第35話 サリー王女快進撃
サラミスの街を馬に乗って出発し、一路バルト要塞へ向かう俺達。草原を馬で駆け抜けていた俺は、ファンナの操る馬の後ろに二人乗りさせてもらっている。
「ええ! サリーさんってバーミンカム王国の王女様なのですか!」
「あれ? 言ってませんでしたか」
「初耳です、どうしよう、変な事言ってないよね私・・・」
「ほほ、大丈夫じゃファンナ嬢、サリー様は気さくなお方じゃからな」
「だといいのですが」
「ファンナ、今は馬の手綱に集中してくれるかい。俺は馬に乗るのも二人乗りも初めてだから」
「そうでしたね、大丈夫ですよ、私、馬は慣れていますから」
「よろしくね」
「それはそうとジローさん、私、魔法少女になるのはいざっていう時でいいですか」
「どうしてだい?」
「魔法少女になった後は疲れるんですよ、ですからあまり魔法少女になりたくなくて」
「解った、無理せずやりましょう」
「お願いしますね」
そうこうしていると前方にモンスターが見えてきた。騎士グレンが指示を仰ぐ。
「ゴブリンにオークじゃな、如何しますかサリー様」
「勿論倒します。このまま放置すれば、このモンスター達は間違いなくサラミスの街へ向かいますから」
「解りました、それでは・・・サリー様!?」
なんと、サリー王女は馬を飛び降りモンスターの群れの中央に着地した。
「せえええい!!」
サリー王女は旋風脚の蹴り技で周りのゴブリン達を吹き飛ばした。
「え? サリー王女様?」
「ルビーお姉様に、指一本触れたら、ただじゃ、おきませんわ!」
正拳突き、裏拳、肘打ちときて、最後に回し蹴りと流れるような4ヒットコンボでオークに止めを刺して倒してしまった。ごついガントレットにレッグガードはそれだけで武器になる様だ。
「さすがサリー王女様、今日も護身術が冴えていますな」
騎士グレンは余裕のある態度で、サリー王女を見守っていた。
「え? あれ護身術なんですか、私には格闘術に見えましたけど」
「護身術じゃよ」
「・・・そ、そうですか」
俺が思うにあれはグラップラー技だと思うのだが、気のせいかな? 俺も騎士グレンもファンナも何もしていない。ただ見ていただけだった。サリー王女様一人でゴブリンの群れとオークを倒してしまった。
「さあ!先を急ぎましょう皆さん」
「は!サリー様」
「「 イエス、マイロード 」」
こうして何事もないように振舞い先陣を切って行くサリー王女様、凛々しい。その後もモンスターに出くわしたがサリー王女が一人でモンスターを次々と倒していくのだった。
夕方頃、バルト要塞を防衛していた王国軍兵士の野営キャンプ地にたどり着いた。
まだ諦めずに要塞を監視しているらしい。バルト要塞は迷いの森に近いので、この森から出てくるモンスターを警戒しているのだろう。王国軍兵士の一人が声をかけてきた。
「お~い、ここは危険だ、早く戻るんだ!」
「まあ待て兵士よ、このお方はバーミンカム王国のサリー王女殿下であらせられる」
「え? こ、これは大変失礼を致しました」
「いえ、良いのです、それよりも状況はどうなっていますか」
「は! バルト要塞は・・・その・・・オーク共によって陥落しました」
「脱出した者たちは?」
「ここにいる者たちが全てです、詳しい事は自分には解りません」
「詳しく情報を知っている者は」
「メディオン殿が指揮を執っています、あそこの大きなテントにいます」
「案内をしなさい」
「は! サリー王女様」
王国軍兵士に案内されて大きなテントの前に行く。
「失礼します、メディオン司令代理、サリー王女殿下がお見えになりました」
「なに? サリー王女様だと! すぐにお通ししろ」
「は!」
兵士に促されて王女に続きテントの中に入ると、中には一人の若者がいた。あれがメディオンって人か・・・イケメンだな。17歳位か、この若さで司令官をやっているのか。大したもんだ。
「サリー王女殿下、このような所までお越しいただき恐縮です」
「構いません、貴方がここの指揮を?」
「はい、あ、申し遅れました、自分はメンデル子爵の息子、メディオンと申します」
「ほう、メンデル子爵のご子息であったか、ワシは王国騎士のグレンじゃ、宜しくな」
「はい、騎士グレン殿、そちらの方々は?」
「初めまして、冒険者のジローと申します」
「は、初めましてメディオン様、同じく冒険者のファンナと言います」
「冒険者の方々でしたか、よろしくお願いします」
一通り挨拶を済ませ、騎士グレンが本題に入った。
「ところでメディオン殿、お主が指揮を執っておるのか。見た所まだ若そうだが」
「それが・・・バルト要塞の司令官殿は戦死されました・・・」
「なに、基地司令が戦死か・・・、それで、他の上級士官は?」
「はい、みな怪我を負って副都マゼランへ運ばれて行きました」
「なんじゃと、サラミスの街の方が近かろう」
「それが、私の父に恩を売られたくないとかで・・・」
「まったく情けない、それでも王国軍士官ですか、この様な時まで貴族の面子だなんて」
「サリー王女様、心中お察しします、貴族の事は分かりませんけど」
「ありがとうファンナ」
「それで補給部隊の中隊長だった自分が司令官代理をやらせて頂いております」
「そうですか、ここまでよくぞ持ちこたえて下さいました。よくやりましたねメディオン」
「は! 勿体無きお言葉、サリー王女殿下」
「お気になさらず、前線視察ですから」
バルト要塞は落ちたが、まだ終わった訳じゃない。
これからどうするか、考えないとな。
おじさん、ちょっと落ち着いてきた
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