ASTRAL ARROW - アストラルアロウ

丸山弌

プロローグ

第1話 悪い夢

 零矢れいやは、なにか巨大なモノにのしかかられていた。



 人ではない。

 なにか異形の生物。


 身体は大きく、口も牙も大きい。

 一体コイツは、なんなんだ……



 不意に訪れた不可解な状況――

 そもそも零矢の身体は、今は実体ではなかった。


 だれも触れることができない半透明の身体。

 あらゆるものを自由に突き抜け、自在に空を飛ぶことができる、精神だけが肉体から解き放たれた特殊な状態――


 そんな自分を、どうしてこの怪物は押さえつけることができるのだろう……



 というか、コイツ。

 もしかして、おれを食べようとしているのか?


 本能的ななにかが、様々な疑問が渦巻く脳内からピンポイントでそんな不穏な予測を浮かびあがらせた。


 想像なんてしたくないのに、目の前の巨大な歯で無残なことになる自分の姿や痛みや苦しみを想像してしまう。


 身体が勝手に震えはじめて、力がうまく入らなくなる。


 単なる悪い夢であってほしい……


 たしかに零矢のその願いは、それほど期待がもてないものではなかった。

 むしろその可能性は十二分にあった。


 なぜならこの時、零矢は自身のベッドで眠りにつき、意識だけを外に飛ばす、幽体離脱の真っ最中だったからだ。

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