第32話:初めてできた、苦手な作品

 今から話す内容は、あくまで『みかんが好き、イチゴは苦手』ぐらいの話なので、あまり重く受け止めないでください。


 先日、舞台好きな友人がとある舞台円盤を見せてくれました。

 私は、その舞台を一度も見たことがなかったんですが、今までにも初見の舞台円盤を見たことあったので、特に問題はないだろうなって思いました。

 その舞台は、劇場は広く高低差もかなりある。

 そして、ステージに回転装置がついているため、複数の場面をステージごと変えることでクオリティの高い舞台セットでのお芝居を観る事が出来ました。

 ですが、表題にも書いた通り私にはこの円盤は相性が良くなかったみたいなんです。


 というのも、映像をみていて度々明確な『編集』があるんですが、私にはノイズに感じてしまったからです。

 どうやら、見せてもらった円盤は一般的な舞台の円盤ではなく、あくまで映像作品としてつくられ編集された映像だったらしいんです。

 それを聞いたら、納得できるような『編集』だったんですけど、構図も編集も何もかもが映画やドラマといった『映像作品』だったんですよね。

 実際の劇場・舞台装置を使用して撮影した映画…というか。

 なんだろ…アイドルとかでもあるんですけど、実際のライブ映像をMVにする感じというのが近いかな。

 個人的に一番抵抗を感じたのがスローモーションでした。

 いわゆる『カット』は全然許せるんですよ。

 尺の都合とかもあるでしょうし、日替わりギャグとかを編集でなくしたり…。

 あとは、回想シーンみたいな感じで、実際の舞台では音声だけのシーンを映像を薄めに小さく映すとか…。

 よくあるのは、離れた場所に居る登場人物の会話シーンで、2画面みたいな編集にして2人のバストアップを並べる感じの編集とかね。

 そういうのは過去にも経験した事があったんですけどね…。

 今回見た作品は、刀を使用した殺陣がある作品だったんですよ。

 で…登場人物が斬られて倒れるシーンに、スローモーションの編集がされていたんですよね…。

 なんか、それを見た時に思考が停止してしまって…。

『私は今、何を見ているんだろう?』

 という気持ちになったんですよ。

 それからしばらく見続けていくなかで、今見ているのが『映像作品』なんだと無意識に理解した時に、一気に脳死でただ映像を見つめるだけになっちゃったんですよね…。

 運営さんなのか監督さんなのかわからないですけど、『私が作りたかった世界はこうなんです!』っていうのがビシビシと伝わってきてしまって…。

 個人的に舞台作品としての楽しみがなくなってしまって…。

 ほら…私って、舞台を観劇して考察したり解釈を考えたりするのが好きなんですけど、映像作品って編集ができるからこそ、演者の意思よりも編集者の思考が優先される傾向にある気がするんですよね。

 例えるなら…学校の国語テストで、自分の指名を書いて問題を解こうとした瞬間に答えが書いてある紙を渡された感覚…ですかね。

 きっと、事前に劇場で観劇した状態でこの映像を観る分には、「そう!ここをアップで映してほしかった…」とか、「あ…監督さんはそういう解釈だったんだな」とかって、自分の解釈や感想と照らし合わせる事ができると思うんですよ…。

 だから、舞台映像版と今回見せてもらった映像作品版との二種類存在するなら楽しめただろうな…って。

 でも、実際に商品化されてるのがこの映像作品版のみなら、私は申し訳ないのだけれど…この映像を見て、『実際に劇場で観劇したいな』とは思えなかったです。

 運営さんが作りたいものが、舞台なのか映像作品なのかわからないから…。

 この映像収録がされた日と同じ公演を、実際に客席から観劇した場合どんな風に違うのか…。

 登場人物の立ち位置は、カメラで収録しやすい場所になっているのではないか…?

 実際に正面から観劇した観やすさを優先していないのではないか?

 なんていう、色んなモヤモヤがね…。


 でも、今回の経験で自分にも向き不向きがあるんだなってわかったので、今後初見な作品の舞台円盤を観劇する時に自衛ができるなって…。

 新たな発見ができたと同時に、なんだか自分がちっぽけな価値観だな…なんて思いつつ。

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