第2話Part.3~勇者・ブレイドは諦めない~

「大丈夫か?」

「あ、足が……。」

「捻ったか?斬られたか?」

「捻ってしまいました。」

「そうか。」


 俺はイングジャミから目を離さずそのまま女性に動けるかと尋ねた。だが足首を捻ってすぐに逃げるのは難しいようだ。やはり倒してから逃げるしかないようだ。


「火の魔術は使えるか?」

「え?は、はい。」

「できればイングジャミに当たるように火柱を上げてほしい。手が要る。」


 イングジャミは火に特別弱いわけではないが耐性があるわけではない。そして火柱を上げればこの辺りの冒険者の目に入り確認に来るはずだ。俺と彼女だけでは厳しいかもしれないが他の冒険者と力を合わせれば倒せるはずだ。


「わ、分かりました。でも――」

「――時間が掛かるか。大丈夫、それまでは俺が抑える。」


 俺は閃光魔術のラ・ブレーズを放ってイングジャミを攻撃。大声を上げながらワザとこちらに意識を向けさせるように剣を振るう。剣がイングジャミの身体に当たるが、全く斬り裂けない。イングジャミの皮膚は相当硬いようで半端な攻撃では通らないようだ。

 奴からすれば虫にでも刺されたかのような攻撃。しかしイングジャミは怒り狂ったような方向を上げて腕を振るう。奴の3本の指からは鋭い爪が生えており、奴の力と相まって掠っただけでも肉を持って行かれるであろうことは明白。俺は後ろに飛び退いて攻撃を躱した。


 ここからは俺からの攻撃は少なめにイングジャミの攻撃を躱すことに専念する。イングジャミは最早俺を殺すことしか考えていないようで彼女の準備が邪魔されることも無いだろう。


「行きます!」

「よし!撃て!」

「ラ・アローヴ・スチュン・カム!」


 彼女から合図を貰い、俺は撃っても大丈夫だと言うとそのまま火柱を上げる魔術を放った。炎系の魔術のラ・アローヴ。そして柱を意味するスチュン。特定の現象を起こさせる魔術の最後にはカム。これを組み合わせた呪文だ。

 火柱はイングジャミを包み込み高く高く燃え上がる。イングジャミは悲痛な叫び声を上げながら炎のダメージを受ける。思った以上の威力だ。少しイメージに時間がかかるようだが魔術力自体は高いようだ。


 だがこれだけではイングジャミの命を奪うには至らず。しかししばらく奴は動けなさそうだ。俺はとどめを刺すべく倒れ込んだイングジャミの首に向けて両手で剣を持って力いっぱい振り下ろした。

 さっきは片手で斬りつけたが今は両手で力いっぱい振り下ろしたためしっかりと攻撃が通った。剣が深々と刺さったものの全てを断つには至らなかった。少しかわいそうだがもう一度振り下ろしてやっとイングジャミの首を断った。

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