第34話:大丈夫だから、どうか泣かないで…

 またまた、先日観劇した舞台の千秋楽での話なのですが…。

 東京千秋楽の日は、緊急事態宣言の関係で無観客配信となりました。

 広い客席には誰も座っていない…。

 そんな状態での配信だったのですが、カーテンコールの際に座長が涙ながらに語った言葉はどれもどれも重たくて。

 きっと、想像なんてできないぐらいに大きな荷物を背負っているんだなって思ったんです。

 あ、この荷物っていうのはあくまで比喩というか…そういうやつですよ。

 責任とかプレッシャーとか色々ね。

 約二年前の公演の時は、チケット完売御礼で立見席も満員状態な日がありました。

 その時を知っているからこそ、お客さんの人数の差が…景色があまりにも違うから、何か感じる事があったんでしょう。

 とてもあたたかなカンパニーですから、一緒に背負ってくれている人達も居たんだろうなって思うのですが、それでもやっぱり…って。

 でもね。

 これは、この作品に限った話ではなくて。

 舞台も音楽ライブも全てにおいて。

 これだけはどうか、伝わって欲しいのだけど…。

 昨今の感染症対策に対して、気を付けようと思っているからこそ現場に行けない…『行かない』という選択肢を、苦渋の選択をした方々だっていたはずなんですよ。

 作品の出来がどうこうって話じゃないんですよ。

 とはいえ、『集客数が少ないのはコロナが原因だから安心してください』って、私は思ってしまうけれど、それもなんか違うじゃないですか。

 観てる側と演じる側はまた違うと思いますから。

 難しいですよね…。

 でも、ルールを提示しておいて、自らそれを破っていく人達が存在するなかで、舞台やライブの幕をあげようとしている方々は、とてもとても頑張っていらっしゃる。

 身体に異常が無くても、検査で陽性反応が出たら降板したり休演したり…。

 そうなってしまった演者さんもスタッフさんも、とてもとても自分自身を追い込んでしまっているように見えて…とても心配になりました。

 例えば、交通事故の加害者になってしまった。

 とかだったら、『ちゃんと気を付けなさいよ!』とか思うんですけど。

 でも今回のコロナとかは、どんなに感染症の対策をしていても感染してしまう場合があるのだから、陽性反応が出てしまった方々に対して責める様な人はごく一部だと思います。

 だって、もしも診断結果を偽装して開演し、クラスターなんて最悪な結果になってしまったら…。

 その方が大変だし、そんなことになってしまったら本当にもう…。


 政府の対応が更新される度に、たくさんの制限をかけられながらも一生懸命-を+に変えようとしている、その努力はちゃんと伝わっているの。

 陽性反応が出てしまうパターンの報告はいくつか見かけるけれど、クラスターが起こってしまった…という報告は少ないものね。


 でも、正直な話をするなら…コロナが流行り始めた頃にクラスターを起こしてしまった舞台がありましたね。

 その時、『あぁ…もしかしたら、劇場で何かをする事への規制が厳しくなってしまうかもしれない』とかとか色々思いました。

 マスクやマウスシールド、フェイスシールドを使用しながらの舞台は、やっぱり多少のノイズになってしまう。

 きっと、演者さん達も口元の表情を見て感じて欲しかったはず。

 最前列のお客さんだって、フェイスシールドなしに観劇したかったはず。


 それでも、初めての緊急事態宣言が緩和されて、数カ月ぶりに劇場に足を運んで観劇した時は、まだ開演していないのに涙が出てきてしまって…。

 あの時は、本当に心の底から感謝の気持ちでいっぱいでした。

 きっと、私だけじゃなく多くのお客さんがそんな風に感じたことでしょう。


 お客さんの数が少なくて不安なのはわかります。

 でも、安心して心から観劇を楽しめるその日が戻ったら、またスポットライトを浴びてキラキラ輝く皆様を観に、応援しに劇場へと行きますから。


 だからどうか…そんな風に泣かないで……。

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