錬金術師カールの華麗なる日常 ~エリクサー? それはただの栄養ドリンクである! ホムンクルス? それはただのお手伝いさんである! そして私は天才錬金術師、カール・ユングスである!~

平成オワリ

第1話

 夢を見ると言う事は一体、どういうことなのだろうか。


 生まれた時から疑問に思っているこの質問について、答えを持っている存在は一人としていなかった。


 近所に住む花屋の娘に聞いてみた。

 頭がいいと評判の青年に聞いてみた。

 齢百歳になる翁に聞いてみた。

 偉大なる賢者に聞いてみた。

 国を統べる国王に話を聞いてみた。

 世界を救うと豪語する勇者に聞いてみた。

 悠久の時を生きる人外の王に聞いてみた。


 その者によって考え方は存在したが、実際に納得させられるかといえば否だった。

 

 そもそも、夢という存在について疑問に思っている者自体、ほとんどいないと言うのが現状だ。


 誰もが夢を当たり前に見る。生まれて一度も夢を見たことのない人間はいない。だから興味を持たない。答えを知らない。


 夢を見ない人間はいないと教えられたが、それは嘘だということを知っていた。なにせこう考えている本人が夢を見たことなど一度もないのだ。


 知りたい、夢とは一体何なのだ。見てみたい、誰もが当たり前に知っている夢を。


 誰かが言った。真理を追究し、在り得ない事象を在り得る事象へと変化させるのが錬金術だと。


 鉛を金に変化させ、刹那の命を永遠の命へと変化させ、死者を生者へと変化させる。


 錬金術の可能性は無限大だ。遥か過去の錬金術師達誰もがこの言葉を信じ、奇跡を夢見て自らの人生を賭けてきた。


 夢を見たい。きっと夢を見ることが出来れば、夢について知ることが出来ると思う。


 生まれつき夢を見れないというならば、夢を見れるように変化させて見せよう。


 この、無限の可能性に満ちた錬金術によって。

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