いざコンサートへ
「7時50分に、セネバのリーソンに集合ね」
日の出を見ながら、弦真にそう連絡を入れると、舞雪は早足で家へ帰った。
「いそがなきゃ。いそがなきゃ」
家へ帰った舞雪は、すたこらさっさと逃げるように階段を登って自室へ向かう。
「あと2時間ちょいしかない…」
舞雪はすぐさま部屋に戻ると、身支度を始めた。
髪を整え、服を着替え、ようとしたところで、あることに気がついた。
「…朝飯食べてないやん」
思わずエセ関西弁で言ってしまうほど、驚愕の事実であった。
「…てかまず顔洗ったっけ?」
「おっとー…?」
小花衣舞雪。16歳。JK。
痛恨の極みであった。
「くぅっ〜…」
5分以上に渡って恥辱を覚えた舞雪であった。
「誰にも会ってないとはいえ、女子としてまずい・・・」
その後、平常運転に戻ると、朝食を食べ、シャワーを浴びて、いつも通りに身支度をすませた。
「いっそげ、いっそげ」
7時20分に舞雪は、家を出ると、静鉄電車の新清水駅へと向かった。
「あっ…、来館者証!」
家を出てすぐ忘れ物に気がつくと、すぐさま走って家の中へと取りに戻り、また駅へと走り出した。
「ふんふんふふーん、ふんふーん」
無事電車に乗り込むと、曲を脳内で再生しながら、膝の上に乗せたバックを鍵盤に見立てて、指を走らせていく。
「今日はがんばるぞい」
いつになく上機嫌にそう呟くと、舞雪は新静岡駅に着くのを心待ちにしながら電車に揺られていった。
「えーっと、7時50分セネバ ってことは、まだ2時間もあるじゃん」
家に帰った弦真は、時計を見てそうつぶやいた。
「朝風呂入ろ」
走った汗を流そうと、弦真は浴室へ向かった。
「ふー。やっぱいいわぁ風呂」
銭湯に来た老人のようなことをいいながら、風呂に浸かる弦真。
彼は風呂に入ることがかなり好きだった。
1日の生活の中で順番をつけるなら、1に風呂、2に読書、3に睡眠。
「じゃあいくとするかな」
風呂から上がり、朝飯を食べ、その間に家族を風呂へ入れさせ、風呂を洗う。
毎日のルーティーン(ただしいつもは夜)を行なって、7時30分に弦真は家を出た。
7時45分に、弦真が新静岡駅のホームに降りる。
集合場所へ向かって歩いていると、不意に左の頬をつつかれた。
「ん…?」
左後ろを振り返ると、今度は再度笑顔で舞雪が人差し指でほおを突いてきた。
「いひー。引っかかったー」
楽しそうにくすくす笑いながら舞雪が弦真の横に並ぶ。
「おはよう」
先程の出来事はスルーする方針を固めた弦真は、いつものように挨拶をする。
「おはよ!今日は頑張ろうね!」
テンションの高い舞雪に手を引かれ、弦真は軽く小走りになって歩き出した。
音楽館AOIへと。
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