第40話 颯の違和感

 先鋒線の武田チーム、三年『高坂真樹たかさかまきさん』対上杉チーム、三年『柿崎加奈かきざきかなさん』は接戦の末、高坂真樹さんの勝利となった。


「 「はぁ……はぁ……はぁ……」 」


 さすがにアレだけの戦いをしたら息も切れるだろうなぁ……


 うん、良い戦いだった。って、俺は何を感心しているんだ。



「真樹、よくやってくれたわーっ!! 有難う、お疲れ様~!!」


「はぁ……はぁ……久しぶりに柿崎さんと腕相撲したけど、あの子前よりも強くなっていたわ。今度やる時は厳しいかもしれないわ……」


「今度なんてどうでもいいのよ。とりあえず今日勝つことに意味があるんだから。これで竹中君とのデートが一歩近づいて来たわ……イヒヒヒ……」


「し、静香、笑い方が怖いわ……」





「ご、ごめんケイト……最近、私鍛えていたから勝てると思ったんだけど……」


「いいのよ加奈、気にしないで。まだ勝負は始まったところよ。次の沙耶さやがなんとかしてくれるわ!! 沙耶、頼むわよ!?」


「ま、まぁ……一応頑張るけどさぁ……あまり期待はしないでほしいなぁ……」



「は~い!! それでは引き続き『次鋒戦』を行いますよ~!! 両チームの選手は前に出て来てくださいね~?」


 しかし、この毛利さんは『中庭の合戦』をノリノリで楽しんでいるよなぁ……


 ここから下にいる毛利さんを見ていると小学生の女の子が町の腕相撲大会を喜びながら観戦している様に見えてしまうのは俺だけだろうか……?



 チラッ……はっ!? またしても山本さんと目が合ってしまったぞ!!


「べ、別に私は今の茂香を見て竹中君と同じ事を思ってしまった訳じゃ無いからね!?」


 こ、この人はエスパーなのか!?


 それとも、ただの『ツンデレ女子』なのか!?


「もう~! さっきも言ったでしょ~? 私の頭の上で意味のない会話はしないでくれるかな~?」


「 「ご、ごめんなさい……」 」



 次鋒戦に登場したのは武田チームから三年の『山県真優やまがたまひろさん』、そして上杉チームからは三年の『宇佐美沙耶うさみさやさん』……


 二人とも身長が有り腕も長いのでこれは迫力のある戦いが期待できそうだ。


 ってか、何で俺が期待しなくちゃいけなんだ!?


 『バトルもの』のアニメも好きだから、こういう勝負事には少し興奮してしまう俺がいるんだよなぁ……


 で、でもこれはアニメじゃ無いし、この勝負で俺はどちらかとデートをしなくてはいけない状況に追い込まれているっていうのを忘れてはいけないよな……!?



「それでは~レディ~ゴ~ッ!!」


 ガシッ!!


「 「山県さん頑張れーっ!!」 」


「 「宇佐美さん負けるなーっ!!」 」



 中庭中が凄い声援になっているぞ!!


 ってか、このギャラリー達は今回の勝負の目的を分かっていて応援しているのか!?

 

 いや、あまり知って欲しくは無いのだが……



「うりゃーっ!!」


「あーっ!!」


 バシンッ!!


 ん? 今度は上杉チームの宇佐美さんが勝ったみたいだな?


「ウェーン、負けちゃったよ~!! 静香ゴメンね~!?」


「だ、大丈夫よ真優!! まだ一勝一敗なんだし……問題は無いわ……」


 そんなことを言いながら武田さんの顔色は悪いけど大丈夫なのか?



「よしっ!! 良くやったわ、沙耶~っ!! これで五分だわ。仕切り直しよ!!」


 上杉さんは凄いテンションだな……


 そんなに俺とデートがしたいのか?

 

 しかし俺の顔を見ただけで普通、好きになるものなのか?


 それも学園の人気者の美少女達が……


 でも織田会長も俺の事を……


 いや、織田会長は昔、俺に助けられたっていう恩から来ていて何年も俺に会っていなかったからいつの間にか過剰に美化し過ぎてあんなことになったはずなんだ。


 だから織田会長には凄く小さいけど理由がある。


 しかし、あの二人には何一つ俺を好きになる理由が無い!!


 ん? でも武田さんは今朝の俺の姿を見てとか言っていたよな?

 

 イヤイヤ、あんな数分の出来事で人の事が好きになんるんだったら世の中『カップル』だらけじゃねぇか!!


 俺を含む世の中の『陰キャ』達だってもっと日の目を見れているはずだ。


 だから絶対おかしい……何かあるはずだ……


 でも考えても今の俺では何も浮かんでこないけどな!!


 そ、そうだ!!


 この一件が落ち着いたら少し恥ずかしいけど、母さんに相談してみよう。


 俺の母さんは学生時代『ミスコン』で優勝したこともある『超陽キャ』な人だからな。


 何か良いアドバイスをしてくれるかもしれないぞ……



「は~い、現在の戦績は~一勝一敗の五分で~す!! それではあまり時間も無いので速やかに『中堅戦』を始めたいと思いますので両者、前に出て来てくださいね~?」



 さぁ、次は『中堅戦』か……


 ん? 上杉カイトが出て来たぞ。


 唯一の男子なのに奴は『副将』では無いんだな?



「さぁ、俺の相手は誰なのかな~? 俺の手を握れるなんてとても幸せだね~」


 相変わらずウザイ奴だ……


「私があなたの相手よ……」


 あれは見た目がギャルの麻美子って呼ばれている人だな。


「『中堅戦』を戦うのは~『内藤麻美子ないとうまみこちゃん』と上杉カイト君で~す!!」






―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


お互い一勝一敗で前半は終了。

そんな中、颯は何故自分の事を学園の美少女達が急に好きになったのかが不思議で仕方が無かった。


そして色々と考えているうちに『中堅戦』が始まろうとしている。


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆


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