平和な日常にはバトルが必須

ただの凡人です

序章

妹を庇う、そしてネコへ

 突然だが皆にちょっとした質問をしたいと思う、今までこんな体験したやつが俺以外にいるのか確認したくてな。




 まず1つ目、君たちは転生したいと思ったことがあるかい?


 まぁ異世界もののラノベとかアニメを見るひとなら思った人もいるとおもう。


 そして2つ目、君たちはネコになりたいと思ったことはあるだろうか


 これは人によって違うと思うが、ネコになってみたい、ネコになって普段できない「甘え」をしてみたい、ネコになって女の子と一緒に…まぁこんなところだろう。


 最後に3つ目、君たちは転生してネコになったことはあるだろうか


 勿論ないだろう、断言出来る。ネコになることは疎おろか転生なんてとんでもない。


 だけど俺、猫塚 健(ねこづか けん)は転生して、ネコになったのだ。


 どうして転生したのか、そしてどうしてネコなのか、少し簡単に…いや結構長く語るかもしれないが経緯を説明しよう。


 まず俺、猫塚 健(以後ケン)がどんな人間なのかだが、特にこれといって得意なことも下手なことも、偉業を成し遂げるような事もした事の無い、ふつーの人間だった。ちなみに毎日、自宅警備(ニート生活)に勤しんでいる


 家族は両親に妹と俺の4人、叔父叔母は既に他界している。

 前文でも言ったように、特に何かあるわけでもなく、毎朝7時ぐらいに起きるよう体内時計が設定されている。我ながら生活リズムは取れている気がする。


 8時になると両親は働き先へと家を出る、高校3年の妹、猫塚 結望は学校へと行く。ちなみにその日は妹は卒業式だったらしく、両親に「来なくていい!」と半照れで言って家を出ていった。


 俺は暇になった。ニートと言っても、俺の場合はただ引きこもりになってゲームをしまくるという訳じゃない。ほぼ毎日家事をやりまくっている。

 3人が家を出ていったら家の隅々まで掃除機、雑巾をいき渡らせる。

 1時過ぎ、そろそろ腹が減り飯を作ることにした、昼食は適当に俺の作った炒飯を妹(卒業式が早く終わったらしいので1時ぐらいに帰ってきた)とがぶがぶと食った。


 そのあとも本を読むなりなんなりして4時ぐらい、俺は妹と一緒に晩飯の食料を買いにスーパーへと足を運んだのだ。別に冷蔵庫にある食材だけで作れるっちゃ作れるが、妹の卒業記念で奮発しようと思ったのだ。


 だけど、これが間違いだったのかもしれない。妹は「別にいいよ〜」とか「兄ちゃんの作る飯は上手いからなんでもいい!」などと言っていたが、人生に何度もない学校卒業記念日だ、何かしら豪華な景色にしよう、そう思ってスーパーで色んな食材を買った、帰宅途中。それは突然2人を襲った。


 横断歩道、信号が青の時に渡れば歩行者側が安全に車道を横断できる所。だが完璧に安全という訳でもない。


 信号が青になり、妹と一緒に歩き始めたその時信号が赤だと言うのに止まる気のない車が突っ込んでこようとした。

 運転席をよく見るとそいつは正気じゃなかった、飲酒運転をしていたのだ。


 その車は妹側から突っ込んでくる、止めようにも絶対に停められない、このままでは我が妹がしんでしまう、そう思った時には既に体が動いていた。

 俺は妹を前方に弾き飛ばした。おかげで妹は擦り傷をしたものの、大怪我にはならなかった。


 だがその分妹を庇った俺はと言うと…


「…………………」


 もう全く動ける状態じゃなかった。


 体全身が痛すぎて、逆に痛みを感じなくなった程だ。その後飲酒運転野郎の車はずっと前へと進みやがてガードレールに激突した。


 そこで一体何が起きたのか状況を整理しきってない妹が俺の元に来て「兄ちゃん大丈夫?!」「救急車はよんであるから!もう少し頑張って!」などと嘆いていた気がする。


 でもその時には俺の意識なんてもう消えかけていた。妹の声に応じようとしたけれど口が動こうとしない、妹が必死に呼びかけている中、俺は確信した。


 俺、死ぬのかな


全身を火傷したかのように一気にジンジンくる痛み、筋肉を動かそうと命令を出せないほど思考力がおかしくなっている。

 妹のまぶたから頬を伝って水滴が落ちてきた。そして救急車が近づいてる音がする。救急車が到着するスピードは案外早かったようだ。


 でももうダメだ。俺は死んでしまうのか、いやだな。もっと家族と一緒にいたかったな。でも、妹が卒業するまで生きててよかったのかも?そんなことも思ってたのかもしれない。


 そして最後、俺の意識が途絶える直前、もう妹なのかも判断できないくらいになった時、こんな声が聞こえてきた。


「兄ちゃんが私の兄ちゃんでよかった……私は兄ちゃんのことが大好き……だから私はどこまでも兄ちゃんを追いかけるからね……待ってて………」


 そう言って兄である俺に口付けをしてきたのだ。もう痛すぎて間隔など忘れたがたしかに素晴らしい体験であった。そして車に跳ねられた衝撃でほとんど忘れていたが最後に言い忘れたことがある。


 この妹、重度なブラコンであることを思い出した。


 こうして今、俺は何やらお嬢様っぽい所へと転生をした。ネコの姿になって。


 なんか中継地点とか女神の祝福とか、チート能力かなんかをさずけてくれる、そんなもんなしに、いきなりこんな所に転生した。

そもそも「お?転生してんじゃん!」みたいな感覚はなく、「朝目が覚めたらこんな世界に来てました」みたいな感じである。


 途中「ままぁ!私この子の名前ミリーって名前にするわぁ!」とか「これからよろしくね!ミーちゃん!」などとお嬢様っぽい金髪のフリフリつけた女の子が俺を抱いてきた。

 勿論転生?直後はパニックだった。


 確かに俺は妹を庇って車に跳ねられた、その時に救急車の近づく音も聞こえて、命だけはたすかるかも?などと少し期待していたが、今この状況、病室で眠って見ている夢なのか、はたまたほんとに転生したのか、俺としては病室で眠っているほうに期待をしたい。


 だけどそのあとこの女の子と一緒に晩御飯を食べたりお風呂に入ったりして一日が過ぎ、今は金髪女の子とベットイン、正直ここまでリアルに感じることが出来る夢なぞ見たことがない。よってほんとに転生したのかもしれない。ちょっと、いや結構寂しい。


 妹や家族、それ以外にもネットの友達、いわゆるネッ友もいたし、まだ読み切ってない書物だって沢山あった。正直言って家に帰りたい。でもそれは叶わぬ夢なのかな……


 あ、あとさっき金髪女の子とベットインとか言ったけど別にいやらしくないぞ!

 俺人間じゃないし、ネコだもん!


 ちなみに晩御飯に出てきた料理を見た瞬間ここは地球じゃないことが分かった。

 夢以外にも「ここは地球であって日本ではないけどどこか別の国に転移した」なんてことも考えていたけれどそれもなかった。


 いろいろ見たことない料理だったし、その料理の肉の事「テソテリケの肉?!やったぁ!」って言ってたので明らか地球じゃない。異世界だと確信。もしかしたらこの家独自で言ってるのかもしれないけれど…


 まぁ結構話しちゃったけどおおよそこんな感じで俺はネコへと転生したのだ、妹や家族との別れは寂しい、今すぐにでも帰りたい。そんな気持ちはあるが、妹を庇ってここに来たのなら、もう何も言うことがない気がしたりした。


 もう後戻りなんて出来ないかもしれない


 でも今は考えるのをやめて女の子と一緒に寝ることに専念するよ!それじゃまた明日の朝 会おう。

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