第42話 決戦

 朝靄あさもやけむる開拓村の外れ、村に通じる道のある草原で、敵を迎えます。


 新な試み、プロの農家による甘芋かんしょ栽培地を荒らす訳には行かない、広大な農地を外すとなると、この草原しか、迎撃に適した場所が有りませんでした。

 ここから先には行かせない!!死守すれば問題無し!



「アネエサ様!!中央領主軍1000の内、野良着に短槍たんそう各村からの召集兵と思われる雑兵600、粗末な鎧装備、村の護衛兵らしきが約150、実質中央領主軍は250と見られます!!」

「偵察ご苦労!ハヤテ!隊に復帰、タロウの指示に従え!!」


「アネエサ様!中央領軍凡そ300メートルの位置で停まり、陣営を組んで居ります!!」

「偵察ご苦労!サスケ!隊に復帰、タロウの指示に従え!!」


「サヨ!!!剛弓隊に最大飛距離、攻撃始めの指示!!」

「はっ!!剛弓隊!!!最大飛距離攻撃!!てぇっ!!!」


 45度の角度でオーク、リザード隊が剛弓を射ました。


 暫くして、野太い悲鳴が響いてきます。

 第二射が一斉に放たれ、更に悲鳴と怒号が響きました。


「射ち方ぁ止め!!!」


 中央領主軍主力2~300は、後方400メートルの位置と践み、先制の剛弓攻撃凡そ200本の矢が飛んで行き、かなりの被害を与えた様子。

 敵陣からガチャガチャ、盾の防御音が聞こえてくる。


 この後手、隙を待ってた。


「全親衛隊!!突撃!!!」

 私もサヨと共に突撃です。


 親衛隊員が音もなく全力疾走で、敵兵に迫ります。

 朝靄あさもやが良い隠れ蓑です、中央領主軍兵士達は、矢が飛んで来る上空を見詰めて居て、私達に全く気付いて居ません。


 サヨと共に300メートルの縮地、即事スタンを連発雑兵を麻痺させ、中央突破。


 所詮訓練出来てない雑兵、邪魔にも成らず進めます、気付けばサヨと突き抜けて、セコ鎧隊に突入してました。


 目立つ無双のサヨに気をとられ、小さな私の存在に気付かない敵兵達、無防備な相手に一方的な攻撃を仕掛ます。


 赤ちゃんの柔な身体、身体強化しても一撃必殺は無理です。

 そこで私の新兵器!鋼鉄仕込みの安全靴が活きてきます。

 移動しながらの、前蹴り!!向こう脛を一撃で砕き、回し蹴りで膝を砕き進みます。


 上段蹴りに上段回し蹴りでも、小さな私では脛にしか届かない。

 短足って言うな!!

 敵兵は、脚骨を砕かれた激痛で、戦意を無くしうずくまってる。


 私の攻撃の邪魔にならないよう、サヨは付かず離れず同行してくれてます。

 サヨは豪快に長い手足で、セコ鎧隊を凪ぎ倒して進んでる。

 重い一撃、唸りが聞こえて来るようです。

 あれでも、敵兵を粉砕しないよう、手加減をしてるのが凄い!!


 サヨに気を取られても、身体は勝手に動き、セコ鎧隊を抜けていました。


 抜けた先には惨状が待っていました。


 無防備状態で攻撃を受け、大被害を負って放心状態の主力隊でしたが、傷付いたキンキラ男を庇う3兵士。


 名無しの人間、ステイタスが無い相手のLV実力は読めないが、強者の気がガンガン感じられます。


 守られるキンキラ男は、おそらく領主でしょう、第一射が運良く当たったようで、中央領主軍の不甲斐ない戦いぶりは、指揮官離脱のお陰かな?


「とっ!」

 隙を突かれた剣先を縮地で辛うじて避ける。

 3人の剣を突き出す連携は絶妙で、反撃などする余裕を与えてくれません。

 的である私が極めて小さいお陰で、執拗な3攻撃を切り抜けては居ます。

 私の刀は良く斬れますが、サヨの剛刀と違い軽く華奢きゃしゃに出来てます。

 剣を受ける事は出来ず、受け流ししてるだけ、3本の太い剣に対し「擦り上げ」も「斬り落とし」も出来ず、反撃出来ない!!


「ヤバイ!!敵3人と私が近接で、目まぐるしく位置を変えるため、サヨが援護を躊躇ってる」


 ふわふわ逃げる私に、敵3人は戦法を変えるため隊を一直線に組んでる。

 何をする気か知らないけど、一瞬の停滞は悪手だよ!

「「スタン!!!」」

 隙を見てサヨも同時に電撃をぶつけたようです。

 強者3人死んで無いよね。



 駆け付けた親衛隊に武装解除され、主力隊は捕虜になりました。


 霧が晴れた草原を、振り返り見えたのは、我恵の森防衛軍が敵兵の武装解除、捕縛で完全制圧している様子でした。


 戦い慣れしていない中央領主軍と、霧が助けてくれた勝利、運が良かったです。

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