第121話 対ヒュドラ戦




 俺達は今、山賊のアジトにいる。しかし、山賊は自分達で呼び出した大型モンスターのヒュドラによって壊滅した。一頻(ひとしき)り暴れまわったヒュドラだが、次はたぶん俺達に襲い掛かってくるだろうな、何とも面倒な相手だ、ヒュドラは4つ首の大蛇で、かなりの再生能力があるはずだ。間違いなく大物ボスモンスターだ。


さて、どうしたものか、まずはきちんとダメージが入るか確認してみよう。ミドルアックスで倒せるか少し不安だ。


ヒュドラが俺に襲い掛かってきた、ヒュドラの頭のひとつが俺に噛み付こうとして素早く首を伸ばしてきた、おっと、あぶない。俺はそれをサイドステップで避ける、スキル「ハイスピード」のおかげでヒュドラの動きがまるでスローモーションの様に見える。これなら楽に避けられる。自分が速くなったのか相手が遅いのかはわからないが、このスキルはかなりお役立ちスキルだ、さすが上級スキル。そして、避けたついでにミドルアックスをヒュドラの首に叩き込む。すると・・・


「キシャアアア・・・・・・」


なんと、ヒュドラの首の一つを切り落としてしまった、一撃だ、ミドルアックスってこんなに攻撃力高かったっけ?、まあいいや、ちゃんとヒュドラにダメージが通るようだ。やはりゲーム「ラングサーガ」と同じでヒュドラの弱点は4つの首の部分だ。


「おお! やるなあ、ジロー君」


「ヒュドラの首を一撃で落とすなんて、ジロー殿はまさか凄腕の冒険者でしたか」


「す、凄いわ、ジローさん」


「・・・ジロー、がんば」


「どうも」


しかし、しばらくするとヒュドラの首が一気に再生して、元の4つ首に戻った。


「なんと! もう再生したのか、ええーい! どうやって倒すのだ、こんなヤツ! いや、諦めるな、諦めたらそこで試合終了だとアンザイセンセイという偉いお方が仰られていたと勇者語録にも書いてあったではないか!」


「知りませんよ勇者語録なんて、落ち着いて下さい伯爵、ジロー殿、何か策はないのですか」


「ありますよ」


「何! あるのかね! ジロー君!」


「ええ、まあ、フランクさん、火魔法は使えますか?」


「火魔法ですか、勿論使えますよ」


「それじゃあ、俺がヒュドラの首を切り落として行くんで、ヒュドラの本体の方の首の切り口に火魔法で攻撃していって下さい」


「首の切り口に火魔法だね、わかった」


「なるほど、そう言う事ならこの俺様もヒュドラの首を狙おうではないか!」


「よろしくです、あ、それと毒のブレスには気を付けて下さい、一応解毒薬を持って来ていますが、喰らわないに越した事はないですからね」


「ああ、この俺様に万事任せておけ! それではゆくぞ! 覚悟しろヒュドラめ!」


ブライガー伯爵が動いた、背中のバスタードソードを抜いてヒュドラの首の一つに狙いをつけて一気に間合いを詰める。速い、さながら疾風だ。大柄な体躯からは想像できない位に速い。ヒュドラはブライガー伯の動きに付いてこれないだ。


「くらえ!」


ブライガー伯がヒュドラの首の一つに攻撃して首を切り落とす。やるなあ、ブライガー伯爵。


「フランク!」


「はい! 火球よ、敵を焼け! 《ファイアーボール》!」


ヒュドラの首の一つを切り落として、すかさずフランクさんが火魔法でヒュドラ本体の首の切り口を焼く。どうだ、これで首の再生は出来まい。


「キシャアアア・・・」


よし! 思った通りだ、ヒュドラの首の再生が追いついていない。今がチャンスだ。俺は一気に間合いを詰めてヒュドラの二つ目の首に取り掛かる。


「いくぞ!」


俺はヒュドラの首目掛けてミドルアックスを振り下ろす。


「キシャアアーー・・・」


よし、二つ目を切り落とした。そしてすかさず。


「ブレストから《ファイア》!」


俺の放ったファイアの火魔法で二つ目の首の切り口を焼いていく。


「キシャアアアア!」


よし、何とか二つ目の首の再生は止まった、かなりのダメージを与えた様だ。


「おお! ジロー君! 君魔法が使えるのかね、てっきり戦士かと思っていたのだがね」


「す、凄いわ! ジローさんって魔法も使えるの」


「ほーう、やりますな、ジロー殿」


「ど、どうも」


ヒュドラが暴れる、縦横無尽にうねりまくって、戦場を転がりまわる。これは流石に距離を取るしかない。一旦ヒュドラから距離を取る。


「ええーい!ヒュドラめ、俺様達を近づけさせないつもりか!」


「焦ってはいけません、慎重に行きましょう」


「うむ、わかった」


俺達がヒュドラから距離を取った為、ヒュドラは残った二つの口から毒のブレスを吐いてきた。俺達はその毒のブレス攻撃を余裕をもって回避する、距離があるので、簡単に避けられる。


そして、間髪いれずに俺とブライガー伯はヒュドラとの間合いを一気に詰める。


「これでも!」


「くらえ!」


俺とブライガー伯の同時攻撃で残った二つの首を切り落とす。


「キシャアアアアアアーーーー・・・・・・」


「フランクさん!」


「火球よ! 《ファイアーボール》!」


「よし! 俺も、《ファイアッ》」


俺とフランクさんの同時火魔法攻撃で残りの二つの首の切り口を焼いていく。


ズシーーンと、ヒュドラが倒れこんだ、ヒュドラはピクリとも動かない。



{経験点1000点獲得}


{シークレットシナリオをクリアしました}


{3BP獲得  1SP獲得}



お、どうやら経験点が入ったようだ、いつもの女性の声が頭の中で聞こえた。


ふう~、やれやれ、どうやらヒュドラを倒すことができた。それにしても山賊の頭目は一体どこからこんな物騒な物を手に入れたんだ。召喚の宝玉ってそんなに出回っているものなのか。


「やりおったな! ジロー君!」


「ブライガー伯爵様もお強いですね」


「な~に、大した事は無い、フランクもよくやってくれた」


「お褒めに預かり光栄です」


「すごいわ、本当にあんな大きなモンスターを倒しちゃったの、え? ジローさんって一体何者」


「ただの冒険者ですよ」


戦闘終了の余韻に浸っていると、瓦礫と化した砦から一人の人影が出てきた。


「ごほっごほっ、あ~ようやく出られた、・・・な! なんですか、この有様は」


「おや、山賊の生き残りでしょうか?」


「い、いえ、違います、私は旅の行商人です、この砦にいる山賊に捕まっていた者です」


「ほう、それは災難でしたな、まあ、やったのはフランクですが」


「ちょっと伯爵」


行商人と名乗った人は、瓦礫の中から這い出てきて服をぱんぱん、と埃を払いながら俺達に問いかけてきた。


「ところでお聞きしたいのですが、山賊達はどうなりましたか?」


「ああ、山賊なら壊滅しましたよ」


「な、なんと、そうでしたか、でしたら私の商売道具である荷物は知りませんか、あの中には大事なお届け物がありまして」


「さあ、どこにあるかはわかりませんが」


「そうですか、困ったな~、あの宝玉を届ける様に頼まれたのですが・・・」


「宝玉?、もしかして召喚の宝玉ですか」


「ええ、そうです」


「それなら山賊の頭目が使っちゃいましたよ」


「な、なんですと、そんな、一体どうすれば・・・」


「あんな物騒な物、一体誰に渡すように頼まれたんですか」


「ええ、それが、確かセレニア公国にいるホークウッドと言う人物に渡すようにと頼まれまして・・・」


・・・・・・ホークウッド?・・・はて? どこかで聞いた気が。


「まあ、使われたのでしたら仕方が無いですね、先方にはその様に説明します」


ふむ、まあ、なにはともあれ山賊の心配はこれで無くなったわけだが、これから急いでネモ山を越えないとな。余計な道草を食ってしまった。俺達は山賊の砦跡を後にした。シスターマリーが無事だといいな。




おじさん、なんか忘れているような








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