20

その日はなんだか寝付けなくて、暇潰しのようにベッドから身を乗り出して窓のカーテンをどかし、空を見上げた。その空は、黒くて青くて白くて、不思議な色だった。ベランダに映る影がはっきりとしていた。暗いはずなのに、すごく明るかった。

これだけ明るいのだから、今日は満月のように月が大きくて、うんと近いのだろうと思い、ひとつ右手の窓から空を覗いた。

その窓から月は見えなかったが、先程の窓よりも強い光を見ることができた。その光は、さらに右手から照らされているようだ。

私はいつの間にか胸に宿った少々の期待に身を任せて、またひとつ隣の窓のカーテンをどかそうとした。

隙間からいやに白くて強い光が漏れていた。

一瞬、胸がざわりと鳴いた。

嫌なものを感じながらカーテンをどかすと、暗闇に慣れた目には眩しすぎるほどの光を放つ、街灯がいくつか佇んでいた。

それから私は月を見つけようともがいたが、月を見つけることはできなかった。

空は雲ひとつない快晴のはずなのに、見える星はひとつもなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る