父の背中とギャップ

「なあ、父ちゃん」



「ん? どないしたんや」



「婆ちゃんに聞いてんけど、父ちゃんが小ちゃいときって泣き虫やったん?」



「せやなあ」



「通夜の席でおれが泣いてる背中見た親戚のおっちゃんおばちゃんが、「さいちゃんがるわ」て泣きながらわろてん」



「あっはっは、気づかんかったわ。───うわはらつ」



「おれの中で父ちゃん=笑顔やからさ。なんかしっくりんくて、婆ちゃんに聞いてんけど」



「父ちゃんな、昔めっちゃ怖がりやったんや。なんかあったらすぐ泣いてな。オバケはこわぁなかってんけどな」



「そうなんや。お化けが怖ないん何でなん?」



「父ちゃん、オバケに友だち居ったんや。兄弟でな。家の前の駐車場でよう遊んだわ」



「何やサラッと凄いことうてる……」



「ま、それはええわ。

ハルもその内父ちゃんみたいにつようなれる。せやから、今の内に泣き慣れとくんや。要は器作りやな。キャパシティー言うやつや」



「……父ちゃんがキャパシティー言うの何やヘンな感じする」



「ま、父ちゃんも男やからな。子どもにカッコつけたいんや。キャパシティーて何かカッコええやろ」



「うひっ……父ちゃんは父ちゃんやけどな」



「ん〜、親の贔屓ひいき目入れても、キリッとした顔にその笑い方は変態っぽいわ」



「うひっ……可愛い顔と笑い方のギャップにやられた父ちゃんが言うても説得力ゼロやで? ひっ……」



「あっはっは……あほ。〝可愛いは最強〟言うやろ───」



「せやな……ホンマ、最強やわ──」



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