謎の風呂ダンジョン内部
大穴の入り口は、ちょっとしたトンネルくらい大きく、深い。温泉独特の匂いが漂うけれど、それらしい湯の気配は感じ取れなかった。あと、生暖かい。何より……。
「すごく視線を感じますね、カズユキさん?」
「そうだね。ずっと誰かに見られている気がする」
常に監視されているかのような、錯覚に陥る。壁に目があるみたいに。
「だけどよ、モンスターらしき気配はないぜ」
「そうね。いくら進んでも生命反応はないわ」
オケアノスさんとシャンパさんが、前方を確認しながら語り合う。
妙だ。このダンジョンができた目的がわからない。
「シズクちゃん、プラカードをモニターモードにしてもらえるかな?」
「はーい。よいしょっと」
浮遊型プラカードを取り出して、シズクちゃんは看板部分を上空へ飛ばす。三面鏡になっている画面に、ユーゲンさんの顔が映る。
「う、カ、カズユキさん」
ユーゲンさんの顔が鏡から現れ、シズクちゃんが後ずさった。
「どうしたの?」
「もし私が何も知らずにこの鏡を使っていたら、導師ユーゲンは私のプライベートをなめ回すように見ると言うことになるのでは?」
「ああ、そういうことかー。ないない」
ユーゲンさんからは、この鏡を使えない。あくまでも「ユーゲンさんと連絡が取れる」のみだ。覗きなんて。
『ワシのような大魔道士が、覗きなんぞするかいっ。よこしまな心根があるのは、修行が足らん証拠じゃわい』
「まったくです。人間族の導師さま」
大魔道士ユーゲンさんと、ニュウゼンさんがうなずき合う。
『第一ワシは、人の嫁になんぞ興味ないわい』
「まったくですね。導師さま」
この二人も、ボクとシズクちゃんを誤解しているみたいだ。
「ユーゲンさんは、何かわかりますか?」
『ううむ。どうやら、穴を作ろうとしてトラブルが発生したきらいがあるわい』
大魔道士ユーゲンさんによると、最初は小さい穴を作ろうとして、なんらかの歪みが生じたでのはないかという。結果、このようなダンジョンが形成されてしまったと。
『原因はわからぬが、とにかく怪しい魔力を感じるのう』
「見られている気配がするのは?」
『わからぬ。おそらく戦力の把握ではないかのう? もしくは暗殺か』
暗殺と聞いて、ラジューナちゃんやドルパさんに緊張が走った。
それにしても、お風呂場から襲撃を?
「効率が悪すぎませんか? 相手の戦闘力を確認するなら、武装した状態を調べるべきでしょう」
無防備な相手を狙うなら、寝室やトイレに忍び込むはず。
『そうなんじゃ。風呂は覗かれる可能性があるから、特に女性などは気にするハズじゃろ?』
ボクと、ユーゲンさんの意見が一致した。
『ただ一つ言えるのは、このダンジョンを作ったヤツは相当に力の強い魔族じゃわい。魔王クラスかものう』
ユーゲンさんの言葉を受けて、魔王ラジューナちゃんが「なぬ!」とのけぞる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます