第8話 雨のある日
「トモコちゃん、今日はお父さん遅いなぁ。なんでやろなぁ……いっつもやったらとうに来てる筈やのに……もう9時やで……どないしはったんかなぁ……
……おっ、電話や電話。多分お父さんやで、トモコちゃん。
はいもしもし、神です」
「あっ、神さんですか! こんな時間にすんません!」
「お父さん、どないしはったん? 何か後ろの方から賑やかな声がしてるけど」
「いや~、実は今、ちょっと連れと打ち上げやってますねん。嫁も一緒なんですわ。迎えに行かなあかんのはよぉ分かってるんですけどね、この通りみんなにつかまってしもて、ええ感じに酔っ払ってしもてるんですわ。
ほんで悪いんですけどね、今晩トモコを泊めてやってもらえませんやろか。もう飲まされまくってしもて、前も後ろも分からんのですわ」
「……と言われても、そんな訳には……あ、もしもし……切れてしもた。
トモコちゃん、お父さんもお母さんもな、今日は……仕事なんやろな、忙しぃて迎えにこられへんらしいわ。
今日はおっちゃんの家、泊まる?」
「うん! トモ、おじいちゃんの家に泊まる! 家に帰ってもお父ちゃんとお母ちゃん、喧嘩ばっかりしてるし」
「あ、そう……ほんだらまあ、しゃあないなぁ。まぁ夏でよかったわ。こんなん冬で風邪でもひかしたら、大変やったからな。
ほんだら向こうのお部屋で、おっちゃんと一緒にお布団ひこひこ」
「うんっ!」
奥の部屋は、いつもおじいさんが使っている部屋で、入るとすぐ左手に床の間があり、そこには、いつもトモコちゃんが「鯉さんがラーメン食べてる」と笑う「鯉の滝登り」の掛け軸がかけてあった。その横が押入れになっており、おじいさんはそこから布団を出した。
押入れの正面には鏡台と、背の低い箪笥が並んでおり、その上に小さなテレビが置いてあった。
トモコちゃんは布団に潜り込むと「お布団きれい、お布団ふかふか」と嬉しそうに笑った。
「さ、ほんだら寝よか。おじいちゃんも隣で寝るさかいにな、寂しないやろ。
灯りは……つけとくの? そんなんでよぉ寝れるなぁ……え、いつも電気ついてるの。ああ、そうなんや……
テレビ……もつけるの? あんた今、10時前やで……え? ドラマ? そんなん見ながら寝てるの? ああ、そう……ほんだらつけとくわな。
え? クーラーもつけるの? あんたそんなん、クーラーつけっぱなしで寝たら風邪ひくで……ああ、それも家でそうなん……ほんだらしゃあないな、あんたは言い出したら聞かんさかいにな。ほんだらタイマーにしとくからな。
ほんだらおやすみ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます