第7話 とはいえ女の子と二人だとちょっと緊張する 前編
「突然呼び出してしまってすみません。ご迷惑じゃなかったですか?」
放課後、駅近くのちょっと洒落たカフェの中。
俺の目の前には学校帰りの玲愛さんが座っていた。
帰宅中、レギュラーメンツ(母さん、姉さん、清美)以外からのラインが届いた時は心底驚いた。
どうやら彼女は、クラスのグループチャット(因みに俺はミュートにしている)から俺のアドレスを探して、わざわざ個別に連絡を取ってきたらしかった。
「いや、俺も話したいと思ってたし」
「なら良かったです」
ほっとしたように胸に手を当てる玲愛さん。
「っていうかさ。今日学校来てた?」
「へ?」
俺が問うと、玲愛さんはこてんと首を傾げた。
胸のあたりで結んだリボンが、それに合わせて揺れた。
「来てましたよ? これでも無遅刻無欠席の優等生なんですから」
えへんと胸を張る。
ちなみに胸に関する描写が多いのは、決して俺が彼女の胸を注視しているからではないなんてことは決してない。大きいおっぱいって最高だよね!
「どうしてそんなことを?」
「いや……。たぶん俺の勘違いだから、気にしないでくれ」
おかしいな。
告白された次の日だ。さすがの俺も気になって、軽く教室内に目を光らせていたんだが……。
玲愛さんらしき人は見つからなかったんだよなー。見落としたのか?
「あ、さては志茂田さん。私のこと探してくれたんですね?」
「うっ……」
相変わらず鋭い子だな。
「まあ、探すって言っても、ちらっと教室内に目を走らせただけだけどな」
「あはっ、それでも嬉しいです。もしかして私のこと、気になってました?」
「そりゃあ……」
気になるよね。
具体的には、玲愛さんと付き合ったらどこまでいっちゃうのか布団の中で妄想して、最終的に同じ墓に入るところまで妄想したくらいには気になってる。
「昨晩は私の事、いっぱい考えてくれました?」
「まあ、それなりには」
「もしかして、夢にも私が出てきたり?」
「それはさすがにないけど」
「なあんだ、残念」
玲愛さんが口をつけたストローの先端が、仄かにピンク色に染まった。
「でも嬉しいなー。私も志茂田さんの事、いっぱい考えてましたから。この人と付き合ったらどうなるかなー。うまくいくかなーって」
小首を傾げて、きゅるんと笑う。
「ふふ、おそろいですね」
はああああああぁぁぁ!? あざとっ! 何その笑顔可愛すぎだろ! 可愛すぎてキレそう!!
まったく、やめてよホントに。免疫あんまりないんだからさあ。
……うっかりほんとに好きになったらどうしてくれるんだ。
「昨日征一さんを連れて行ったの、桔梗屋さん、ですよね? お友達なんですか?」
「ただの腐れ縁だよ。そこそこ付き合いが長いからか、割と遠慮がなくてさ。昨日はごめんな」
「いえいえ、気にしないでください。お陰でこうして、志茂田さんと放課後デートする機会ができたわけですし」
デート、ねえ……。
「あのさ。一つ確認したいことがあるんだけど、いいかな?」
「はいはい、なんでしょう?」
俺は問う。
「俺の事、好きでもなんでもないのに付き合うって、どういうこと?」
ぱちくりと、二、三度目を瞬かせ。
そして玲愛さんは笑った。
今度はさっきとは違う、含みのある笑みで。
「なぁんだ。聞こえてたんですか」
「最初は聞き間違いかとも思ったんだけどさ……。昨日の夜、改めて思い返してみたんだ。玲愛さんに告白された時のこと」
そして気付いた。
「たしかに君の口からは一言も『好き』って単語が出てなかった。玲愛さんが口にしたのは、どれも打算的な言葉ばかり。理想的、とか、メリット、とかさ。普通、告白する時に、そんな単語使わないだろ?」
「なるほどなるほど。だから聞き間違いではなかったと確信したと」
「まあ、そんなところだ」
俺が頷くと、玲愛さんは手に持っていたフラペチーノを机の上に置いた。
「結構観察力が鋭いんですね。ちょっと見直しちゃいました」
「なあ、君は俺に何を望んでるんだ? 何を求めて……俺に告白したんだ?」
「まあまあ落ち着いてください。ちゃんと順を追って説明しますから」
そして玲愛さんは、静かに語り始めた。
「私は、平穏な高校生活を送りたいんです」
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