勇者ブレイドの冒険~魔王討伐に出たけど無能な勇者(リーダー)呼ばわりで皆に脱退された?!でもお前らと違ってかわいくて良い子の冒険者の女の子たちとハーレムパーティー組んだんで今更戻りたいと言っても遅い!
第5話Part.3~どうして戻れると思ったんですか?~
第5話Part.3~どうして戻れると思ったんですか?~
「ミリアは宿の部屋を取っていたりするのか?」
「いえ、この町に着く前にあのイングジャミに襲われたので……」
「なるほど。俺も今日の宿は取ってない。どこかあれば良いが……」
今日泊る宿をどこにしようかと考えていた時、ミリアはロデードの宿を取っているのなら同じ宿が空いていればその宿に泊まろうと考えて彼女に尋ねた。だがミリアはこの町に来る前にあのイングジャミに襲われたようで、まだ宿を取れていない。そのためまずは今日の宿探しだ。
「今日の宿のことなんだが……俺、旅道具を色々失ってしまってそれを揃える必要があってな、それで少し安めの宿にしたいんだが、大丈夫か?」
「はい。私は大丈夫ですよ。」
10万カニーずつ収入があったとはいえ、俺はヤツらに持って行かれた旅の装備もここで揃えなければならない。そして目的地であるパリッシュ王国への路銀も残しておく必要があるので宿代を節約する必要があった。幸いミリアも問題ないと言ってくれたので、少し安めの宿を探して町を歩く。
「あっ。ブレイド、さん……」
宿についての話をしながら町を歩いていた時、安宿に泊まる原因を作った連中の中の2人、マリーとエリサが俺たちの進行方向から歩いてきた。彼女らも俺に気がついたようで、マリーが思わず俺の名前を呼ぶ。俺は眉間にしわを寄せそして口角が下がる。正直言って「またお前らかよ」という気持ちしかない。
「アンタ強かったんだね。シューインの奴、負けたのはアタシたちのせいだってキレてるんだよねぇ」
マリーの方は多少気まずそうな様子を見せる程度には慎みがあったが、エリサの方はといえばいつもの調子で俺に話しかけてくる。
彼女の話によるとシューインの奴はさっきの決闘やイングジャミの取り合いの際に俺たちに負けた原因を2人に転嫁しているらしい。それを聞いて俺は苦笑いをする。「まだそんなことを言っているのか」と。
「ねえブレイド、アタシたち目が覚めた!またアンタと旅したいな?」
「お、お願いします。次は人にそそのかされたりしませんから!」
エリサとマリーはヤツに愛想が尽きたのか、また自分と行動を共にしたいと言い出してきた。さっきから聞いていればこの2人、謝罪の一言も無い。すみませんでしたの一言でもあるのかと待っていたが、シューインの悪口とまた一緒に旅をしたいという二言。あれ以来不快の一言だったが、更に不快になってきた。
「君ら、ヤツには抜けるって言ったのか?」
「アイツブチ切れててそんな話できるわけないでしょ」
「じゃあ俺を見捨てた時とほぼ変わらないわけだ」
「そ、そんなこと……」
俺は彼女らに1つ聞く。シューインの奴にはパーティーを抜けると言って出てきたのかと。しかしこの2人は何も言わずに抜けて俺の旅に同行しようと考えていたようだ。状況は違えど昨日俺を切り捨てた行動とほとんど同じだ。
俺がそのことについて聞くと、そんなことはないと答えるが、自分たちでも分かっているのか露骨に目が泳いでいる。
「悪いけどそんな君たちに背中を預けようという気にはなれないかな。背中から撃たれかねない」
「ッ……」
「いや、そういう意味じゃない。もう遅いんだよ。君たちとパーティーを組む気は二度と無い。他を当たってくれ」
共にパーティーを組んでいた時は彼女らに背中を預けていたが、あんな裏切りをされて、更に性根がほとんど変わっていない所を見せられると、もう一度組んで戦おうとは思えない。
俺はそれを「背中を撃たれかねない」と表現したが、マリーがビクッと反応を見せた。イングジャミを奪おうとした時の戦いで、シューインの背中を撃ったことを気にしているようだ。あれは過失だろうからそういう意味ではないのだが。
切り捨てられ、獲物を奪われそうになり、報酬を奪おうとされ……もう今更何を言っても遅いとしか言いようがなかった。
「行こうか、ミリア」
「はい」
俺はミリアを促して宿の方へと向かう。後ろから「待って!」という声が聞こえたような気がしたが、これ以上話していても無意味だと思ったので、俺は一瞥もくれることなく去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます