異世界転生だけでお腹いっぱいなのにTSの上悪役令嬢ってなんなんですか!?
Nikolai Hyland
第1章
1、めざめ
アトリシア・グーテンベルクはとある王国公爵家の第四子としてこの世に生を受けた。
現当主夫妻にとって初めての女児だったこともあって、花よ蝶よと可愛がられて育った。
また上の兄弟三人にとっても初めての女兄弟ということで、目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりであった。
そうしてアトリシアはすくすくと育った。
ちやほやされて育ったので多少わがままな部分もあったが、それと同時に公爵家令嬢としての厳しい指導もありどこに出しても恥ずかしくない立派な淑女として育った。
そんな彼女が十五歳の誕生日を目前に、突如として高熱に倒れた。
何人もの医師が診察をしたが原因がわからず、また解熱などの対症療法も効果がなかった。
家人は皆心配でそれぞれの執務にも影響が出始めるほどであった。
しかし誕生日の朝メイドが彼女の部屋に入ると、そこにはベッドの上で身を起こしたアトリシアの姿があった。
メイドは慌てて他の家人を呼びに走った。
その後、様々な検査を受けたが、心配された後遺症もなく健康そのものだった。
ただし身体には問題はなかったが、精神の方はそうではなかった。
それまでは貴族令嬢としては平均的と言える趣味嗜好をしていたアトリシアだったが、目を覚ましてからはまるっきり変わってしまった。
ダンスや詩よりも、剣術や魔法の練習に熱心になった。
美しく豪奢なドレスを嫌がり、兄の着る騎士服を着たいと言い出した。
熱に倒れる前と後とではまるきり別人のようであった。
初めは戸惑った家人たちも、次第に慣れ始めた。
兄たちは剣術や魔法の修練をせがまれる内に、自分の真似をしたいのだろうと都合よく解釈して喜んで教えていった。
両親は貴族女性として後に残る怪我でもしたらと心配したが、剣や魔法が出来て悪いこともないと本人の自由にさせた。
ただし、アトリシアが突然自分の髪の毛をばっさりと切り落とした時は皆が卒倒した。
その後メイドの手によって髪を整えられた彼女は、よく着るようになった騎士服と相まって少年の様にも見えた。
それを見た公爵夫人は、これはこれで悪くないなと思った。
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