第1185話 撤退の〈カオスアビス〉、モンスターの襲撃。




 俺はハーラル。

〈カオスアビス〉のサブマスター、ハーラルだ。

 実は今大変なことが起こっているんだ。


〈サクセスブレーン〉主導の〈エデン〉拠点、三方向からの包囲攻撃作戦。

〈カオスアビス〉は北方向から攻撃に参加していたが、〈エデン〉の守りを突破出来なかったのだ。

 完全に待ち構えられていたとはいえ、相手の防衛はたったの3人。

 しかし突破は出来ず、さらには〈集え・テイマーサモナー〉が手薄になった俺たちの拠点に強襲を掛けてきたとの急報が来て……。超ヤバい状態に陥った。


「撤退なのだよ! 5人を残して撤退、最短距離を走りすぐに〈集え・テイマーサモナー〉へ攻勢を仕掛けるのだよ!」


「「「「おお!」」」」


 ロデンの指示は的確だった。

 拠点を落とされれば敗北。

 それは、それだけはなんとしても避けなければならない。


 俺たちはすぐに5人を殿にしつつ撤退を開始。

 しかし、どうやらこの5人にはまだまだ〈エデン〉への攻撃を続けてもらう予定のようだ。

 20人でも突破出来なかった守りを5人で突破するなんて無理だろう。


 だが、そんな疑問にキールが答えてくれた。


「あれは攻勢を続けることで〈エデン〉の戦力をそこに集中させ続けるのが狙いだね。僕たちの目的は〈エデン〉の陥落。理想は〈カオスアビス〉で陥落したかったが、難しければ〈獣王ガルタイガ〉か〈サクセスブレーン〉が落としても構わないんだよ。だけど、さすがに向こうも単独では無理だ。3方向からの攻め、これを維持することで〈エデン〉を落とせる可能性が増す。同時に同盟の体裁も保つことができるのさ」


「な、なるほど。つまりは防衛突破が目的じゃなくて、〈エデン〉の戦力を引きつけておくのが目的で重要なわけだな」


「それに相手の3人は守り特化だった。こちらの5人がやられて退場するということもない。そして突破出来ないのなら大人数を残していても仕方がない。少数で攻めても結果が変わらないからね。故に5人を残したんだろうさ」


 言われて深く納得する。瞬時にそんな判断ができるなんてロデン、やっぱすげぇ男だぜ。


「要は今は〈エデン〉を気にしなくていいということだよ。それより〈集え・テイマーサモナー〉が重要さ」


 そうだった。まさか〈エデン〉という最強ギルドを、このギルドをどうにかしないと1位はあり得ないというギルドを。

〈エデン〉を攻め陥落させるのは全ギルドの望みで願いだったっていうのにその作戦を邪魔してくるギルドが居ようとは、夢にも思わなかった。


「まさか〈サクセスブレーン〉が作製した新罠がばらまかれまくったフィールドで〈カオスアビス〉にまで攻めてこられるなんて、いったい〈集え・テイマーサモナー〉はどんな手を使ったんだろうね?」


 あ、そっち?

 どうやら隙を突いてくるギルドが出てくる可能性は無いと思っていたのは俺だけだったようだ。

 キールはそれよりも〈サクセスブレーン〉の新罠、〈拘束〉と〈爆発〉のトラップ〈きわめてドッカン〉が破られたことが不思議なようだ。


「あれはエリア内に足を踏み入れた相手を拘束して時間を稼ぐと共に、無理に『罠耐性』などで突破を図ると爆発する凶悪なトラップ。さらに爆発音でどこまで接近しているのかもわかってしまうという高性能だ。さすがは〈サクセスブレーン〉が採用した罠だね」


 キールの話に俺は聞き役に入った。キールは話は長いが頭が良いので俺は口を挟まない。その方が早く終わるしな。


「拘束はまだ突破できるよ。だけどその後の爆発が無効化されたのが分からない。爆発音があれば〈エデン〉を攻めていても分かるはずだけど。実際に〈カオスアビス〉の拠点が強襲されるまで南西エリアに接近していることに気が付かなかった。〈集え・テイマーサモナー〉には何かあるね」


 話が長いぜ。


 俺たちは猛烈ダッシュで拠点へと戻る。

 道中は〈極めてドッカン〉が仕掛けられているので、俺たちは事前に知らされていた安全なルートを走って進む。このルートがないと伝令が被害に遭うとのことで、伝令役はしっかりとこのルートを把握しているのだ。

 俺たちは北側から西に出て一気に南へ降ってきたが、こっちの道の罠は解除されていなかった。相手は他のルート、東側から攻めてきたのだろう。


「ここから罠は無い! もうすぐだ! もうすぐ到着――あんぎゃー!?」


「モーブ!?」


「モーブのやつが吹っ飛んだぞ! 罠だ!」


「!! 周りに反応! 〈集え・テイマーサモナー〉のモンスターたちだ!」


 先頭を走っていた伝令役のモーブが吹っ飛んだ! トラップに引っかかったんだ!

 しかもそれを見計らっていたように角からわんさかモンスターの団体様がおいでなすった!

 その全てが小型モンスター。しかし、数はかなり多い。


「テイマーやサモナーたちを探せ! 『ダークエナジー波動弾』! 『闇エネルギーボンバー』!」


「ジェイ、大技はもう少し引きつけてから撃て! 無駄弾を撃つな! MPを常に意識しろ!」


「くっ!!」


 キールの言うとおり、俺たちは〈エデン〉戦で大技を発動しまくりMPの消耗が激しく継続戦闘能力にかなりの危機感があった。

 大丈夫なのは食べたものからMPを吸収するロデンくらいのものだ。


「ふっふっふ、大猟なのだね。『食腕・大食漢』! 『闇の触手』!」


 ロデンが前に出る。ロデンは捕まえた獲物からMPを吸収し、『お裾分け』によってMPを仲間に分け与えることができる。

 先ほどは壁や結界など、無機物からはMPを吸収できず難儀していたが、モンスターからはMP吸収が可能だ。


 と思ったら闇の触手が触れる前にモンスターは一斉にピタッと停止して反転、撤退していったのだ。


「な! 待つのだね僕のごはん!」


「ロデン先輩、無理に戦う必要はないよ! それよりも僕たちの拠点がどうなっているかの方が非常に重要で――」


「キール長い! ――行きますよロデン先輩!」


「!! そうだったのだね!」


 ジェイの言葉にハッとするロデンがまた走り始める。

 ロデンは【暴食】に就いているせいか、飢えに意識を持っていかれることがある。特にMPやHPが極端に減っている状況だと飯食って回復に意識がいきやすく、今も拠点のことが意識から僅かに飛んだらしい。


「しかし、〈集え・テイマーサモナー〉がこうも簡単に撤退したのが気になるね」


 キールがそう呟いたときのことだった。


「第2波来たぞ!」


「待ち伏せだ!」


「なんだあれは!」


「わ、ワイバーンだ!」


「でっかい猫もいる!」


「あれは、噂にあった〈ベヒモス〉じゃないか!?」


 T型交差点丁字路を左折(図G―24)。

 後もう少しで〈カオスアビス〉の拠点というところで今度は大部隊。

 率いているのは、〈集え・テイマーサモナー〉のサブマス、エイリンのようだ。

 空から飛行モンスター多数。さらに地上からも巨大な猫型モンスター他、様々な大型種のモンスターが行く手を遮ってきたのだ。


 どうやら〈集え・テイマーサモナー〉は俺たちを拠点へと行かせないつもりらしい。


「突破するのだね!」


「「「「うおおおお!!」」」」


 ここを突破すれば我らの拠点。

〈集え・テイマーサモナー〉を蹴散らし、全力で防衛するのだ!

 そして〈集え・テイマーサモナー〉対〈カオスアビス〉の戦いが始まった。

 ―――と思ったら。


「あっれえええ!? 後方! 後方! 後ろから第3波接近――!! 挟撃だーー!?」


「「「「なにぃぃぃぃぃぃ!?!?」」」」


 先ほど曲がった丁字路ていじろの反対側から、大部隊が襲ってきたのだった。




 ――――――――――――

 後書き失礼いたします。


 今年もこの時期がやって来ました。もうすぐクリスマスです!


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 楽しみにしていてください!

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