第20話 攻略本が欲しい。
カーチャに連れられ殆ど人の気配のない廃墟を歩いていた。
「何処に連れていくつもりだ?」
「ごめんなさい。
道に迷ったみたい」
「それなら来た道を戻ろうか」
引き返そうとすると人相の悪い頭に猫耳がはえた男達に囲まれた。
また彼女の差し金か。
「いひひ、俺達と一緒に来てもらおうか」
「道案内でもしてくれるのかい」
「大人しく付いて来ると良い」
無駄に抵抗する必要もないか。
従おうとすると彼女が背後から抱きついてくる。
「彼らは人さらいです。
逃げましょう」
人さらいか。
確かに人相が悪いがなんで猫耳なんかつけているんだ。
言うとおりに逃げるか。
でも周りを囲まれているからどうやって逃げようか。
定番でいくか。
俺は直ぐにしゃがみ地面に手を付く。
「さあ舞い上がれ!」
砂が浮き上がり視界を遮る。
風が舞い彼らの周りだけ砂が球状に覆っている。
「杖もなしに魔法を使いやがった。
どうなってんだ」
人魚が杖もなしに魔法が使えた事から仮説を立て必要な条件を探した。
魔法に必要なのは魔石であり、それが体に近ければ発動する。
杖で無ければならないという先入観が間違いだった。
それが答えだ。
「杖は魔法増強するためだけに使うんだ。
だから無くても使える」
彼女の手をひっぱり包囲を突破しようと走った。
通れるぐらいの間がある。
そこ目指した。
視界を遮っているのに位置が解るらしく阻んでくる。
「邪魔だ。
そこを退け!」
男はナイフを振り回す。
安易に近づけば切られる。
だが歩みを止めるつもりはない。
悪いが吹っ飛んでもらう。
手のひらに魔気の弾を作り出す。
それを投げつけると男はぶっ飛び壁にぶつかり気を失った。
威力が強すぎたか?
死んでないだろうな。
「何だ、さっきの音は……」
空いた隙間を通って逃げる。
魔法は直ぐに効力を失い彼らは追ってきた。
「待ちやがれ!」
「迫真の演技だな。
流石に大人の足の方が早い」
「ユウキ君、何か勘違いしてない?
あれは私とは関係ないです」
本物の人さらいなのか。
えっ、やばいんじゃないのか。
完全に怒らせてしまったよな。
「ここは俺がなんとかするから、
君は逃げてくれ」
ペンだと杖みたいに魔気を貯められないから、消耗が激しんだよな。
衝撃弾なら2回が限度だ。
「いえ、私も戦います」
「君は魔法使えるの?」
彼女は手をかざしてみたが何も起きない。
「どうやったんです?」
「魔石を持っている。
それを媒体にして魔法が使えるんだ」
「あのペンですか、私のペンにはそんな物は付いてないです」
このペンの魔石は撃退したカニの魔獣だからな。
学園に居たら手に入るものじゃない。
相手は5人。
2人撃退して逃げてくれるとは思えないな。
さてどうするか。
「殺さずに捕まえるつもりだったが、もう容赦はしない。
お前は殺す」
可愛らしい猫耳つけたおっさんがナイフをチラつかせて向かってくるなんて滑稽だな。
まあいい、相手してやろう。
俺は咄嗟に足元にあった石を拾った。
手軽に手に入り強力な武器となるのが石だ。
魔法で弾くことで投げるよりも高速で飛ばせる。
「この一撃を喰らいたい奴はかかってこい」
石を魔法で弾く。
音速を超え空気の壁を作り爆音と共に一瞬で飛んだ。
廃墟の建物が吹っ飛び、地面がえぐれた。
上から土や残骸が降ってきた。
男達は腰を抜かしその場に座り込んだ。
ちょっと力みすぎた。
この辺の加減は杖がないと難しすぎる。
「まさか噂の魔獣殺し……」
「杖があればもっと威力が出せたんだけどな。
まあ君達ぐらいは消し飛ばせる」
「ひぃ、どうか命ばかりは……」
「人さらいだって、懲りたらもう止めるんだな」
完全に気を取られて背後には気づいていなかった。
悲鳴が聞こえ振り返るとカーチャが捕まり首元にナイフを突きつけられていた。
「その魔法をぶっ放せば、この女も一緒に塵となるだろう。
さてどうする?」
調整出来ないのは彼らも気づいているみたいだ。
否定するするよりも乗っかるべきだな。
「俺は悪党に屈する気は微塵もない。
彼女も捕まっときに既に覚悟が出来ている」
魔法を放った後、暫くは魔法が放てない。
彼らはそれに気づいたのだろう。
脅さずに直撃させていれば撃退は出来たな。
それをしなかった甘さがこの不利な状況を作り出したんだ。
多勢に対して一人は辛い。
周りに気を配り囲まれないように動きつつ考える。
それでも良い方法が思いつかない。
「それなら打って来い」
流石に気づいたのか。
対処出来るなら何も言わずしているよな。
「ユウキ君、逃げて!」
彼女だけでも逃がせれば……。
いや俺だけで戦おうとしたのがそもそもの間違いだ。
「それは良い案だ。
これを俺だと思って受け取ってくれ」
ポケットからペンを取り出し投げた。
最後の魔法だ受け取ってくれよ。
ペンは男の手に突き刺さりナイフを落とした。
カーチャはペンを手に取り男から逃れる。
彼女は舞うように全身を使いペンを振り回した。
「ははっ、舞ったところで何が出来る」
「さあ行きましょう」
俺は彼女の手を取りその場を離れる。
男達は体が動かないことに気づく。
手足が何かに引っ張られ一歩も歩けない。
「どうなってやがる」
「それは魔法の糸で拘束したんです。
私の魔法は粘り強くて数日保つからその間反省していなさい」
俺の魔法よりも長持ちするんだな。
どんなに特訓したんだ。
「それはハッタリじゃないんだろう?」
「さあね」
「なんか酷いデートになってしまったな」
ぞろぞろと兵士がやって来る。
「ここで爆発があったようだが、君達は何か知らないか?」
カーチャは涙目に成り言う。
「あの男たちに連れて行かれそうに成って、
仕方なく魔法を……」
女って怖いな。
さっきまで平然としていたのに涙を出して感情に訴えかけてくるなんて。
また怒られるのか。
散々だな。
「これは指名手配中のキャット一味だ。
君達、大手柄だね」
「デート中なんだけど道に迷って。
噴水まで案内して欲しいな」
「可愛い彼女だね。
聴取はまた今度にしてあげよう」
話の解る兵士で良かった。
直ぐに噴水まで連れて行って貰う。
「ありがとう」
「幸運を!」
良い人も居るんだな。
「色々とありがとう。
私は妾の子だから忌み嫌われる事も多かったの」
「辛かったのか?」
「別にそんな時にある書物に出会って、
私もそんな恋をしてみたいと思うようになった」
振り回されて最悪だったんだが。
ハレームの為には彼女を口説いたほうが良いのか。
今後もあんな事はないだろうし、真面目で可愛い子だから……。
「満足できたかい?」
「良く分からない」
「俺は君の幸せを願っているよ」
彼女の手を取り、その手に軽く口づけする。
彼女は微笑む。
「ごめんなさい。
色々と巻き込んで私なんて居ないほうが良いよね」
「何言っているんだ。
居なく成ると寂しい、側にいて欲しい」
「ふふっ、じゃあさようなら」
えっ?
何でだよ。
もしかして書物の展開に関係があるのか?
そんな情報は俺にはないんだよ。
彼女は去っていった。
うまくいく流れだったのに、ハレームって難しいんだな。
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