第63話 紫野田 舞さん作

「魔王様、戻りましたよ━━あ」


帰宅したスパイクメンが玄関先で買い物袋を落とした。

廊下をゴロゴロと人参やじゃがいもが転がっていき、二人の足元で止まった。


「おい何で自宅みたいに入ってきてんだ?」


「⋯⋯いえ。それより気になることがあるでしょう」


薄い目で作田を睨むスパイクメン。

彼女の視線の先には━━全裸で抱き合う中年とロリがいた。


「言い残すことは?」


「そうだな」


拳を握り締めるスパイクメンを前に、作田は考え込む素振りを見せてから開口する。


「お前が、全裸で買い出しに出かけていた理由を教えてくれ」


「全裸ではありません」


心外そうにスパイクメンは靴先を床で鳴らした。


「━━靴は履いてますから」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る