平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。
木山楽斗
第1話 平民だから
私の名前は、セレンティナ・ウォズエ。アルベニア王国の聖女である。
聖女というのは、王国の魔法関連を取り仕切る仕事だ。魔力が高い者が就ける職であり、高い地位を持っている。
その地位故に、聖女は貴族と婚約関係を結ばれることが多い。私も、その例外ではなく、伯爵家のオルデニア家の三男であるドルバル様と婚約を結んでいる。
ただ、その婚約を私はあまりよく思っていない。なぜなら、王国に勝手に決められた婚約に過ぎないからだ。
そんな婚約を、いいなど思うはずはない。勝手に決められたよくわからない婚約でしかないのである。
今日は、そんなドルバル様に呼び出されていた。何か、話があるらしいのだ。
正直、ドルバル様と私はそこまで親しい関係ではない。というか、ほとんど会わないので、そもそもどういう人か知らないのである。
「それで、今日はどのような用件なのでしょうか?」
「うむ、実はお前に話があるんだ」
私の質問に、ドルバル様はそのよう言ってきた。
切り出し方的に、世間話という感じではない。何か重要な話である気がする。一体、どのような話なのだろうか。
「お前と僕は、婚約しているだろう?」
「ええ、婚約していますね」
「その婚約を破棄したいんだ」
「え?」
ドルバル様から告げられたのは、そのようなことだった。
婚約破棄、それはかなり驚くべきことである。
「ど、どういうことですか?」
「そもそも、平民出身のお前が、貴族の僕と婚約するということがおかしかったのさ。だから、この婚約は破棄する。ただ、それだけさ」
どうやら、ドルバル様は私が平民の出身だから、婚約を破棄しようとしているようだ。
少し動揺したが、その婚約破棄自体は構わないものだった。別に、私はこの婚約に拘っていた訳ではない。むしろ、勝手に決められて面倒だったくらいだ。
「わかりました。それなら、婚約破棄しましょう」
「おお、物分かりがいいな」
私の言葉に、ドルバル様はそう言ってきた。
上から目線なのはよくわからないが、とりあえずお互いに納得したということだろう。
これで、面倒な婚約はなくなった。最も、また新たな婚約を結ばれる可能性はあるが、それはその時に考えよう。
「さて、これで話は終わりだ。もうどこに消えてもいいぞ」
「あ、はい……」
ドルバル様は、私に対して上機嫌にそう言ってきた。
帰れと言われているのだから、帰った方がいいのだろう。別に、私もここに長居したいという訳でもない。
こうして、私はドルバル様との婚約を破棄したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます