第1512話 〈迷宮防衛大戦〉試合開始前、会場盛り上がれ‼




「さあああああやってまいりましたーーーーーー! 学園祭最終日の――超! ビッグな! 極上イベントーーーー!! 〈迷宮防衛大戦〉の時間だーーーーー!! 観客席のみなさん、盛り上がってるかーーーーー!!」


「「「「「おおおおおおおおおお!!!!」」」」」


 場所は第一アリーナの会場。

 そこに集まった選手たちの前で去年も司会者をやっていたお姉さんがマイクに向かってノリノリで叫んでいた。

 それに応えて大反響。心なしか、去年よりも大きい気がする。

 選手からも、観客席にいる来園者や見学者からも大歓声があがった。


 そしてついに今年のレイドボスの名が告げられる。


「これから登場するのはこのアリーナで最強の名をほしいままにする3強レイドボスの1体――〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉だーーーー! とある物語では最強無敵の不死者、不死王ノーライフキングと対を為す超強力なモンスター! 3年周期で巡ってくるこの〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦では、なんと今まで倒された記録はないというから驚きだーーー!」


 司会者さん気合い入ってるな~。

 良い盛り上げだ。観客席から雄叫びのような歓声が響いているぞ!


「ルールは簡単! 〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉、そしてモンスター側に寝返った悪の構成メンバーが100人! これを選手全員が協力して倒す! ただそれだけです! ここに集まる3000人の選手たちは果たして襲い来る〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉たちを倒すことが出来るのかーーーー!?」


 内容は去年とほぼ同じだ。

 だが、明確に違う部分がある。

 それが、参加者の人数だ。


 去年、〈ヘカトンケイル〉戦で共に戦ったのが5000人に対し、今年は3000人と大幅にその人数が縮小されている。というのも。


「そしてそして、今年の出場者には、去年あの3強の1体、〈ヘカトンケイル〉にトドメを刺した〈エデン〉が参加しております! さらに学生の精鋭陣がほとんど参加! 学生全体のレベルも上がっているとのこと! おかげで今年は5000人も入れてしまうと難易度が大幅に下がることが懸念され、3000人に抑えられたとのことです!」


 ――――わあああああああああ!!


 そう、去年ですら〈ヘカトンケイル〉を倒した俺たちは、今年はさらに成長を遂げている。

 それに学生全体のレベルが上がっているのだ。

 それを去年の難易度のまま出しては一方的になりかねない。


 一応今年のレイドボス〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉はまだ誰も勝ったことが無い、とんでもレイドボスの一角らしい。

 まあ、俺はゲーム時代に倒したことあるけどな!


 というかいくら〈六ツリ〉をまだ覚えていないにしても、3000人も居たら勝てるだろうという予感。


「いや、油断は厳禁だな」


「なんであなたは学園最強クラスの防衛モンスターを相手に油断しようとしているのよ」


 シエラから鋭くて素敵な指摘が入った。ついでにジト目もプレゼント。

 うおーー! テンション上がるーーーー!


「大丈夫だシエラ! 今気を引き締めた! 今年も勝ちにいくぞ!」


「……まだ誰も勝ったことが無いボスらしいわよ?」


「つまり俺たちが初勝利ってことだな! これは盛り上がるぞ!」


「すごく楽しみなのです!」


「どんな敵が相手でも、私たちには敵わないよね!」


 俺が喜びを顕わにすると、ルルとノエルたちも乗ってきた。

 シエラはしばらくなんとも言えない顔をしていたが、最後には「はぁ」と溜め息とついて「そうね」と言って同意してくれたよ! 頼りにしているぞシエラ!


 俺が育て上げたメンバー、今日は総勢47人が参加する!

〈エデン〉メンバーのうちハンナとカイリ、あとニーコを除いたフルメンバーがここに集合しているぞ! そしてフルメンバーということは、


「な、なななな、なんで〈エデン〉のレギュラーメンバーと一緒する初めての機会が〈迷宮防衛大戦〉なのかな?」


「ゼフィルスだから、じゃない? 私は強い相手、楽しみだけど」


「緊張しますよね! でもこの日のために鍛えてきましたし、私、できると思います!」


「マシロはほんとポジティブだな! あたいもちょっと見習いたいぜ……」


 近くに居たのは最近〈エデン〉に加入したばかりのシヅキ、エフィ、マシロ、ゼルレカの4人だ。

 なんかシヅキとゼルレカは少し震えている気がする。

 マイペースで強い相手との戦いが好きなエフィは逆に楽しみにしているし、マシロもやる気満々の様子。


 そう、今日は先月仲間になった新メンバーの4人も参戦してもらっているのだ。


〈エデン〉メンバーにはすでに4人は紹介していたが、実は一緒に戦うのは今日が初めてだったりする。

 元気づけてあげないとな。


「ゼフィルス、あの子たちに声を掛けてあげて」


「もちろんだ」


 シエラにも催促されて一緒に4人の前に立つ。


「4人とも、大丈夫か?」


「これが大丈夫に見える? ほら見て、戦慄さんでもないのに、震えるが止まらないよ!」


「おお~。見事にプルプルしてる。でも大丈夫だ。シヅキの持ち味って召喚と魔法攻撃だし」


「あ、確かに!」


 そこで自分の能力に気が付いたのかシヅキがハッとなった。どうやら視野が狭まっていたようだ。ちなみに戦慄さんとはいったい誰だろう? 有名人かな?

 あと震えているのは、ゼルレカだな。こっちにも明るく声を掛ける。


「というかゼルレカって去年〈迷宮防衛大戦〉に参加したいってガルゼ先輩に言って困らせてなかったっけ?」


「うっ。あの時はほら、世間知らずだったって言うか、兄貴と一緒にやりたかったっていうかよ。あとアリスとキキョウにも良いところ見せたくて……」


「なんだ可愛いかよ」


「な、なぁ!? ゼフィルス先輩、このあたいをからかいやがったな!」


 ゼルレカもずいぶん丸くなったもんだ。この光景をガルゼ先輩に見せてあげたいぜ。

 いや、むしろゼルレカとガルゼ先輩が再会するシーンを側で傍観したい。俺が。

 だが、この丸くなったゼルレカの痴態(?)は別の人物に見られることになる。


「はっ! あの手を焼いていた小娘がずいぶんしおらしくなってるじゃないのさ」


「げぇ!? パネェの姉御!?」


「パネェじゃねぇって言ってんだろが。サテンサ先輩と呼びな! 全く、そこは変わってないんだねぇ」


 そう、そこに居たのは〈獣王ガルタイガ〉の現ギルドマスター、〈覇姉ぱねぇのサテンサ〉先輩だった。それとサブマスターの〈冷熱のクエスタール〉先輩他、〈獣王ガルタイガ〉面々が勢揃いだ。

 みんな、ニヤニヤしたり、微笑ましいものを見る目でゼルレカを見ている。


「や、やめろぉ!? そんな目であたいを見るな! 見るんじゃない!」


 ゼルレカは真っ赤な顔をしながら掴みかかっていった。元気だ。


「やっぱり〈エデン〉に、いや、ゼフィルス君に預けたのが良い影響になったようさね」


「ええ。少しやんちゃな子だったみたいだけど、ゼフィルスが面倒を見るようになってすぐにそれも引っ込んだって聞いたわ」


「はい! ゼルレカさん、ここに来た当初は寂しかったみたいですけど、すぐにゼフィルス先輩の指導でそれどころじゃなくなってました。それで、気が付いたら角が取れていたんです」


 サテンサ先輩の呟きにシエラとマシロが回答する。特に側で見ていたマシロの話は、かなり実感が籠もっていた。


「はっはっは! ゼフィルス君に景気よくしごかれて尖ってたもんが全部取れちまったってかい。いやぁ、よくゼルレカを折ってくれたねぇ」


「いやぁ、俺は折った覚えはないんだけどなぁ」


「嘘吐け、このゼフィルス先輩! あたいなんか加入して1ヶ月半で上級下位ダンジョンを5箇所攻略して、もう上級中位ダンジョンもいくつか攻略終えてるんだぞ!? もうあたいは上級職でLV40だ! こんだけ格の違い見せつけられたら猫人なら誰でも従うわ!」


 ゼルレカのLV40宣言に〈獣王ガルタイガ〉が少しざわめき、サテンサ先輩が快活に笑う。


「はっはっは! やっぱゼフィルス君はいいね! さすがはあのガルゼ先輩が認めていた男さ!」


 どうやらゼルレカが丸くなったのは、俺の超高速ダンジョン攻略&レベル上げの賜物だったらしい。

「猫人」には自分より強い主人に従うという本能があるため、あまりにもとんでもないものを見せつけられたゼルレカが丸いにゃんこになってしまった、ということのようだ。

 いやぁ。あれくらい〈エデン〉では普通のことさ。


「それじゃあゼルレカ、〈エデン〉の足を引っ張んないよう、これからも気張りなよ」


「わ、分かってるよ」


 そうサテンサ先輩はゼルレカに告げて去って行った。

 それを皮切りに、次々とギルドが押し寄せることとなる。


 Sランクギルド〈ギルバドヨッシャー〉、〈百鬼夜行〉、〈千剣フラカル〉を始め、Aランクギルドの何人かが挨拶に来たんだ。


「ははははは! ゼフィルス氏よ、今日は楽しもうではないか!」


「テンション高いなインサー先輩は!」


「もう我々はこの日を待ちわびすぎて夜も眠れなかったのだ!」


「徹夜明けのテンション!?」


〈ギルバドヨッシャー〉のギルドマスター、インサー先輩はテンションが天元を突破していて迷子になっていたな。なお、ちゃんと昨夜はぐっすり快眠だったらしく、パワー全開らしい。ちょっと全開すぎるような気がしないでもないが。


「こんにちはなのよゼフィルスさん。〈エデン〉の【嫉妬】ちゃんと打ち合わせがしたいのよ? 主に『禁止』について――」


「そいつは重要だなホシ先輩。〈エデン〉の方針なんだが―――」


〈百鬼夜行〉のギルドマスター〈吸星のホシ〉さんは【嫉妬】持ちだ。レイドボスに2度あれが通じるのかということも含めて、この打ち合わせは重要な機会だったんだぜ。


「こんにちはですゼフィルスさん。リカちゃんがいつもご迷惑をおかけしております」


「ちょっと待ってくれないかリン姉様。そこはお世話になっておりますだ。私はゼフィルスにそんな迷惑をかけてなんていないぞ? ……ないよな?」


「ああ。リカは優秀で頼りになるメンバーだ。こっちもいつも世話になってるぜ」


〈千剣フラカル〉のギルドマスターはリカのお姉さんのリンカ先輩が務めている。

 フィリス先生ともキリちゃん先輩先生ともリカとも違い、1人だけ小柄で物腰も柔らかだ。しかし、どこかカノン先輩先生的な雰囲気も感じるな。


 Sランクギルドが終わればAランクギルドの方々との挨拶。

 なぜかみんな〈エデン〉に挨拶に来る不思議。

 だが、さすがにそんなことをしていれば時間が減ってくる。

 しかも、他にも挨拶したそうなBランクギルド以下の人たちや外からの来園者の方々が周囲でうずうずしているという始末。


「なあ、シエラ。挨拶ラッシュが終わらないんだが?」


「あなたがトップだもの。こうなることは予想出来たわ」


「ええ? どうしろと? 助けてシエラ~」


「うっ。分かってるわ。幸い時間までもう少し、ここで時間を理由に断れば角が立たないわ。私はノエルに言って広めてくるから、あなたはまずAランクギルドだけでも挨拶しておいて」


「お、おう~。さすがはシエラ、頼りになる!」


 シエラについノリで頼ったら、明確に対処してくれた。

 キリッとして動くシエラが美しい。


「何か問題がありましたら、こちらでも対応いたします」


「……頼むぜセレスタン」


 後ろにはいつの間にか執事が控えていた。ほんと、俺のギルドには頼りになる人が多いんだぜ。


「さああああああ、そろそろ時間が迫って参りましたーーーー!! 出場者の皆様は配置に付いてください! 制限時間は3時間! もう残り3分を切り、そろそろカウントダウンを開始しますよーーー!!」


 おっと司会のお姉さんが通告する。

 いよいよだな。

 すでに〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の攻略法はちょこっとだけ〈エデン〉メンバーに伝えてある。


 そして3分後、カウントダウンと同時に超巨大な魔法陣が光り出し、そこからとある塔のように高い超巨大モンスターが現れる。

 その身長は実に40メートルを超えるほどだ。

 そして体を覆っていたマントが徐々に開かれていくと、そこに出てきたのは骸骨リッチ系。


 そしてマントの内側、ボスの足下には――100人の黒衣の人たちが現れていた。


 出てきたぜ――――〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の登場だ!!


〈迷宮防衛大戦〉、開始だな!!



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