第95話 Eランク昇格試験 1





朝、目が覚めると体のあちこちが痛い、こりゃあ筋肉痛だな。


まいったな、こんなんで昇格試験を受けなきゃならんとは、暫くお休みにすればよかったかな。しかし、試験の手続きは既に済ませてしまっている、今日の昇格試験は受けないとな。それに、まったく動けないわけでもないからなあ、ストレッチを少しして顔を洗いに行く。


馬小屋での寝泊りにも慣れてきたみたいで、よく眠れるようになった。人間なんにだって慣れるもんだな。いてて、腰が、足が、無理せず動こう。


ピピを起こして一緒に行動する、ピピは何故か俺と行動を共にしたがる。ピピと一緒に顔を洗う。さっぱりした。ピピは全身を洗っているみたいだ。タオルでピピを拭いてやり、俺も顔を拭く、ピピも俺も目が覚めた。


「ピピ、冒険者ギルドへ行こう」


「・・・わかった」


冒険者ギルドへ向けて歩き出した。朝一でギルドにファンナと合流する約束だからな。ゆっくりとした足取りで歩いて行く、無理はしたくないが、一体どんな試験なんだろうな。


朝の早い時間帯なので、出店や露店などの店はまだやっていない。朝飯どうしようかな。などと考えていると冒険者ギルドに着いた。ギルドの中に入る。


冒険者ギルドの中はガランとしている、まだ他の冒険者は来ていないようだ。受付カウンターの方を見るとファンナは既に来ていたみたいだ。


「おはようございます、ジローさんピピちゃん、一緒に頑張りましょうね」


「おはよう、ファンナ、早いね、気合入っているね」


「・・・おはよ、ファンナ」


俺達は冒険者ギルドの受付カウンターにいるおねえさんに挨拶する。


「おはようございます、Eランクの昇格試験を受けに来ました」


「おはようございます、お話は伺っております、試験官を呼んできますから暫くお待ち下さい」


「お願いします」


受付のおねえさんはギルドの奥にある部屋へと消えた、試験官の教官を呼びにいったのだろう。


「どんな試験官さんでしょうね、ジローさん」


「そうですねえ、厳しい人じゃなければいいですね」


「・・・ジロー、おなかすいた」


「もうちょっと待っててピピ、後で朝ご飯食べるから」


「・・・わかった」


「ファンナは朝ご飯食べて来ましたか?」


「いえ、朝一で集合って聞きましたから食べてないです」


「そうですか、ギルドの酒場はこの時間からやっているみたいですから、教官が来て挨拶したらご飯を食べましょう」


ファンナと話ていると、受付のおねえさんと一人のご年配のお爺さんがやってきた。


御歳70代位のご年配の方だ。この人が試験官だろうか。


受付のおねえさんが隣のお爺さんを紹介した。


「ジローさん、ファンナさん、こちらの方が試験官を務めて下さいます」


「今日のランクアップの試験を担当する事になった、教官のボルボじゃ、よろしくな」


「「 は! よろしくお願い致します! ボルボ教官殿 」」


「うむ、よい返事じゃ、わしは昇格試験中おぬし達のパーティーに臨時に入るでな、緊急時の戦闘以外は手出しせんからそのつもりでおってくれ」


「「 はい 」」


「もっとも、口は出すがの、お前さん達駆け出しにみっちり冒険者の心得を叩き込んでやるわい、ふぉっふぉっふぉ」


「「 ご教授賜ります、ボルボ教官殿 」」


「うむ、おぬし達の報告書は読んだ、ジロー、そしてファンナ」


「「 はい、何でありますか 」」


「二人とも戦果だけなら一級じゃが、冒険者としてはまだまだじゃ、Eランクに上がれるよう精進せいよ」


「「 は! ボルボ教官殿 」」


ボルボ教官はなんというか、オーラを感じるんだよな。基本的には厳しい人なのかもしれない。


それに俺達に同行すると言っていたって事は、まだまだ現役という可能性もある。失礼の無いようにしないとな。


「それでは昇格試験の内容を伝える、よいかの」


「「 はい 」」


「試験内容は・・・リンゴ一箱の納品じゃ、やり方はおぬし達に任せる、期限は3日、それまでにリンゴを一箱冒険者ギルドへ納品せよ、以上じゃ」


リンゴ一箱の納品?・・・え、そんなのでいいの。


「ボルボ教官、質問があります。ゴブリンの討伐とかそういうのじゃないのでありますか」


ファンナの聞きたい事はもっともだ、俺もてっきりそういうのかと思っていた。


「ファンナよ、FランクからEランクに上げる試験にそんな危険な事をさせるとでも思ったのか、よいか二人とも、駆け出し冒険者から見習い冒険者になるようなもんじゃわい、何事も無理はいかんぞ」


「はい、」


「ボルボ教官、質問があります、リンゴはお店などで買ってきてもよいのでありますか」


「やり方は任せると言ったぞジロー」


「はい」


「もう良いな、他に質問が無ければ昇格試験開始じゃ」


「よーし、やりますかファンナ」


「はい、やりましょうジローさん」


「・・・おなかすいた」


「おっと、そうだった、ボルボ教官殿、先に朝ご飯を食べてもよろしいでしょうか」


「好きにせい、おぬし達は自由な冒険者じゃ」


「それじゃあファンナ、ピピ、朝ご飯にしよう。食べながら色々話をしていこう」


「はい、ジローさん」


「・・・さくらんぼ」


「教官もご一緒にどうですか」


「わしは食ってきたのでな、お茶をいただくわい」


「わかりました」


さて、いよいよ始まったEランクへの昇格試験。試験官のボルボ教官は厳しそうだ。


リンゴ一箱か・・・簡単な様で意外と奥が深い試験なのかもしれないな。期限は3日もあるってのが引っかかるが。


無理せず気を引き締めてやってみるか。




おじさん緊張してきちゃったよ









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