閑話 ドリアード、裁きを下す
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私はドリアード、植物を司る精霊よ。
何代か前のこの国の王と盟約を交わして、
……果たしてこの国の人間たちは私達精霊の恩恵を得るに相応しいのかを見極めるために、ね。
ま、まあ、極たまに屋台からこっそりと料理を戴くことはあるけれど。
し、仕方ないじゃない!基本的に人間は精霊の姿を見ることが出来ないのだから。
でも最近、私のことを視ることが出来る人間が現れたの。
精霊を視る眼を授かる基準は、善良とか悪党だとか人間の世界での善悪はあまり関係がないわ。だからこそその人間の本質を見極める必要がある。
その人間の名はアズリア。
この娘の頭の中を少しばかり覗かせてもらったわ。
懐かしいわね、
この娘の記憶は悲しくはあるけれど、
だから私はこの娘に「道」を示してあげたいと思ったの……決してあの娘が可愛かったから気に入ったワケじゃないわよ。
あの娘を私達の世界に招いて、色々とイタズラをしながら魂の器を大きくするために鍛えていたんだけど……ちょっと想定外に大きくなり過ぎちゃったみたい。
どうやら私達の世界の魔力があの娘には人間の世界の魔力以上に相性が良かったみたい。
仕上げに私が持つ
愚かな人間連中が余計なちょっかいを出してきたせいで、あの娘からの「もう会いに行けない」なんて手紙を見た時は正直、こんな国滅ぼしてやろうか、と思ったわ。
盟約を交わした昔は、私が宿る精霊樹もこの街の真ん中に立っていて。人間たちは私と精霊への感謝と敬意を忘れずにいてくれたわ。
でも今は違う。盟約がある事すら頭にない人間たちは精霊たちへの感謝や敬意をすっかり忘れてしまっていた……
その上、あの娘を国をあげて追い込む真似をして、アズリアは私の元から去っていく選択を無理にさせられた。
私はそんな人間どもにその報復をしようと思う。
……まずは。
ここはランベルン領。
領民らにはまだエドワードが王都で降爵処分を受けたことなど知らず、いまだに命令通り麻薬の原料となる植物の栽培を強制させられていた。
王都での影響力こそ失ったが、麻薬を売り資産を増やしてまた王都の連中を金で支配してやろう、と画策していたのだろう。
だがある時を境に、その植物が枯れてしまった。
畑一面の植物が全て。それも一瞬にして。
そこからランベルン男爵家は急速に崩壊する。
まず、麻薬の原料が供給出来なくなったことで取引先の犯罪組織が報復としてランベルン領での犯罪を推奨するようになり治安が悪化。
収入が途絶えたことで、今まで強制労働や他領よりも高額の納税などを恐怖政治で抑圧してきた領民らが各地で散発的な反乱を起こす。
兵力の要だったベルドフリッツとバルガス。
犯罪組織との繋ぎ役だったエボン。
王都での事件でそれらを失ったランベルン家には、最早その反乱を鎮圧出来る威厳も兵力も持っていなかった。
反乱から一月後、エドワードとその側室ミケーレ、そして主犯格として屋敷で軟禁されていた息子のエドガーは領民らによって群衆の前に拘束された状態で引きずり出され、寄ってたかって石を投げつけられ撲殺された。
ここは
城内にある国王の寝室。
「……誰だ」
「あら?私が視えてるってことは、まだ盟約の効果は残っている筈なのだけど」
「お主はまさか……!」
「名乗るのは面倒だから手短に要件だけを話すわね。アズリア、あの娘の指名手配を解きなさい」
「確か、先日卓上会議で出た女の事か。悪いが平民が貴族に刃を向けた事実を反故にしては示しがつかないのでな」
「あの娘は私と契約した、と言っても?」
「……なっ!精霊との契約、だと……」
「知ってると思うけど、精霊と契約した以上はあの娘は私と同格なの。その
「……ぐぅ」
「貴族の矜持とやらを守って緩慢に滅ぶのか、貴族より精霊との盟約を選ぶのか。実に簡単な二者択一だと思うのだけど」
国王はまだ悩んでいる。馬鹿ね。
私との盟約ってのは、この国の農作物への恩恵そのもの。私の恩恵があるから豊富な食料を他国に融通出来るほどの豊作が約束されていて。だからこそこの国は周辺国家に攻められることはないのに。
「国王、三日だけ猶予をあげる。それまでにあの娘の指名手配が解除されなかったら、来年以降の農作物は期待しないことね」
そう言い残してその場を離れるドリアード。
もし国王がアズリアの手配を解かなかったら、精霊樹ごとあの
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