第28話 寝坊

月曜日の朝になった。


晴南達は九良平(くらひら)神社の前に集まっていた。


晴南、麻衣子、美咲、冬湖と由香の五人がそこにいた。


晴南がみんなに言った。


「みんな!!とうとうこの時がきてしまったわ!審判の時が!!」


晴南がみんなに言った。


「みんな今までありがとう。みんなと過ごせて本当に楽しかったわ。」


冬湖が晴南に言った。


「はい、私も楽しかったです。」


由香が晴南に言った。


「わ、私も晴南さんと一緒で楽しかったです。」


晴南がみんなに言った。


「でもついに大いなる審判の時がやってきてしまったの!私達はどうあがいてもこの運命から逃れる事はできないわ!」


晴南がみんなに言った。


「耐えられない苦痛が私達を待ち受けているわ!!おおきな絶望が私たちにふりかかるわ!!私たちはこの残酷な運命を受け入れるしかないの!!」


晴南がみんなに言った。


「数学のテストという残酷な運命からね!!」


呆れた顔の麻衣子が晴南に言った。


「はあー全く、晴南ったら、朝から何を言い出すかと思えば?」


晴南が麻衣子に言った。


「そうは言うけど麻衣子?もうすぐ生き地獄が始まるのよ?これぐらい当然でしょ?」


麻衣子が晴南に言った。


「生き地獄って、数学の確認テスト受けるだけでしょうが?!!大げさすぎでしょ!!」


晴南が麻衣子に言った。


「大げさって、テストなんて苦痛以外の何物でもないでしょ?」


すると晴南が美咲に尋ねた。


「テストなんて嫌いよ?そう思わない美咲?」


美咲が晴南に言った。


「私だってテストなんて嫌いよ。」


晴南が麻衣子に言った。


「ほら麻衣子?美咲もテストは嫌いだって言ってるわよ?」


麻衣子が呆れた様子で晴南に言った。


「いやさ、別にそういう事を言いたい訳じゃないんだけど?はあー、まあいいわ。」


晴南がみんなに言った。


「あーあ、学校の授業が全部体育だったら良かったのに?そしたらテストもないし毎日ルンルン気分で学校に行けて幸せなのになあ?」


美咲が顔をひきつらせながら晴南に言った。


「それ私からしたら地獄なんだけど?」


麻衣子が晴南に言った。


「それよりもそろそろ七緒を呼びに行きましょ?」


晴南が麻衣子に言った。


「ああ、そうね。」


晴南達は九良平(くらひら)神社の境内に入って行った。


そして境内の奥にある社務所(神主さんの住居)の出入口の前に行って呼び鈴を鳴らした。


晴南と麻衣子が大きな声で言った。


「七緒、迎えに来たよ!!」


「七緒、学校に行くよー!」


すると中から慌ただしい女性の声が聞こえてきた。


「七緒!!みんなが迎えに来てくれたよ!!」


「まだ寝てるの??七緒!!早く起きなさい!!もう7時半過ぎてるのよ!」


「なんで目覚まし時計をセットしとかないの?!!」


少したって玄関口の引き戸が開いて、一人の若い女性が出てきた。


長い黒髪で容姿も良い巫女装束の女性が現れた。


七緒の姉である九良平(くらひら)三緒(みお)であった。


三緒が晴南達に言った。


「みんな、おはよう!」


晴南達が三緒に言った。


「おはようございます、三緒(みお)さん。」


麻衣子が三緒に尋ねた。


「三緒さん、こっちに戻ってたんですね?」


三緒が麻衣子に言った。


「ええ、一昨日から戻ってきたの。大学の授業も一段落ついたしね。」


三緒が晴南達に言った。


「みんなごめんね、七緒ったらまだ寝てて起きてこないの。せっかく来てくれたのに悪いんだけど、先に学校に行ってくれる?七緒は後で連れてくから。」


晴南が三緒に言った。


「分かりました。」


晴南達はそう言うと神社をあとにして中学校へと向かった。


しばらくして晴南達は中学校の校門前までやってきた。


晴南がふと校舎の方を見てみると優斗と拓也と亜美が校舎の出入口前で立ち尽くしているのを見つけた。


そして晴南は横を歩いていた麻衣子に言った。


「麻衣子、先に行くわ!!」


麻衣子が晴南に言った。


「えっ?」


すると晴南は校舎の出入口前に全速力で駆けていった。


校舎の出入口前までやって来た晴南が優斗達に言った。


「おはよう、拓也、優斗。それに亜美。」


優斗が晴南に言った。


「おはよう。晴南。」


拓也が晴南に言った。


「ああ晴南か、おはよう。」


亜美が晴南に言った。


「晴南さん、おはようございます。」


晴南が優斗に尋ねた。


「どうしたの?一体?」


優斗が晴南に言った。


「校舎の出入口が閉まってるんだ。」


すると晃太と長孝と慎吾が校舎の横にある駐車場の方から走ってきた。


晃太が拓也に言った。


「やっぱりまだ来てないみたいだ。武藤(むとう)先生の車がない。」


拓也が晃太に言った。


「そうか。」


晴南が晃太に言った。


「おはよう、晃太。」


晃太が晴南に言った。


「おはよう、晴南。」


晴南が長孝と慎吾に言った。


「おはよう、長孝それに慎吾。」


長孝が晴南に言った。


「おはようすっ、ハル姉。」


慎吾が晴南に言った。


「おはよーござーす、晴南。」


晃太が晴南に言った。


「そうだ晴南?先生から校舎の鍵を預かってないか?」


晴南が晃太に言った。


「えっ?鍵?」


すると晴南が笑みを浮かべながら晃太に言った。


「ふっふっふ、どっちだと思う?」


晃太が晴南に尋ねた。


「えっ?いやどっちって?」


晴南が晃太に言った。


「だーかーら!どっちだと思うって聞いてるの?クイズよ、クイズ??」


晃太が少し困った様子で晴南に言った。


「クイズ?いや晴南、聞いてるのは俺の方なんだが?」


晴南が晃太に言った。


「細かい事は気にしない。いーいーからクイズよクイズ?どっちだと思う?私は鍵を預かってる?それとも預かってない?」


晃太が晴南に言った。


「それじゃあ、預かってないだ。」


晴南が晃太に言った。


「もう正解、なんで分かったの?」


晃太が晴南に言った。


「今まで晴南が鍵を預かってた事は何回かあったが、全て翌日が登校日の時だった。週跨ぎで鍵を預かってた事は一度もないからな。確率的には持ってない可能性の方が高いと判断したんだ。」


晃太が晴南にもう一度尋ねた。


「それじゃあ晴南?先生から鍵は預かってないって事でいいんだな?」


晴南が晃太に言った。


「ええ預かってないわ。」


晃太が晴南に言った。


「そうなると武藤先生が来るまでここで待つしかないな。」


今日の一時間目の授業担当である、武藤哲夫(むとうてつお)という男性教師が校舎を開ける当番だったが、遅刻していたのだった。


そこに麻衣子達が遅れて校舎の出入口前までやってきた。


麻衣子が晴南に言った。


「もう晴南、いきなり走り出さないでよ?遅刻したかと焦っちゃうでしょ?」


すると麻衣子が晃太に尋ねた。


「ところでさ、なんでみんなここにいるの?」


晃太が麻衣子達にも武藤先生が遅れている事を説明した。


そして武藤先生がやって来るまで待つ事になった。


リンゴーン、リンゴーン、中学校中に始業チャイムが鳴り響いた。


それからしばらくして学校の正門から敷地の中に青い自動車が入ってきた。


青い自動車は校舎横にある駐車場に止まった。


青い車から三緒と七緒が降りてきた。


七緒は寝ぼけまなこで三緒に手をひかれて校舎前までやって来た。


するとこの状況を見た三緒が晴南に尋ねた。


「あれ、みんなこれどういう事?」


晴南が三緒に言った。


「今日校舎を開ける当番の武藤先生が遅刻してるんです。」


三緒が晴南に言った。


「そうなんだ。」


美咲が七緒に言った。


「良かったね七緒、遅刻が帳消しになって!」


七緒はまだ眠そうな目で美咲に小さく頷いた。


「う、うん。」


すると三緒がみんなに言った。


「それなら私はさっさっと退散した方がいいわね。みんな七緒をお願いしていいかな?」


麻衣子が三緒に言った。


「ええ、いいですよ。」


三緒がみんなに言った。


「それじゃあみんな。ここで失礼するわね。」


三緒が七緒に言った。


「七緒?ちゃんと授業受けなさいよ?」


七緒は眠そうに三緒に言った。


「う、うん。」


三緒はそう言い終わると車に乗り込んで帰って行った。


それから少しして黒い自動車が正門から入ってきた。


その黒い自動車が校舎横にある駐車場に止まった。


そしてその車から一人の若い男性が降りてきて、全速力で校舎の前に走ってきた。


若い男性が晴南達に言った。


「みんな!!遅れてすまん!!」

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