第1225話 報告書と頭痛と学園長。1年生とゼフィルス。
「マジかの?」
「マジですよお爺さま」
ここは〈ダンジョン公爵城〉の学園長室。
そこではここの主である学園長が孫のフィリスから報告を受けているところだった。
なんの報告かは言うまでもないが敢えて言おう。先生強化合宿とゼフィルスについてである。
「普通なら信じがたいが、ゼフィルス君じゃからのう」
「はい。ゼフィルス君ですから」
「今回参加した先生方の半分をLV30まで上げただけでもかなりの快挙じゃというのに、未発見
「ゼフィルス君が言っていたことですが、上級ダンジョンにはこういうレアイベントが起こり得て、もし攻略できれば大きな益が得られると」
「……そして〈幸猫様〉と〈仔猫様〉という、ドロップ関連に大きな補正を得ることができるギルド設置アイテムとな? 確か、〈救護委員会〉から報告が来ていたことがあったのう。『幸運』でドロップが増えると。しかし、カイリ君が〈エデン〉に戻ってからはぷっつり無くなったと言っていたが、これが原因じゃったかぁ」
「ゼフィルス君の話では〈幸猫様〉と〈仔猫様〉には正しい作法があって、ギルドに神棚を設置してお祈りをするほか、ドロップで良いものが来てほしければ良い
「…………これがいきなり世に出たら混乱必至じゃのう」
「Dランク以上のギルドが全て〈猫ダン〉に詰めかけることになるでしょうね」
「…………はぁ」
学園長は溜め息を吐いた。
ゼフィルスはなんでこう、期待を超えた上で、さらなる爆弾を投下していくのか。
またしばらく頭が痛い日が続きそうだと思う学園長である。
フィリスは学園長が受け入れるまで、いや、受け入れるのは難しいかもしれないので落ち着くまでの間、報告書を捲って興味深そうにそれを読んでいた。
それは多くの先生方が毎日のように書きまくった報告書で、ゼフィルスの功績を大きく評価する文がほとんどだった。しかもむっちゃ分厚い。
元気そうでなによりである。
「あー、フィリスから見てゼフィルス君はどうじゃった?」
なんとも抽象的でどうとでも捉えられるセリフだが、仕方なかった。うん、こんな質問になってしまうのも仕方なかったのだ。
「ええ。ゼフィルス君はとても元気にはしゃいでおりました。初日はまだまだゼフィルス君が率いることに疑問を持つ先生もいましたが。3日もすればそんな疑問を持つ先生は消え、5日目にはゼフィルス君が「えいえいおー」と言えば「おー」と返す先生しかいませんでした」
「……そうか」
もうわけわからん……。
そんな心境を飲み込んで学園長はもう1つの報告書を読む。
こちらにはゼフィルスが何をしたか、何を言ったか、どんな戦闘力を有していたのか。
そんなことが事細かに書かれていた。書類がとっても分厚い。
これは他の先生方の1週間の成果である。
フィリスもそれを数枚捲って。「ふふっ」と笑ってからそっと元に戻した。
これはそのまま研究所に預けましょうと思う。だって分厚いんだもん。
それに「ゼフィルス先生の5日目の夕食は手作りっぽいサンドイッチでした。とても美味そうに食べていました」なんて報告は別に知らなくて良いのである。
研究所で役に立ちそうな情報だけ精査してから戻ってきてくださいね、と思いながら報告書を一撫でして、そっと
「お爺さま、まずはやるべきことをいたしましょう」
「そうじゃな。発現条件の発見やギルド設置アイテムはともかく、先生方のレベルを期待以上に上げてくれたのは僥倖じゃ。それにゼフィルス君からの攻略情報もある。本来はこれだけでとんでもない報告なんじゃがのう……。こほん、それはともかく、ここまでお膳立てしてもらえれば先生たちだけで安全にレベル上げは出来るかの」
「ですね。私がその辺を調整いたしますのでお爺さまは未発見
「ちょ、フィリス、それ大変な方の役目――」
「頑張ってくださいお爺さま」
「――了解したのじゃ」
いくら公爵家の当主といえど孫には甘い。
学園長は一瞬遠い目をしたのち覚悟を決めて「うむ」と頷いたのだった。
◇
「気が付けば1週間、むっちゃ頑張ってたら終わってしまったー!」
「えっと、お疲れ様ゼフィルス君?」
「ああ。ありがとうハンナ。あと夕食のお弁当も本当に助かった!」
朝の自分の部屋で、俺は思わずといった感じにシャウトしていた。
ハンナがそんな俺に温かいお茶を入れてくれたのでいただく。
ああ、茶が美味いんだぜ。
ダンジョン週間という9日間の短期休暇。
ゲームであればこの間にガンガンダンジョンに潜って進めていく重要な期間。
しかし、最初の2日以外の7日を、気が付けばクエストに全て使ってしまっていたからさあ大変だ。
とても楽しかったです。
22時までぶっ続けでこんなに潜っているとか初体験だったのでさらに楽しさがドン。
しかし夕食は各自持ってきた食料で済ませるスタイルだったのでちょっとどうしようか悩んだのだが、そこに立候補してくれたのはハンナだったのだ。
「夕食、ダンジョンで食べるの? あの、よければ私が作ってあげるよ?」
そんなことを上目遣いされながら言われれば「お願いします」しか言えない。
ハンナには本当にお世話になります! おかげで毎日の夕食も楽しみだったよ。
「そういえば〈氷ダン〉の進捗状況ってどうなってたっけ?」
「ゼフィルス君がいないからみんなまだ〈氷ダン〉の最奥に到着してないみたいだよ? でももう少しなんだって」
「う~む。さすがはランク7ダンジョンの41層以降。『フルマッピング』だけでは時間が掛かってるな」
〈エデン〉の〈氷ダン〉攻略だが、俺が参加しなくなったことで自分たちでやってみようということになり話が進んだのだが。いくつもの苦難が待ち受け、そもそも階層門探しもなかなかに難しく、進むのにとんでもない時間が掛かった様子だ。
「シエラさんたちもゼフィルス君のありがたみを改めて感じたって言ってたよ」
「それは良いことだ」
どうやら俺の居なかった7日間、未知のフィールドを攻略しようと頑張ったことで、本来未知のダンジョンというのがどれだけ難易度が高いのかを思い出したのだという。
攻略階層は56層までは行けたそうだ。
それでも56層まで行けたのは〈イブキ〉があったからだろうな。
階層門の場所が分からないというのは本当に攻略に時間が掛かるのだ。
俺が地図を全部覚えた理由でもある。
これは後でシエラから「私たち、あなたがいないと……」とか言われて頼られちゃうパターンか? いいぜ、俺に全て任せておけ!
「あ、それと新メンバーなんだけどね。またゼフィルス君に鍛えてほしいんだって」
「おっとそれも良いな。この1週間でどれくらい強くなったか見てみたい。三段階目ツリーは開放したかな?」
「ま、まだ難しいんじゃないかな? まだ1週間だし」
「おっとそうか。なら今後のスケジュールは~」
新メンバーのレベル上げに〈氷ダン〉の攻略。
放課後は新メンバーのレベル上げ&攻略に付き合い、来週の土曜日に〈氷ダン〉を攻略することに決めた。
ということで今日の放課後、早速ギルドハウスで1年生と待ち合わせをする。
「ゼフィルス先輩! 今日からまたよろしくお願いするであります!」
「ようヴァン! どうだダンジョン攻略の調子は?」
「はっ! ゼフィルス先輩から受け取った地図やお勧め育成論のおかげでしょう、今の所大した障害無しに進めているであります!」
「おお~、いいね。それじゃあどこまで進んだんだ?」
「そこから先は私が申し上げますわ!」
「おおノーア!」
そこにやって来たのはノーア。相変らず高貴なオーラがバンバン出ている金髪お嬢様だ。
1年生新メンバーたちのリーダーも務めていて、2つのパーティの情報を常に共有して持っているありがたい存在だ。
「ごきげんようゼフィルス様! 今日からまたご教授願いますわ!」
「こちらこそ。またよろしくな」
「はい! それで進捗の方ですが、ヴァンさんたちも私たちのパーティも初級中位ダンジョンは全て攻略が完了いたしましたの!」
「お、マジか!」
「はい! 今はヴァンさんたちのパーティが初級上位ダンジョンの〈孤島の花畑ダンジョン〉を、私たちのパーティが〈付喪の竹林ダンジョン〉を攻略中ですわ!」
「良いペースだなぁ」
もう
LVもみんな30台らしく、3人パーティであるヴァンのところに至ってはLV33に達しているとか。
凄く順調だな。ちなみにネックだったボス周回のためのボスリポップ方法。〈ボス部屋の門ドカンッ!〉はハンナの上級爆弾か上級〈金箱〉産武器と〈二ツリ〉スキルのコンボでリポップできたため解決。現在は新メンバーだけでボス周回をしているぞ。
このLVなら十分に最奥のボス、〈サボッテンダー〉や〈竹割太郎〉を屠ることができるだろう。
ちなみに2人のパーティは別々のダンジョンに入っているだけで、まだ
なら早速行きますか!
「じゃあまずは〈孤島の花畑ダンジョン〉から攻略しようか」
「「はい!」」
1年生の育成に〈氷ダン〉の攻略。
先生方のその後も気になるし、〈35エリア〉が終われば上級中位ダンジョンが待っている。
まだまだやりたいこともやることもてんこ盛り。
まあ、いつも通り1つずつこなしていこう。
行こうか、1年生たちよ。
一緒に上級ダンジョンで肩を並べるのが、俺はとても楽しみだ。
第二十六章 ―完―
――――――――――――――
あとがき失礼いたします。
近況ノートに次章予告を貼り付けました!
次章ちょっと気になる方はどうぞ!
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