第17話「ギルド貢献度」
えええええええええええええええええええええええ!!!
メギャーーーーン!! と驚愕するクラウス。
「そうそう。その反応が見たかったのよー。思ったよりうるさかったけど……」
ズズズーと、テリーヌが用意した茶をすするサラザール女史。
「う、え、うぉえ?! ま、マジ?」
「マジ」
いや、初老の域に達しているサラザール女史が若者言葉を使うのがすっげぇ違和感あるけど。……あるけどぉ!
それだけに、真実味が増して聞こえる。
「うそぉん…………。ち、ちなみに、お高い?」
「
マジ、かよ。
250枚より高いとかどんだけぇぇぇえ!!
「で、一応聞くけど。これどこで手にいれたの?──たしか、夕闇鉱山に行ったんじゃなかったの?」
「あ────はい。ホントのホントにそうです。鉱山の奥に、なんつーか墓所みたいなのがあって、その奥に……」
はて…………? と、サラザール女史が首を傾げる。
「えっと、夕闇鉱山の奥の墓所、ですか??」
テリーヌさんと顔を見合わせるサラザール女史。
「そんなの聞いたことないわね?」
「は、はい……。たしか、おの廃坑がダンジョン化して、現在の魔光石鉱山となって随分と経ちますが……」
なんだろう。
「うーん。……もしかすると、あそこを
「だとすると、持ち主不明の鉱山ですよ?──墓所になって少なくとも1000年はたっているのでは?」
あー…………。
1000年か。
どーりで、デッカイ霊光石があるわけだ。
墓所で取れる霊光石は人の霊魂が結晶化したものという話があるけど、あながち嘘でもないということか。
…………そりゃ、あれだけの数の死者の霊魂が1000年以上も狭い墓所で閉じ込められてりゃ、デカい結晶にもなるわな──。
「詳しい調査が必要ね──後で場所を教えてくれるかしら?」
「えぇ、まぁ──」
スケルトンジェネラルが湧くような恐ろしい場所だ。
何らかの対処したほうがいいだろう……。
そうしてクラウスは、発見した墓所の場所を地図に記載して、今日のところは解放してもらうことに。
さすがに、巨大霊光石は、そのままの価値でギルドで換金することができないということで──いつものように下取りギルド価格。
ちなみに、末端価格は金貨換算で600枚……。
で────。
「ろ?! 600枚?!」
「ええ、変動もあるでしょけど、概ねそのくらいよ?」
な、
「なん、だと……?」
「あら? 不満??」
ぶんぶんぶん。激しく首をふるクラウス。
いや、もう──ビビってるだけです。
「それで、今回も魔石で支払い所だけど……。生憎と前回ほとんどアナタに引き渡してしまったの。小さいのならいっぱいあるけど、さすがに……ね」
「え……。じゃあ、霊光石の引き取りは──……」
「大丈夫よ」
もしかして、引き取り不可能とでも言われるのではないかと思い、タラリと汗を流す。
正直、末端価格とはいえ、金貨換算で600枚なんて代物を家に持って帰りたくない──。
(ど、どうしよう……)
──って、
「え? 今大丈夫って……?」
「えぇ、大丈夫。
わーお。俺マークされとるやん。
「はい。金貨100枚よ。……末端価格なら、600枚ほどだけど、さすがにこの大きさの魔光石を扱える工房は限られてるから需要はそこまで多くないの。どうします? ウチに卸しますか?」
言外に、「テメェじゃ、捌けねぇだろ。お?!」と言われているようだ。
当たっているけど……。
買い叩かれているような気もするが、これを売る伝手もなければ、度胸もない。
それに、金貨100枚もたいした大金だ。
チラリ。
スーと、盆に積み上げられた金貨の山。
(ゴクリ……)
それを見て、断るなんて言えるはずもない。
「お、お願いします……」
「どうぞ。テリーヌ」
「はい。こちらが報酬の金貨100枚になります。……ちゃんと確認してくださいね!」
あ、はい。
かなりの大金だ。さすがのテリーヌさんも手が震えている。
ひーふーみーよー……、あ、百枚あるわ。
ギルドでもめったに支払うような金額じゃないはずだ。金貨一枚でも大金なのだから……。
それがなんと100枚。
「あと、もし魔石が欲しいのでしたら、適正価格で売ることになりますけど、……今回も買いますか?」
「あ、お願いします」
先日は魔石(台)で一個金貨5枚だったけど、それは下取り価格でギルドが売ってくれたからだ。
実際に買うともっとお高い。
「では、こちらを────ひとつ、金貨20枚になります」
「じゃ、じゃあ全部……」
昨日の4倍か。
だけど、店で買えばもっとするって言うしな……。
「はい、どうぞ」
そして、金貨100枚がスーと戻され、木箱に入った魔石(大)が5個差し出される。
「昨日も使いましたよね? さすがに、短期間でそれだけの魔素を吸収するのは危険かと思いますよ。なるべくなら、短期間の大量使用は控えてくださいね。……忠告を守らないと、どうなっても知りませんよ」
え?
どうなるの?
「破裂するわ」
「こわっ!!」
茶ぁーすすりながらサラザール女史はこともなげに言う。
──何が破裂するの?!
頭? 腹? 膀胱? 感情?! 喜怒哀楽?!
「…………それにしても、スケルトンジェネラルとはね。よく倒せたましたね?」
いや、聞けよ。
同時にテーブルに置かれた討伐証明のスケルトンの下顎を矯めつ眇めつ見るサラザール女史。
「え、ええ。その……一人では無理でした。──援軍がいたんです」
ピク。
「援軍? でも、クラウスさん、アナタ確か……」
「は、はい。自分もソロでダンジョンに潜っていたつもりだったんですけど、
まぁ、ほとんど相手になってなかったけど。
彼女がいなければ、霊光石を取った後に、あの墓所の奥でクラウスが単独でスケルトンジェネラルと鉢合わせしていた可能性は高い。
「へー。中級冒険者が
チラリと視線を向けられたテリーヌがビクリと震えるも、すぐに感情を消して瞑目する。
「そうねー。そんなたまたまも、たまにはあるかもね」
「えぇ、
だって、ほんとだもん!!
うふふふふふふ。
あはははははは。
どちらも腹に一物を抱えた乾いた笑い。
「じゃ、じゃーこれで! い、いつものように他のドロップ品は換金でお願いします」
「もちろんよ。それにしても実績も随分溜まってきたので、もう少し貢献していただければ、中級への昇級も見込めますね」
そういってギルドマスターの顔になって、上品に微笑むサラザール女史。
「きょ、恐縮です……。精進します」
「期待しているわ──」
そういってサラザール女史とテリーヌの見送りを受けてクラウスはギルドマスターの部屋を後にする。
バタン………………。
「ティエラ」
「…………は、はい」
スゥと、部屋の隅から現れたのは一人の少女。
あのダークエルフの少女だ。
「──……何をやっているのですか? どうして姿を見られたんです?」
「す、すみません……。あ、あの男が鉱山に入ってから妙な行動を始めて──そして後を追った際に、突如スケルトンナイトが襲ってきたんです」
そういって、シュンと耳を垂れさせながら謝るティエラ。
「はぁ……それしきのことで。テリーヌの紹介だから期待していたんだけど……わかってるわね? 二度はないわよ」
「は、はい!!」
なんとかこの場は収めてくれるらしい。
とはいえ、二度はない。そもそも、二度も下級冒険者の狩場で、ティエラがクラウスと出くわせば、いくらクラウスが鈍感で訝しく感じるだろう。
そうならないためにも、これ以降は絶対に見つかるわけにはいかない。
「まぁ……おかげでクラウスさんの命も助かったみたいだし、不幸中の幸いね」
「ありがとうございます!──で、ですが」
不意に食い下がるティエラ。
「何かしら?」
「そのぉ。スケルトンナイトを倒したのは私ではありません」
「え? でも、クラウスさんは援軍のおかげと言っていましたよ? アナタのことですよね?」
「そ、それは間違いないですが……。その、」
少し言いよどむと、
「じ、じつは中級の魔物にしては手ごわくて、苦戦していたところ……。あの男が強襲し、……結局、一人で倒してしまったのです」
そして、すみません、と再び謝るティエラ。
しかし、サラザール女史はそのことには目もくれず、ガバリ!と顔を上げると、目を大きく見開いていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと。そ、それは本当?! アナタが倒したんじゃないの?!」
「いえ、手も足も出ず……。申し訳ありません──たかがスケルトンナイトごときに」
ちょ、ちょ……。
「ちょっと待ちなさい。そもそも前提が違うわ。あれは──いえ、アナタの交戦したのは間違いなくスケルトンジェネラルよ。上級モンスターだから苦戦して当たり前なの」
「は? いえ、まさか、夕闇鉱山ですよ? いたとしてもスケルトンナイトが関の山では──」
コトン。
ティエラの前に置かれたのは、クラウスが討伐証明として置いていったスケルトンの下顎だ。
何ん変哲もないものだが……。
「ティエラ。これは間違いなくスケルトンジェネラルのものよ、断言できるわ」
「そ、そんな!! だ、だって、──えええ?!」
「ふぅ………………詳しく話を聞かせて頂戴」
下級冒険者が、上級モンスターを圧倒した。
そのことの意味を当のクラウスは知らない────。
本日の成果────。
~換金額~
金貨×33
銀貨×1063
銅貨×45
~換金商品(魔石)~
金貨×100⇒魔石(大)×5 購入済み
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