(6)犬の散歩
散歩中の犬が電柱をひとしきり嗅いでからマーキングしている。犬にとって掲示板のようなその電柱は、両側に並木が植えられている国道の、横断歩道付き交差点の一角に立っている。この交差点ではちょうど二本の国道が交わっていて、一方は4車線で交通量も多く、もう一方は2車線で交通量は多くないが平日の夕方には渋滞するような道だ。
大通りの交差点なので信号待ちの時間は長いが、犬にとっては関係ない。いつもの散歩コースだとちょうどここが折り返し地点で、マーキングし終えたら交差点を渡ることなく帰りのコースへと曲がることになる。犬は交差点の向こうまで歩いたことがないが、信号を渡って先に進めば、広い駐車場を備えたファミレスや家電量販店が並んでいる。車で移動するには便利な地域だが、歩いて買い物するにはいちいち店舗が広すぎるような場所である。
犬は狭いほうの国道に曲がり、散歩を続ける。歩道はややせまくなり、たまにすれ違う自転車に当たりそうになることもある。そこからしばらく歩いてまた曲がると住宅地に入り、さらにしばらく歩けば家に到着することになる。折返し地点から終盤にかけて車通りは少なくなり、環境音が減る。住宅地の通りでは同じ時刻に散歩している他の犬数匹とすれ違いざまに挨拶して、満足感をもって帰路につく。
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