清水駅へ出かけよう
舞雪がさっさと帰り仕度を始めてしまったので弦真も手早く荷物の片付けを行っていく。
「じゃ、また明日ねん~」
舞雪は脱兎のごとく駆け出した。
「はっや・・・」
弦真は皮肉げにそう言うので精一杯だった。
――水曜の放課後。
弦真は放課後いつものように音楽室には向わず、駐輪場に来ていた。
昼休みに舞雪が12HRへきて、放課後すぐに駐輪場へ向かうように指示してきたのだった。
「お、早いじゃーん」
弦真が駐輪場に到着してから10分ほどしてから舞雪がきた。
「じゃ、私の後についてきてねー」
舞雪は駐輪場に着くなりそう言うと、颯爽と自転車にまたがって自転車を漕ぎ始めた。
学校の正門を出て右へ進み大通りへ出ると、横断歩道を渡り、左へ進む。そのまましばらくは坂をまっすぐに下っていく。
「わぁー!」
どんな心境なのかわからないが、舞雪は突然叫びだすと勢いよく自転車を漕ぎ始めた。
前から吹き付ける風でスカートが勢いよくバサバサと舞う。――下に体操服のズボンを履いているため、下着が見えるということはないが。
弦真は、テンションの高い舞雪に苦笑を漏らしながら、自転車のペダルを勢いよく漕ぎ始めた。
「ここ最初の1時間は無料だからここ止めちゃお」
舞雪は、JR清水駅の正面階段の右手にある駐輪場を指差して言った。
二人は駐輪場で降りると、三十番と三十一番に自転車を止め、商店街へ向かって歩き出した。
「ここのピアノもなつかしいね…」
急に舞雪が立ち止まると、ふと呟いた。
「言うて一ヶ月も経ってないよね?てか最近では?」
「うっ。き、気持ちの問題的な?」
弦真に突っ込まれて舞雪がたじろいだ。
「いざ行かん!」
気を取り直すように、そう言い出した舞雪に白けた目を送りながら、二人は歩きだした。
「おや、ユキちゃんじゃない。いらっしゃい」
二人が店に入ると、30代くらいの店員が、二人を明るく迎え入れた。
「お久しぶりです。今日はこの前のやつを見にきました」
舞雪が朗らかに言うと、奥にあるよ、と言って店員が二人を店の奥へと案内した。
「これが、この前見せたやつで、これは、この前スズちゃんに案内したやつで…」
二人は、あれから20分ほど話しこんだ後、ようやく一着決まったらしい。
その際、弦真は途中から追い出されてしまっていたため、最終的な結果どうなったのかは知らない。
ただ、店員と別れの挨拶をした時の舞雪の顔を見る限りいい物が見つかったのだろう、と弦真は思った。
「ねね、この商店街にある駄菓子屋さんって言ったことある?」
店から出て清水駅に向かって歩き始めると、舞雪が尋ねてきた。
「駄菓子屋なんてあったっけ?」
「んーと、前はイオンにあったんだけどそこから移転してきたとかなんとかで。あるよ」
弦真の質問に、自分でもよくわかっているのだがいないのだかと言った感じで舞雪が答えた。
「とりあえず、行ってみるか」
「うん!」
弦真が言うと、舞雪は大きく頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます