忘れ去られる
春を忘れていくように、風は生温く太陽は眩しく、もう夏の支度を始めている。誰も桜に見向きもしなくなった頃、青々と光る若葉は小さく揺れて、控えめにこちらを伺い見た。暑がりの彼女はもう半袖のブラウスを身につけ、夏が待ち遠しいねなんて笑う。季節は巡る。弔われない春に、僕を置き去りにして。
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