第976話 〈新緑の里〉の暗躍。他のギルドよ早よ落ちろ。
「ローゼル。首尾の方は?」
澄んだような女性の声が側にいた男子に問いかける。
「問題ありません。作戦通り現在〈ハンマーバトルロイヤル〉を誘導し、〈明るい光の産声〉に攻勢を仕掛けさせております」
そう答えたのは〈戦闘課1年2組〉所属のエルフ、エイローゼルだった。
そして問いかけたのは3年生のリーエイファ。みんなからエイファと呼ばれ親しまれている。Bランク非公式ランキング第三位と言われているギルド〈新緑の里〉のギルドマスターだった。
狙いはピラミッド山の南西、ギルド〈明るい光の産声〉。
そこは今、〈ハンマーバトルロイヤル〉と〈新緑の里〉に攻められている最中だった。
〈エデン〉が活発に動いているこの状況で、少しでも早く、というか自分の拠点が狙われる前に決着を付けたいギルドが、早めに格下を下そうとした結果でもあった。
〈明るい光の産声〉はBランク非公式ランキング第十二位。
それなりの位置にランクインしてはいるものの、相手が悪かった。
攻めているのはBランク非公式ランキング第六位〈ハンマーバトルロイヤル〉と第三位〈新緑の里〉だったからだ。
〈ハンマーバトルロイヤル〉はドワーフなどを内包する、ハンマーや破壊系に特化しまくったギルド。
〈防壁〉系を使う〈氷の城塞〉や〈エデン〉に対抗できるとして注目されていたギルドだったのだが、〈氷の城塞〉は距離が遠く、〈エデン〉には斥候を潰されまくって攻められず、あまり活躍が出来ていないギルドでもあった。
とはいえその実力は高く、〈光属性〉や〈聖属性〉、ヒーラーなどが多く在籍する〈明るい光の産声〉を相手にガンガン有利に攻めていた。
彼ら彼女らのハンマーは遠距離攻撃をブレイクし、〈防壁〉などの壁や罠すらそのハンマーで粉砕して突き進む。そこへ。
「『癒しの
「『精霊ハイヒール』!」
「『アルフ小規模結界』!」
エルフたちの援護が加わり、〈明るい光の産声〉では手に負えない事態となっていた。
そう〈新緑の里〉のした事は他のギルドの
〈新緑の里〉だけで〈明るい光の産声〉を攻めてもよかったが、すでに〈零の支配〉を単独撃破しており少々の被害を出している。
これ以上被害を増すより他のギルドを援護して被害を少なくしようという戦略だった。
目的は残り6ギルドになるまで他のギルドを減らすこと。そして〈新緑の里〉が生き残ること。
そうすればポイントに関わらずAランクへと至れる。
自分たちは援護に徹するので〈明るい光の産声〉を落としてほしい。もちろんポイントは全てあなたたちにあげよう。
そんな甘言で〈ハンマーバトルロイヤル〉を味方に引き込み、〈明るい光の産声〉へ侵攻させたのだ。
「わはははは! 残りのHPを気にせず暴れるのは最高だな! くらえ『メガトンクラッシュ』!」
「まったくだ! 知らない間にHPが回復してらぁ! 『ゴールデンハンマー』!」
「攻めろ攻めろー! 落とせ落とせー! 『撃滅の三打』! 『暗黒の一撃』!」
〈ハンマーバトルロイヤル〉は順調に、そして歓声を上げながら〈防壁〉や罠を破壊し、道を切り開き、防衛モンスターまで蹴散らして、とうとう〈明るい光の産声〉の拠点に張り付いた。
「ドゴーンドゴーン!」
「「「ドゴーンドゴーン!!」」」
「「「やめろーーー!?」」」
変わった掛け声で拠点をハンマーで叩く〈ハンマーバトルロイヤル〉。
周りでは防衛のつもりなのか、ハンマー使いたちがハンマー投げのように自分を中心にクルクルハンマーを回し、近づいたら危険と牽制していた。
〈明るい光の産声〉のメンバーは果敢に飛び込むが、これを止められなかった。
一部、援護するエルフに攻撃を仕掛けてきたがそれも〈ハンマーバトルロイヤル〉と〈新緑の里〉という二大ギルドに蹴散らされ、もうどうしようも無くそのまま拠点のHPがゼロになってしまう。
ポイントは〈ハンマーバトルロイヤル〉が全部取得した。
「がはははは! やったぞー!」
「今回は誰も退場してねぇ、俺たちの大勝利だ!」
「これで一歩Aランクに近づいたぞ!」
「くぅ。マッスラーズと〈エデン〉に斥候が軒並みやられたときはどうなることかと思ったが」
〈ハンマーバトルロイヤル〉のメンバーは盛り上がる。
ここで一気に800点ものポイントを稼いだのだ。
〈新緑の里〉や他の多くのギルドたちをポイントで抜かし、一気に上位に昇ってきたことで歓声を上げたのだ。
「ありがとよ〈新緑の里〉」
「ああ、なんかわりぃな、俺たちだけこんなに点を貰っちまってよ」
「後で礼をさせてくれ」
「いいえ、お気になさらず。僕たちの目的にも合致しておりますゆえ」
がたいの良いハンマー使いの男子の言葉にローゼルが首を振って答える。
「そうか? がはははは!」
「〈新緑の里〉と組めば俺たちは怖い者なしだぜ!」
「〈エデン〉とマッスラーズは勘弁だけどな」
「「「がははははは」」」
今まで良いところ無しだった〈ハンマーバトルロイヤル〉だったが、ようやく戦果をあげたのだ。完全に浮かれていた。
――しかし、その浮かれ具合も強制的に終わることとなる。
〈ハンマーバトルロイヤル〉のギルドから狼煙が上がっていたことによって。
「ん? ――お、おいあれを見ろ!」
「あ? な! 狼煙だと!?」
「俺たちの拠点だぞ!」
「敵襲か!?」
「嘘だろ!? なんでこのタイミングで!」
「今の拠点にはアディたち5人しかいねぇのに!?」
それは敵襲の合図。
仲間を呼び戻すための〈ハンマーバトルロイヤル〉の警報だった。
すぐに冷や水を浴びせられた表情の〈ハンマーバトルロイヤル〉のメンバーたちが急いで撤退に移る。
「〈新緑の里〉も来てくれ!」
〈ハンマーバトルロイヤル〉と〈新緑の里〉は協力関係。
こういう時に協力を得られるからこそ〈ハンマーバトルロイヤル〉はこの話に乗った側面があった。
だが、その要請にエイローゼルは首を横に振った。
「申し訳ありません。私どもの拠点も襲撃にあっていると急報が飛び込んで来ました。私たちも戻らなければなりません」
「なんだと!?」
がたいの良いハンマー男のギルドマスターが目を見開いて驚く。
二拠点同時攻撃の報告。
自分たちが攻めている最中は当然拠点の防備は低くなる。そこへ襲撃を掛けるのは常套手段だが、二拠点同時とは運が無い。
「ギルマス、どうしますか!?」
「早く戻らんと!」
ギルドマスターはそれを聞いてすぐに〈新緑の里〉の援助を諦めた。
どうやら狼煙は〈明るい光の産声〉を攻めている最中から出ていたようで、メンバーから焦りの声が急かしてくる。
「くっ、ならばここで別れるぞ」
「はい。そちらもご武運を」
「そっちもな。おまえら急いで戻るぞ!」
こうして〈ハンマーバトルロイヤル〉のメンバーは北へ、〈新緑の里〉は南へと戻り、別れた。
しかし、〈新緑の里〉はどこからの襲撃も受けていなかった。
幾分か南へ下ったところでローゼルたちエルフの一団が戻る先でエイファが待っていた。
「ローゼル。首尾の方は?」
「滞りなく。〈ハンマーバトルロイヤル〉とは上手く別れました。向こう側も時間もありませんからすんなりと別れることが出来ました」
「それは重畳」
そう〈ハンマーバトルロイヤル〉と共闘するのは〈明るい光の産声〉戦までの約束。
共に〈ハンマーバトルロイヤル〉の防衛戦にまで連れられてはたまらない。
〈新緑の里〉としては〈ハンマーバトルロイヤル〉にも落ちてほしいのだから。
「それでエイファ先輩の方はいかがでしたか?」
「結果は分かっているであろう?」
「そうですね。上手く〈サクセスブレーン〉を焚き付けることが出来ましたか」
「上手くつぶし合ってくれれば最良だが、一方的であろうな。〈サクセスブレーン〉も〈エデン〉が怖い。今回は本気で〈ハンマーバトルロイヤル〉を落としに行くであろうよ。そのお膳立てはした」
エイファが腕を組み、ローゼルが苦笑して頷く。
そう、〈ハンマーバトルロイヤル〉のギルドに攻め込んだのは〈サクセスブレーン〉だった。
だがそれを仕組んだのはこのエイファだ。
エイファは〈サクセスブレーン〉のメンバーである【悪の女幹部】アキラと【アベンジャー】ケシリスを捕らえ、ギルドマスターカイエンへ伝言を申しつけた。
「自分たちが〈ハンマーバトルロイヤル〉の主力を拠点から引き離すからその内に攻めろ」という内容の伝言だ。
〈エデン〉が暴れまくっている現状、近くに拠点を構える〈サクセスブレーン〉もおちおちしてはいられない。
必ずこの機会は逃さないと、比較的長い付き合いのエイファは分かっていた。
そして、見事〈ハンマーバトルロイヤル〉を使って〈明るい光の産声〉を落とし、〈サクセスブレーン〉を使って〈ハンマーバトルロイヤル〉へ攻めさせることに成功する。
それから間を置かずして「アホバカマヌケー」という叫び声が響き、〈ハンマーバトルロイヤル〉が落ちたのだった。攻めに出ていた〈ハンマーバトルロイヤル〉のメンバーたちは予定通り間に合わなかったようだ。
これで残りは7ギルド。
あと1ギルドが落ちれば決着がつくことになる。
〈筋肉は最強だ:2289点〉1位
〈サクセスブレーン:1928点〉2位
〈エデン:1778点〉3位
〈新緑の里:798点〉4位
〈集え・テイマーサモナー:746点〉5位
〈表と裏の戦乱:662点〉6位
〈氷の城塞:600点〉7位
以下陥落
〈ハンマーバトルロイヤル:―点〉8位
〈明るい光の産声:―点〉9位
〈ダンジョンライフル:―点〉10位
〈サンダーボルケーション:―点〉11位
〈ミスター僕:―点〉12位
〈世界の熊:―点〉13位
〈クラスメートで出発:―点〉14位
〈中毒メシ満腹中:―点〉15位
〈零の支配:―点〉16位
〈炎主張主義:―点〉17位
〈
―――――――――――
後書き失礼いたします!
ゴールデンウィーク5日間で20話更新キャンペーン!
ご愛読ありがとうございました!
たくさんのお
今日までで合計2500もいただけました! とっても嬉しいです!
こんなにいただいたのに総合週間ランキングで10位に入れなかったのが悔しいところ。
明日にはランクインしたい!
20話達成のお祝い(★★★)お待ちしております!
作者が大好きなお
★のあげ方はスマホアプリなら、目次ページの上の方にあるレビューを押すと、★をあげるページを開くことができます!
+ボタンを3回ポチポチポチっと押していただけますと★★★を作者にあげる事が出来ます!
パソコン版では目次の下の方に★をあげる+ボタンがあります!
この+ボタンを押してもレビューコメントは書かなくていいので気軽にポチポチポチと押してみてください!
またフォローは★1個分のポイントが加算されるので、よろしければそちらもお願いします!
これからも〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます