第24話 黒田先生の誘惑

 【本日二度目の保健室内】


「あれ? 蒲生がもう先生、いらっしゃらないわね? どこに行かれたのかしら? まぁいいわ。とりあえず竹中君はベッドに横になってちょうだいね?」


「は、はい……」


 俺は仕方なくベッドに横になる。すると黒田先生は保健室にある棚をゴソゴソしだした。

 

 何をしているんだ?


「おっかしいなぁ……この棚に体温計があると思ったんだけど……」


 なんだ、そういうことか。


「く、黒田先生? お、俺……別に熱は無いですけど……」


「そんなの測ってみないと分からないじゃない? 竹中君がそう思い込んでいるだけで、実は高熱過ぎて気付いていないだけかもしれないしね」


 イヤイヤイヤッ、もし高熱だったらまず保健室に自分の足で歩いて来れてませんから。


 黒田先生は『かしこい』のか『バカ』なのかよく分からないタイプだな?


 でも『バカ』で教師にはなれないと思うし……


「もしかしたら下の棚にあるのかな? うーん、どれどれ……」


 ん!? こ、こ、これは非常にマズい状態だ!!

 黒田先生が前かがみになって棚の中を探しているからス、ス、スカートが……


 ドンドン上に上がっていって、このままだと……パ、パ……


 誰だ、マズいと思ったら見なきゃいいだろって言った奴は!?


 いくら『陰キャオタク』の『二次元好き』でもこういう時は見てしまうだろ!?


 目が離せるわけが無いだろ!?


 だって、男の子だもん……


「あれ~? ここにも体温計は無いわねぇ……どうしようかなぁ……」


「く、黒田先生……蒲生先生が戻って来てからでもいいんじゃないかと……」


 それにこのままだと違う意味で熱が出て来そうだし……


「そうね。体温計はもういいわ。熱があるかどうかはアレでやるわ!!」


 ア、アレ?


 アレって何だ?


 黒田先生はそう言うと俺のベッドの方に近づいて来た。


「せ、先生……アレって何ですか……?」


「ウフ、アレっていうのはね……」


 黒田先生は怪しげな笑みをしながら、寝ている俺の上に……


「せ、せ、先生!? な、何をするんですか!?」


 なんと、黒田先生は横になつている俺の身体の上に四つん這いになってまたがってきたのだ。


 黒田先生の顔が目の前に!?


 こ、これは最大にヤバいだろ!?


 こんな時に蒲生先生が戻ってきたらどうすんだよ!?


「竹中君? じっとしていてくれないかな? じゃないとやりにくいから……ね?」


 な、何をやる気なんだ!?


 俺はじっとしていて良い状態なのか?


 織田会長の時と同じように逃げ出した方が良い展開じゃないのか!?


 胸元から少しだけ見える胸の谷間も気になって目のやり場に困る。

 これは『陰キャオタク』の俺にはあまりにも刺激が強過ぎるぞ……


「あ~ん、もう……竹中君、じっとしてよぉぉ。よし頭を抑えちゃうからね?」


「えっ!?」


「よーし、捕まえた。大人しくしてないさい。今から私の顔を近づけるからね……もしかして竹中君はこんなことをするのは初めてなのかしら? ウフ、恥ずかしかったら目を閉じてくれてもいいのよ……」


 えーっ!? 黒田先生、何を言っているんだ!?


 お、お願いだから止めてくれーっ!!


「ちょっとメガネと前髪が邪魔ね。少しの間だけ外させてもらうわね? それと前髪も少し横に流すから……」


「えっ? メ、メガネは……」


 スッ……


「あら? ふーん……ウフ……」


 な、何が『あら?』なんだ? それに『ふーん』の後の『ウフ』って……


 もしかして黒田先生まで俺の顔を見てガッカリしたクチなのか?


 そんな事を思っているうちに黒田先生の顔がどんどん俺の顔に近づいて来る。


 もう俺の唇までほとんど距離がない。


 ああ、俺はどうすればいいんだーーーっ!!??


 ピタッ……


「え?」


 ま、まぁ、そうだよなぁ……


 実はそうだろうと思っていたんだけどな。

 

 こんなところでラブコメアニメじゃあるまいし、いやらしい展開になんてなるはず無いもんな……


 それを俺はあえて心の中で『あんた達』の為にいやらしい実況していただけだからな!!


 って、俺は誰に言っているんだ?

 本当はマジで調子が悪いのかも……


 黒田先生は自分の額を俺の額にくっつけてきた。そして、


「うーん、熱は無いみたいね。ほんと良かったわ。でも大事をとって終礼まで保健室で横になっていてね? 終礼が終わり次第、前田君あたりに保健室に竹中君のカバンを持って行ってもらえるように頼んでおくから……」 


「は、はい……分かりました……」


 俺はここに来るまでは元気なはずだったが、黒田先生のお陰で一気に疲れ果ててしまい、本当の病人みたいな感じになってしまった。


 それに……


「く、黒田先生……?」


「ん? 何かな竹中君?」


「そ、そろそろベッドから降りてもらえませんか……?」


 この先生、いつまで俺の身体の上で四つん這いになっているんだ?


 めちゃくちゃドキドキするじゃないか!!


「あら、ゴメンなさいね? フフフ、竹中君もしかして私に違う事をされると思った?」


「えっ!? そ、そ、そんなことは……」


「照れなくてもいいわよ。もし私が先生じゃなかったら竹中君の想像通りの事が起こっていたかもしれないんだから……」


「えっ?」何を言ってるのこの人?


「それじゃぁ、お大事にね~」


 何て濃い一日なんだ……


 俺はこの日、終礼までどころかその日の夜は一睡もできなかったのは言うまでもない。




――――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


保健室に付き添いで来た黒田かなえ先生の誘惑攻撃?に耐える『陰キャオタク』の颯だが……

やはり『男の子』にはたまりません(笑)

そして黒田先生の最後の意味深なセリフにも焦る颯であった。


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆


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