというか……」


「フフ、別に気にする事は無いわ。私だって受け売りだから……二年生に幼馴染で学園のルールにとても詳しい人がいてね、その人が教えてくれたのよ。だから一年生で私程、詳しく知っている生徒も少ないと思うわ」


「そ、そうなんだね……」


「そうそう、だから今日で竹中君は私と同じくらいに学園の事が詳しくなったってことよ。フフフ……良かったね? それでさ、そろそろ『本題』に入ってもいいかしら?」


「えっ? ああ、さっき言っていたよね?」


 しかし伊達さんの『本題』ってのは何なんだろうか……?





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


伊達さんに学園に『人気投票制度』が出来た理由や特典などの話を聞き、驚きが隠せない颯……


しかし伊達さんは颯に何か話したい『本題』があるみたいだが果たして!?


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆

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