第1355話 練習ギルドバトル終了―からの打ち上げだー!




「試合終了だ! 第一試合は――白の勝ちだーーー!!」


「「「「いえーーーい!!」」」」


「「「「おおー!」」」」


 赤本拠地を落として数十秒後、試合終了のブザーが流れた。

 いやぁ、やっぱ30分って早いわぁ。小城取りの時間全然無かったもんな。

 巨城取ったらリーナからガンガンマークされて、〈ロードローラー戦法〉で帰還することで結構な数の小城を手に入れたが、その後は防衛戦。

 それが終わったと思ったら今度は侵攻で、赤本拠地を落としたのが〈残り時間0分32秒〉だった。フィールドが広すぎる! でも楽しかった!


 しかし、これで目標だった〈エデン〉の城壁は無敵ではない、本拠地を落とすことも十分可能だと示せたな。心なしか観客席もざわついている気がするぜ。

 あとリーナも良い勉強になったはずだ。うむ。


 白本拠地は盛り上がってみんなでハイタッチ!

 もの凄い盛り上がりを見せていた。


 やっぱ強敵を相手に勝つというのがとても心に響いたのだろう。

 しかも本拠地を落として勝つという王道にして理想の勝利だ。

 そりゃ沸くさ! 沸かないわけがないさ!

 しゃああああ!!


 しかもこれがまだ3試合控えている。

 素晴らしい。こんな打ち震えるような感動があと3回も味わえるなんて! 全部勝たなければ。


「はいはいみんな、喜んでいるところ悪いけれど、そろそろ時間よ。転移陣で1度控え室に全員で集まるからね」


「「「「「はーい!」」」」」


 おっとシエラが手を叩きながら注目を集め、これからのことを告げる。

 そして数秒後には足下に転移陣が現れ、俺たちは気が付けばフィールド外、大きな控え室へ集合していた。赤チームも向かい側に揃っている。

 転移など、フィールドの操作をしてくれているムカイ先生もいるが、なぜか背景に溶け込んでいるな。相変わらず無口な方だ。


「…………」


「では進行役は俺が。みんな第一試合お疲れ様! これから第二試合に移るぞー! 10分ほどの打ち合わせの後再試合だ! フィールドは変わらず、チームだけが変更する!」


 ムカイ先生に視線で促されたので俺が前へ出て説明。

 白チームはうずうずしているし、赤チームも若干どんよりしているし、〈敗者のお部屋〉に行ったメンバーはちょっと苦笑気味だが、時間が無いので許してほしい。


 チーム分けは事前に決めてあったのでスムーズだ。

 新たな白チーム、赤チームで分かれる。俺はずっと白チームだ。リーダーだからな。


 そのまま「第二試合もよろしくお願いします!」とお互い礼をして本拠地へ転移。


 10分の作戦会議――という名のさっきの試合の感想会が勃発して、俺も根掘り葉掘り聞かれたよ。特にエステルなんて〈イブキ〉に乗っていたのに俺に撒かれ、シエラとの対戦中も横からきた俺にかっさわられて退場してしまったからな。ちょっと膨れていて可愛かった。


 そんなこんなで第二試合が始まり、そしてまたまた白の勝利に終わる。

 さっきよりリーナの作戦も良く、しっかり〈中央東巨城〉や〈南東巨城〉を確保して俺に取られないようにしてきたし、〈南西巨城〉は諦めるなど、たった1戦でこのフィールドのポイントを押さえてきたところは良かったが、それでも勝った。

 今度は俺も〈イブキ〉を使えたからな。まだまだいろんな戦法があるんだってところをリーナに見せてやったぜ。


 また、ヘルプニャン完全体も俺が使用することになった。

 シエラたちからはとても悩ましげに止められたが、それでも使ったよ!

 おかげで俺が指示を出すことでそれなりに良いところを見せられたんじゃないかと思う。


 その調子で第三試合、第四試合と続いていって、楽しかった3時間はあっという間に過ぎていった。


 ほんっっっとうに楽しかった。

 結果、全部白チームが勝った。まだまだリーナには負けてあげないぜ?

 リーナも試合の度に固定観念が壊れて良い感じな作戦が作れていたが、その度に俺が〈イブキ〉やカルアを使ってぶっ壊した。途中リーナは混乱もしていたが、最後の第四試合では点数的に一番良い勝負の展開に持っていかれたよ。さすがだ。それでも全ての職業ジョブを操ったことのある俺を倒すには、まだまだまだまだ足りないけどな。


 というか〈エデン〉で職業ジョブを集めて育成してきたの俺だしな。まずメンバーが俺好みに育ってるんだよ。

 ふっふっふ、ギルドバトルのことは大体伝えたので、リーナは今度から職業ジョブの勉強だな。どんな職業ジョブがどんなことができるのか、ではなく、どんな状況で活躍出来るのか、輝かせることができるのか、どんな状況を想定して育成しているのかを知ってもらおうと思う。それを身に着ければ、リーナはさらに一歩先に進む事が出来るだろう。ふはは!


 そして楽しい時間は瞬く間に過ぎていくもの、とうとう四試合全てが終わってしまい。最後のブザーが鳴る。


「終わっちまったーーー!! でも、楽しかったーーー!」


「ふふ、残念ね。でも、本当に楽しく感じたわ」


「私も、凄く楽しかったわ! でも、負けたのは悔しいわ!」


「はっはっは! 敗北の味を教えるのもこの練習ギルドバトルの目的さ!」


「何よそれ! 返品するわ! これは〈幸猫様〉に癒やしてもらわなければいけないわね」


「〈幸猫様〉は関係無いだろ!? くっ、早く戻って死守しなければ。ここはヘルプニャン完全体に」


「ゼフィルスもラナ殿下もその辺りで、そろそろ転移陣で呼ばれるわ」


 第四試合は防いで勝った。

 白本拠地を守り抜いて勝つという結果に落ち着き、戦っていたシエラとラナの健闘をたたえ合う。あれ? 全然たたえ合ってない気がするな。きっと気のせいだろう。


 最後の挨拶を終えると俺たちはギルドハウスへと帰還した。

 なんか、アリーナからの帰り道は凄かった。

 アリーナ席が満席で埋まっていて、さらに立ち見を含む溢れかねない人数がいたようで、帰るお客さんで大混雑していたんだ。だけど俺たち〈エデン〉メンバーが通るとモーゼに割られた海のように人波が分かれて道を作るんだ。

 なにこれ? とても気持ちよかった。


 色々インタビューなんかも受けた気がする。

 練習試合にインタビューってどういうこと? まあ全部断っておいたよ。

 ギルドメンバー全員を連れていたしな。ちょっと残念に思ったのは秘密。


 そしてギルドハウスに到着すると、一息。

 温泉入ってゆっくり――いや、メルトやレグラム、あとヴァンに色々戦法を聞かれたりしながら身体を清め、そして全員がサッパリしたところで――打ち上げだ!


「みんなお疲れ様! 今日の練習試合、すっっっげえ楽しかったな! 勝った人も居れば初めて負けた人も多いだろう! 負けたら次は勝てるように頑張ろう! みんなの動きはとても良かったし、これで〈エデン〉の実力はさらに上がったことは間違いない! 大成果だ! これを祝し、打ち上げを開始する! みんなジョッキは持ったかー!!」


「「「「「はーい!」」」」」


「それじゃあ――かんぱーい!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」


 練習だけど! ジョッキを掲げて乾杯じゃ!


「ゼフィルスさん」


「リーナ! 今日はお疲れ様。大丈夫か?」


「ええ。最初から覚悟していましたもの。でも、やっぱり全敗は響きましたわ」


「でも得るものも多かっただろ?」


「それはもう。1戦1戦が宝の山のようで。あれが高位のギルドバトル、というものなのですね」


「というより、ギルドバトルには様々な戦法がある、ということだな。思い込みで視野が狭まることがある。今まで使っていた戦法で勝てていたからこれからもこの戦法で勝てる、そんなことを思っていたら格上と戦った時に勝てない。ギルドバトルではその都度考えながら有効な戦法を模索していくことが重要になるんだ」


「はい。わたくしも知らないうちに慢心していたようですわ。勝ち続けるとこんな風になるんですね」


「だな。負けることで得るものは膨大だ。特に勝ち続けると見えないものって結構多いからな」


「……それにしてはゼフィルスさんは全勝でしたが? というより、今まで負けたことってないですわよね?」


「はっはっは!」


 リーナとギルドバトルの感想を言い合う。

 ギルドバトルは楽しめ! 常に戦法を模索しろ! フィールドが変われば戦法も変わる! 変わったフィールドをどう制覇していくのか、そこもまた楽しいんだ。

 リーナには、もっと色々と見識を広めてほしいところ。

 それができるようになった時、きっと今よりももっと楽しくなるぞ!


「ゼフィルス! 聞いて聞いて! ハンナがここにゴーレムと爆弾を仕掛けたらどうかって聞いてきたのよ!」


「ほほう? 聞こうじゃないか!」


「わたくしも参りますわ!」


 ほら、早速ハンナがゴーレムの改善案を持って来たぞ!

 ラナが連れて行ってくれた先では〈双三つ又〉フィールドの地図を広げてシエラやハンナ、メルトたちがゴーレムの配置を議論してらっしゃった。


 よほど今回の戦いでゴーレムの動きが微妙だったのが堪えたらしい。

 防御力は素晴らしかったが、いかんせん〈エデン〉メンバーが相手だと軽くあしらわれていたからな。

 ほらリーナ。こうやってどんどん改善案を出しては検討していくんだ。


 そうすれば―――さらなる高みへ登っていけるはずだ!


 もうこれを見ただけで今回の練習ギルドバトルが大成功だったと分かるな。

 俺以外のメンバーは今回、ほぼ全員が敗北を経験した。

 初めての敗北を味わった者も多い。というかほぼ全員かな?

 おかげで、みんな今までに知らなかった何かを掴んだ様子だ。


「悔しいわ。あそこでもう一手あったらゼフィルスを追い詰めることが出来たのよ!」


「分かるわ。今度はゼフィルス一点狙いで様子を見るべきかしら?」


「おいおいシエラ?」


 でも1人狙いはやめてね? 俺が退場したらどうするんだ!

 なんてな。別に構わない。その時は俺も本気で引っかき回してやるさ!


「ここにゴーレムと、ここに爆弾を仕掛けてね、牽制する感じで、近づけさせないの。どうかなゼフィルス君?」


「ほう、爆弾とゴーレムを敢えて牽制で使って疑心暗鬼を煽り、時間稼ぎや妨害に注力する戦術か。良いじゃないかハンナ」


「本当!?」


「おう。特に居るだけで牽制になるというのが良いな。ゴーレムの利点をよく利用している。早速今度試してみようぜ!」


 こうやって作戦練るのもとても楽しい。

 ああ、でも夏休み中、もうギルドバトル出来ないんだよなぁ。それがちょっと悲しい。


「次……次なんてあるのかしら?」


 あるよシエラ!? 無いはずがないよ!?

 まあ夏休みだけお休みかもだけどさ!


 まあいい。夏休みはやるべきことがたくさんあるんだ!

 今年もやることは盛りだくさん。

 次は慰労会。

 またエクストラダンジョンをエンジョイしよう!

 夏休みは、まだ始まったばかりだ!




 第二十九章 ―完―




 ――――――――――――

 後書き!


 近況ノートに次回予告を公開しました~。

 


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