17話 学園生活終了
試験の翌日
「ぐあああああ! うぎぎぎぎ……身体が……朝から死ねるッス、なんすかこれ? 筋肉痛ってレベルじゃねぇっす……」
マーシャの悲鳴から始まる一日だった。
「オバさんが最初にかけた補助魔法の後遺症ねぇ」
「うぐぐぐ、全身がバラバラになりそうっすよ……」
「身体強化魔法って怖いですねぇ」
「うあう」
ルーシアとヴィヴィアンはマーシャを見て不安そうな顔をしていた。
そんな事をしてる間にメルリカ婆さんがやってきた。
「よーし、今日も揃ってるね……マーシャは何やってるんだい?」
「……いやー、強化魔法の弊害っすかね?」
「そ、そうかい」
そんなこんなで、本日は最終日ここでアンジェリカ達は学園卒業となる。
「さあ、本日でアンタ達はここでの一年課程を終えて卒業となる。まあ、ここは一般的な卒業式とかはないんでね。卒業の証を渡してお終いってモンさ」
この辺は魔女学園特有である。この世界でも一般の人間の学園では卒業式をやるところが一般である。
「思ったよりあっさりしてるのね」
「まあ、そう言うんじゃないよ。あまり仰々しくすると別れづらくなるだろ? また明日感覚でいいんだよ」
「そんなものかしら?」
「そんなもんなんだよ」
そう言うとメルリカ婆さんは机に四つのバッジを出した、つばの大きなとんがり帽子を被ったカラスというデザインの魔女学園卒業の証である。
「よし、四人とも前に出て並ぶんだ」
ルーシア、マーシャ、ヴィヴィアン、アンジェリカ、リヴァイアサンの順番に並んでいた
「四人だっていってるだろ、リヴァイアサンはそもそも魔女じゃないだろうが」
「むう、すまんすまんつい並んでしまった」
改めてルーシア、マーシャ、ヴィヴィアン、アンジェリカの順に並んだ。そしてメルリカ婆さんはバッジを一個手に取りまずはルーシアへと渡す。
「ルーシア・ルルーシア」
「はい」
メルリカ婆さんがルーシアへと最後の声をかける。
「アンタは図体はデカイんだしもっと自信を持ちな、座学じゃ優秀だったんだし。自信さえありゃアンタはもっと凄い魔女になれると私は思ってるよ、がんばんな」
「は、はい。がんばってみます」
メルリカ婆さんはしわくちゃの顔で笑うと頷き、マーシャの所へ向かった。
「マーシャ・アストリット」
「はいっす」
「最終試験じゃアンタにゃ世話になった。魔女学園の者として改めて礼を言わせておくれ」
「いやー、何とかなったんだしいいじゃないっすか」
マーシャは苦笑いで答えた。そんなマーシャにメルリカ婆さんは再度頭を下げ礼を言った。
「なにいってんだい。アンタがいなけりゃひょっとしたら、皆ここにゃ立ってなかったかもしれないんだ。礼を言うのは当り前さ。改めて礼を言うよ」
「んー、くすぐったいっすね」
そして、マーシャにバッジを渡した。次にヴィヴィアンの所へといく。
「ヴィヴィアン……正直アンタにゃ何言えばいいんだろうねぇ。死後に魔女の刻印が表れて動き出した異例の不死者。私も長い事魔女を育ててきたが本当にアンタは異例だよ」
「うがー」
「うんうん、何言ってるのかよくわからないね」
「……せ、わ、に、なった」
ヴィヴィアンがそういうと、メルリカ婆さんはまたも笑って頷いた。
「ただまあ、アンタは異例中の異例だ身の振り方は慎重にね」
「あうあ」
そしてヴィヴィアンにバッジを渡すと、最後にアンジェリカの所へと向かう。
「アンジェリカ・アジャルタ」
「はいはい、なにかしら?」
はいは一回でよろしい。
「アンタは想像以上に規格外だったねぇ」
「オバさんも驚きよ」
「魔力値五十三……本当に規格外だよ。アンタはとんでもない事をしでかしそうで怖いんだよねぇ、あまり力を変な事に使うんじゃないよ」
「心外だわー、オバさんは最近まで善良な一般市民だったのよ」
「……」
それこそ心外だわー、何となくで大悪魔呼ぶような一般市民はいない。
そんなことを考えつつ、自分の主を見つめるリヴァイアサンであった。
「……我も心外だわー」
メルリカ婆さんの話は続いていた。
「私は正直この中でアンタが一番心配だよ……」
「大丈夫よ、オバさん張り切るからね」
「その張り切りが心配なんだがねぇ」
「まあ、その辺は我も目を光らせておく」
メルリカ婆さんとリヴァイアサンは、アンジェリカが暴走しないか心配なようだ。
「アジャルタさんはある意味で目が離せないっすよね」
「そうですね」
「……う、ん」
主人公、実は一番心配されていた……しかもゾンビにまで心配されていた。
「不思議ねぇ、オバさん何故か皆に心配されてるわぁ」
本人は何故か理由が分からないらしい。
そして全員と話し終えたメルリカ婆さんが、バッジの説明をする。
「さて、アンタたちに渡した卒業の証だがね。コイツの説明をしよう」
「あら? 説明?」
「説明ってこれが証ってことじゃないんすか?」
説明するということは、特別な何かがあると言う事だろう。
「まあ、そいつを今から説明するのさ」
メルリカ婆さんがそう言うので、全員が席に着き説明を待つ。
「こいつはねぇ、ただ単に魔女学園の教えを受けたってだけの証じゃないんだよ」
そういってバッジをつまんで見せるメルリカ婆さん。
「こいつはね、魔女の証でもあるのさ。魔女の証があると実は特典もあったりする、この証を持ってる魔女は魔女の店を開くことができる」
魔女の店とは魔女の作る道具や薬を販売することができる店だ、そしてこの証が営業許可書になるということだ。
メルリカ婆さんの話からすると、この証があると色々とお得との事、どっかのポイントカードかよ!
まとめると。『一部お店で割引が可能』『Wポイントなるポイントが貯まること、このポイントで買い物も可能』『冒険者ギルドで現在ランクの一個上の依頼も受けられる』『魔女学園との提携国に行く場合通行証の代わりにもなる』などなど。やっぱポイントカードじゃん!
「と、まあ。こんなとこさね」
「まあまあ、特典いっぱい夢いっぱいねえ」
オバちゃんは特典に弱い。アンジェリカも例外ではない。
「……魔女学園も色々あるんですね」
「そっすね……」
色々な説明がその後も続いたが特に重要な話は無かった。
「さて、これで本当にお別れだよ。まあ、今生の別れでもないし何かあれば相談にも乗るからね」
そして四人は改めて席を立ちメルリカ婆さんにお辞儀をした。
「「「「お世話になりました」」」
四人の声が揃う……と言いたかったがヴィヴィアンはお辞儀をしただけだ。
こうしてアンジェリカの学園生活は終わりを告げたのであった。
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