第13話 樹洞

ひょんなことからはじめましての人の目の前で心理テストをやることになった。どうやら心理カウンセラーの資格のある人のようだ。樹の絵を描いてください、と言われたので子どものような絵を描き、手持ち無沙汰になったので真ん中に洞を書いた。

その人によると、木を人生としたら、洞を書いたあたりの年代で大きな喪失感を味わったはず、と言われたのだけど、何も思いつかない。その時代の記憶がない、というわけではなくて、全体的に波風のない人生を送ってきたのだ。

もしかしたら自分でそう思っているだけで、思い出も感情も沢山ん忘れてしまってるのかもしれないと思った瞬間、持ってた記憶のないものに対する謎の喪失感で胸がいっぱいになった。

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