ブーメランのように

口に出した言葉が、傷つける言葉になってかえってくる。

そんな経験、ありませんか。


わたしの場合は、小学4年の頃でした。

当時、女の子で「ババロア」と呼ばれていじめられていた子がいました。

女の子は無抵抗で、いつも悲しそうな顔をしていました。


わたしは、その子と友だちになりました。

さっそく、いじめっ子たちは、わたしを「ババロア2世」と呼びました。

わたしは黙っていました。

ひとりでいじめられるより、ふたりでいじめられるほうが

心強いですよね。


そりゃ、いじめられないのが一番だけど。

人間、そんなに善良でいることはできない。

いじめることでストレス解消してるなら、

それはそれで、いいんじゃなかろうか。


わたしはその子と、中学を卒業するまで友だちでした。

その途中で、わたしは知らない新しいいじめられっ子を

押しつけられて、3人でいじめられていました。


正直に言うなら、その子たちをわたしは、好きになれなかった。

友だちだと言いながら、家にあげたこともないし

宿題を見せ合ったこともない。


卒業したとき、その子たちとも縁を切りました。

わたしは、ババロア2世と呼ばれていた過去を捨て

高校で生徒会長になりました。


それから何年経ったでしょうか。

宮部みゆきの『ソロモンの偽証』という本と

巡り会いました。


いじめの実態を描いた作品ですが

いじめられたその子は、おなようにいじめられている友だちを

嫌っていました。


宮部さんは、なぜ、わたしの心境を知ったのでしょうか。

ご自分が、いじめられていたのでしょうか。

いじめっ子たちが、半ば揶揄するように、

正義漢ぶったわたしの本心を

宮部さんに暴露したのでしょうか。


いじめられっ子が悪の心を持つというこのストーリー展開に

わたしは打ちのめされました。

わたしは、ババロアさんをかばったんじゃない。

自分の正義を彼女に押しつけただけだった。


言葉が返ってくるように

態度も返ってくる。

正義って、なんだろう。

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