リモート魔法学校案
ユーゲンさんが、肯定する。
「左様。ワシはムキムキになっておるが、ゾンビのようなもんじゃ。筋肉組織は生きてるんじゃが、魂はこの世の物ではない」
ブルーゲイザーは、自ら進んでアンデッドになる秘宝なのだ。
だからこそ、封印されるべきなのである。
アンデッドである以上、ユーゲンさんの近くに回復施設を置くわけにはいかない。ユーゲンさんが浄化されてしまう。
「では、城に飾っているのは?」
「あれは、『万が一の時にわざと盗ませる用』の見せ宝石じゃ。ホンモノのブルーゲイザーは、こっちじゃて。あーん」
ノドを震わせ、ユーゲンさんが舌を伸ばす。舌の上には、宝石が載っていた。再度、宝石を飲み込む。
「これは危ないでのう。永遠にワシが管理するわい」
奪い取るもんか。スパが楽しめなくなるんだから。
「もし、差し支えなければ、また遊びに来てもいいですか?」
「アンデッドの城に『遊びに』かのう? 変わり者め」
フフ、とユーゲンさんは笑う。
「いつでも、ワシに挑戦しに来るとええ」
「このままずっと、ひとりぼっちでいるつもりっスか?」
「秘宝を守る役目もあるしのう。しかし、こうして冒険者と情報交換し、渡り合う快感を失うことは忍びない」
どうにかできないかな。
「そういえば、ボクたちの塔での活動に詳しかったようですが」
「ああ。監視用の水晶玉を魔物に持たせておった。気づかんかったじゃろう?」
フヨフヨと、ユーゲンさんの肩に小型のガーゴイルが止まった。ガーゴイルが手に持っている杖は、監視用の水晶玉だという。形状は、まるでビデオカメラみたいだ。
「そうだ! シャンパさんってダンナさんがいるんでしたよね?」
「ええ。連絡くらいはたまに」
「魔法学校の名誉顧問として、リモートで講義してもらうってのは?」
「りもーと? 何それ?」
ボクは、リモートという機能を簡潔に説明する。
この世界は、通話用の水晶玉さえあれば会話も可能だ。さっき、小型のガーゴイルが教えてくれた。
シャンパさんやユーゲンさんくらい魔法力が高ければ、リモートなど朝飯前だろう。
「生徒に?」
「いいえ。講師相手に、魔法を教えるんです」
ユーゲンさんクラスの講義だと、専門的すぎる。生徒たちでは理解できないだろう。また、ユーゲンさんほどのスゴイ魔法まで使えるには時間が掛かりすぎる。
イキッた学生が、ユーゲンさんに戦いを挑む可能性も高い。
その点、講師相手なら安全だ。
「魔法を使う際の危険性や有効活用法」や、「実践的なマジックアイテムの作成法」など、高度な魔法を学べるに違いない。堅物そうな学校なら、柔軟な思考を持つユーゲンさんの講義は新鮮に映るだろう。
「それはグッドアイデアじゃ。感謝するぞい若者よ」
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