第1409話 〈金箱〉わっしょい!上級職天使4種のヒント!




「やったわねゼフィルス!」


「おう! みんな最後、すげぇ決まってたぜ!」


 そう言ってみんな集まってハイタッチ!

 いやぁ、最後の連携よ。

 素早い相手を逃がしもせず、みんな最高の攻撃を繰り出してくれた!

 素晴らしい! というか気持ちいい!

 俺は感謝と感激を込めてハイタッチした。


「ゼフィルス。出るわ!」


「おう、みんな準備はいいか!?」


「なんの準備だ?」


 メルトの疑問の声。ふっふっふ。

 レアイベントボスを倒したら、その後に来るものは決まっている。

 その名も――〈金箱〉確定だ!


 エフェクトが完全に消えると、そこには〈金箱〉が鎮座していた。


「〈金箱〉わっしょーい!」


「〈金箱〉だわー!!」


「ああ、なんだかこのノリは久しぶりに見たな。2人とも、今回は仲良くするのだぞ」


「ん! きんばーこ!」


「ってカルアもなのか!?」


 即で〈金箱〉に飛びつくのは3人。

 もちろん、俺、ラナ、カルアである。


 緊張が一気に抜けたリカがちょっとびっくりしてた。


 だが、〈金箱〉を前にしてテンションノリを押さえるなんて難しい。

 それがレアイベントボスの〈金箱〉ならば尚のことだ。


 しかも今回の〈金箱〉は1個だった。ちょっと無念。

 こうなれば、俺が開けるしかあるまい?


「というわけで、今回は俺が開けようと思う(キリッ)!」


「何がというわけなのよ! ゼフィルスはいつもそうだわ! そ、そんなにキリッとした顔してもダメなんだからね」


「ん!」


「だんだん声に力が無くなっていますよラナ様」


 そこにやってきたのはエステル、シズ、フィナだ。

 エステルはラナを心配そうに、シズは俺に何やら圧を掛けてきている気がする。

 気のせいということにしておこう。


「はい。私は教官と一緒に開けることを所望します」


「な!」


 おっとここで伏兵現る!

 さすがは天使なフィナだ。

 確かに、天使系レアイベントボスだったし、【天使】系職業ジョブであるフィナが開けるのも良いかもしれない。本人も俺と開けるのを所望している!

 ここは賛成するしかあるまい!


「よし、今回はフィナと共同作業で開けよう!」


「な、ななな~~!?」


「ラ、ラナ様落ち着いてください」


「ラナは次に〈金箱〉が出たら開けてもらうから、その時に、な」


「む~。いいわ、絶対だからねゼフィルス!」


「ん! ん!」


「もちろんカルアも近々な」


 というわけでフィナと一緒に開けることが決定した。

 そこで現れるメンバーたち。駆けつけるエリサ。


「さっすが! ご主人様たちが勝ったのね! ――あれ? フィナちゃんそんなところで何してるの?」


「今回は私が教官と共同作業で開けることが決まりました。ヒシ」


「な、なんですってーー!?」


 そう言って俺にくっつくフィナを見て目を見開いたエリサの叫びが部屋中に木霊した。なんというリアクション。


「ラ、ラナ殿下!?」


 そして縋るようにラナの方を見るエリサ。しかし。


「次は私よ」


「ん」


「希望も何も無いし!?」


 ラナとはすでに話が付いているのだ。

 エリサは1人ガーンとなってた。

 そこにフィナが寄り添う。


「大丈夫です姉さま」


「フィ、フィナちゃん!」


「私が姉さまの分まで楽しんできますから」


「フィナちゃん!? それ私がちっとも嬉しくないやつだよ!?」


 いい話風だが、違った。これ追い打ちだ。

 フィナに縋ろうとするエリサを見事に躱しきって、フィナが俺の隣に来る。

 よし、今のうちに〈金箱〉を開けよう。


「フィナ、準備は良いか? まずはお祈りだ」


「はい、教官」


「〈幸猫様〉〈仔猫様〉! いつも幸運ありがとうございます! どうか良いものをお願いいたします!」


「お願いいたします」


 お祈りが終われば開錠だ。いざ。

 しかし開けようとすると、俺の腕の間にすっぽり収まるようにフィナがやってくる。

 おお、これはルルにしかやったことのない、あすなろ抱きならぬ、あすなろ開錠!

 フィナはもしかしたら、ずっと俺とこれをやってみたかったのかもしれない。


「じゃあ行くぞフィナ」


「はい。せーの」


「せっ!」


 パカリと2人で宝箱を開く。

 ここは〈夜ダン〉のレアイベントボスが悪魔なら、〈聖ダン〉のレアイベントボスは天使だ。故に、天使系のドロップが入ってる。


 そして中に入っていたのは一振りの剣――のレシピだった。


 エステルに〈幼若竜〉で『解読』してもらい判明。


「これは――名称を〈天使天命のつるぎ〉。片手剣のレシピです」


「〈天使天命のつるぎ〉……!」


 グッド! 素晴らしくグッド!

 俺はおっしゃーと叫びたい衝動をなんとか我慢して握りこぶしを作った。

 なお、顔は我慢できたかは分からない。


「それは。名前からして強そうな剣ですね。教官が凄く嬉しそうな顔をしています」


「ゲフンゲフン! まあ待ってくれ、レシピを見てくれ。効果を見る限り、相当強いぞ! 【天使】系専用装備のようだ」


「フィナちゃんの専用装備!?」


 ――専用装備。

 今までにもいくつか登場した特殊武器である。

 例えば【大罪】職専用装備などが有名か。

 これはそれの【天使】版。

 もちろん【悪魔】版もある。〈地獄の三つ叉の戟〉がまさにそれだな。


 まあ、専用装備というか、【天使】や【悪魔】が装備するとより強力な力が引き出せる、という感じの武器だ。

 他の職業ジョブでも装備自体は可能だな。

 そしてこの〈天使天命の剣〉は、エリサが言ったようにフィナの装備になるだろう。

 トモヨは二盾使いだし。


「帰ったら早速アルルに作ってもらうか」


「はい。楽しみです。できれば盾もほしいところですが」


「そうだな~。ここに通えば、もしかしたら天使専用の盾もドロップするかもしれないな。通うか?」


「是非!」


「オーケーだ! 俺も付き合うぜ! これからは毎日ここに〈テレポ〉しよう!」


「あ、なによゼフィルスその話。私も混ぜなさい!」


「ん。私も参加」


「おっとそうだな。じゃあ、攻略中は毎日ここに一度来てレアイベントボス狩りをするか!」


「「「「おー!」」」」


 ということで、毎日の〈やーちゃん〉狩りが決定した。

 フィナに言ったとおり、実は天使専用盾というのもちゃんとドロップする。

 天使と言えば盾だからな。

 レシピなので1枚当てればフィナだけじゃなくトモヨの強化にも繋がる。もちろん全身装備もドロップするぞ。


 というわけでここへは毎日通うことを決めた。ラナとカルアもやる気だな! ここが〈金箱〉確定だからかもしれないが。〈守氷ダン〉と合わせて忙しくなりそうだぜ。

 続いて、宝箱が終わればイベントだ。

 ここはただの〈金箱〉確定部屋ではない。イベント発生の部屋なのだ。


「じゃあ、続いてこの奥だな」


「〈守氷ダン〉では宝箱が置いてあったのよね! あと壁画」


「ラナ様、壁画がメインでしたよ。大騒ぎになったそうです」


 ラナの認識が俺と同じで大変良き。

 壁画は、そういえば〈守氷ダン〉の時のスクショをミストン所長に提出したんだっけ。あの時は大変だった。数百人規模の研究員たちがレポート用紙を片手に詰め寄ってきたんだ。詰め寄りすぎだって。

 もちろん詳しい話を語ってやったぜ。


「ラナ様はここでお待ちください。まずは私たちが先行して見て参ります。――パメラ」 


「回復完了してるデース! いつでもいけるデスよ!」


 おっとここでシズとパメラが先行するようだ。

 危険は無いし、やらせても問題は無い。ラナが俺の方を向いてアイコンタクトしてきたので頷く。


「分かったわ。シズ、パメラ、お願いね!」


「お任せください」


「行ってくるデース」


 ラナはこれに素直に頷いた。もっと「一番に行くのは私よ!」とか言い出すかとも思ったが、こういう時のラナはちゃんと自重するのである。……そういえば俺の自重さん、どこ行っちゃったのかまだ帰って来ないんだよなぁ。まあ、気にすることではないだろう(?)。


 というわけでまずは2人に奥へ進んでもらうと、割と近くで行き止まりだったようで俺たちの見ている先で立ち止まった。


「ラナ殿下、どうやらここが行き止まりで危険はなさそうデース!」


「ということよゼフィルス」


「じゃ、俺たちも行くか!」


 パメラの言葉をすぐに信じてラナが急かす。

 まあ、俺たちも見てたもんね。ここは〈守氷ダン〉のように奥が長くなくてすぐに行き止まりになるからな。もちろんここは隠し部屋に近いので罠やモンスターの類いは無い。


 みんなで奥に行ってみると、〈夜ダン〉の時のように、通路に壁画が描かれていた。


「わー、天使の絵がいっぱい描いてある!」


「いったいこれは誰が描いたのでしょう?」


 エリサとフィナもこれには驚いた様子で壁画を観察していた。

 あとフィナ、これを描いたのは俺も知らないんだ。用意したのは開発陣だろうけどな。

 俺は用意してあった説明をしていく。


「〈夜ダン〉の時と同じだな。これは、【天使】系上級職の発現条件のヒントだと思うぜ」


「上級職の発現条件のヒント!?」


「教官、それは本当なのですか!」


「ああ。おそらくな。だが、ほとんど間違いないと思うぜ。〈夜ダン〉の時とそっくりだからな」


「これが上級職の発現条件のヒント……」


 さすがは〈エデン〉のメンバーズ。

 壁画にはみんなが興味を示して一気に見学会になってしまった。


「壁画は、4つあるわね」


「抽象的なものが多いですが、モチーフになっている小道具? のようなものがあります。あの天秤が描かれているのは、私の職業ジョブでしょうか?」


 当たりだフィナ。あの天使が天秤を持っている絵こそ【ミカエル】の発現条件のヒントだな。同じくユリの花を持っている天使の壁画は【ガブリエル】の発現条件のヒントである。

 他にも魚と巻物を持った天使の絵があるが、あれが【ラファエル】と【ウリエル】の発現条件のヒントだな。

 パシャパシャ。後でこの写真も研究所に届けてあげよう。


 ちなみに【悪魔】よりも明らかに上級職のヒント数が多いのは、悪魔の下級職が【ナイトメア】以外にもあるからだな。主に【デーモン】系統が。

 その【デーモン】系統の下級職と上級職は上級中位ジョーチューのランク5〈地下の魔界ダンジョン〉で明らかになるのだが、それはまた別の機会があれば話そうか。


「あと、みんなにはこれも教えておこう」


「? なによゼフィルス勿体付けて」


「エステル、壁画に向けて〈幼若竜〉で『絵解き』をしてみてくれ」


「! わ、わかりました」


「『絵解き』? 『絵解き』って?」


「まあ、見てれば分かるさ」


 この前研究所でやっている所を見るまで俺もうっかりその存在を忘れていたスキルだ。だって職業ジョブの発現条件って、もう全部分かってるんだもん。

『絵解き』は文字通り、壁画用の鑑定スキル。〈幼若竜〉には実は『解析』『解読』『看破』そして『絵解き』の強力な4種類のスキルを保持しているのだ。

 そして『絵解き』は、こういう壁画に使うためのスキルなのである。


「準備、できました。いきます――『絵解き』!」


「わ、わわわ!?」


「これは、読める?」


「絵が文字みたいに読めるようになりました? 不思議な感覚です」


 うむ。スキルを使っても壁画自体は変わっていない、いや、エフェクトに光っているくらいだ。

 だが、その効力は確かに出ていて、俺たちは壁画に描かれた絵の意味を文字として読み取ることができるという不思議な感覚になっていた。


「【ミカエル】、【ガブリエル】。それにこっちの魚の絵は【ラファエル】。回復に特化した上級職……」


「ふわ~、凄いわねフィナちゃん! こっちは【ウリエル】、アタッカー特化だって!」


「これ、壁画に使うスキルだったのですね」


 フィナが思わず呆然と呟き、エリサがそんなフィナをゆっさゆっさ揺らしながらはしゃいでいた。うむうむ。存分にはしゃげ。

 エステルは〈幼若竜〉の新たな力が判明し、感動の様子だ。

 忘れててごめんな?


「ゼフィルス、これは?」


「少し前に〈守氷ダン〉のレアイベントボスの壁画のスクショを研究所に届けたときにな。いやぁ、これを見つけちゃうとか研究所はすごいなぁ(俺はすっかり忘れてたのに)」


「…………ふーん。ゼフィルスでもそういうことがあるのね」


 あれ? シエラがジト目じゃないぞ。ジト目プリーズ!

 


 そんな感じでざわざわしていたが、少し経ってシエラが言う。


「そろそろ戻りましょうか。また、何度もここに足を運ぶのだし。――ゼフィルス、スクショは撮ったのでしょう?」


「おう、ばっちりだぜシエラ」


 珍しい光景にざわざわしていたが、30分も経てば飽きも来る。

 シエラが促し、俺たちは先へ進むのだった。



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