幽霊話・タクシーの運ちゃん編

広島に豪雨が降り続けた日のこと。

通院のためにタクシーを使いましてね。

その際、「夏らしく、ホラー話を聞かせてよ」

って運ちゃんにリクエストしたら、

こんな話を聞かせてくださいました。


おれの実家は湯来(ゆき)町で、雑貨店をいとなんでいた。

昭和も中頃のことだ。雑貨店では、タバコも売っていた。

ある夜、そのタバコを買いに、ひとりの営業サラリーマンが

まっさおになってガタガタ震えながらやってきた。

そして、タバコを買うと、こんな話をしてくれた。


さっき自分は車で山の道を走っていた。

途中の道のガードレールに、両手がピタリとはりつき、

体が見えない。

散切りのボサボサ頭がガードレール向こうから、上下するばかり。

「こりゃたいへんだ、あの向こうに

落ちそうになってるに違いない」

助けてやろうと近づいた。


するとどうだろう。

近づくとすでに手も頭もなにもなく、

崖っぷちだけが目の前に広がっていた……


命からがら、逃げだしたんだ、という話でした。

ほんとかな。

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