第740話 現在〈祭ダン〉攻略中。モンスターの大群を倒せ





〈グレーターデーモン〉はそれなりに強力なボスモンスターだ。

 何しろ〈ランク10〉の中級上位ダンジョンの最後のフィールドボスだしな。

 その巨漢は人型で体長4メートルを超え、筋肉メガ盛りのマッチョ体型。

 肌は緑色をしており白目、頭はスキンヘッドで角が二本生えている。


 腕は太く、力強く振るわれた豪腕はタンクをも吹き飛ばし、魔法は破壊から状態異常まで様々。

 中級上位ダンジョンのフィールドボスの中でも最強のステータスを持つ。

 さらには40層はウェーブ5で出現するのもいやらしく、疲弊しているところに出現するものだから連戦に次ぐ連戦後のために負けることもある。


 そんな強敵ではあるが、すでに一度倒した相手だ。攻略方法も分かっている。

 そしてウェーブ毎に回復する時間もおいているため俺たちはほぼ全快状態でボスに挑める。苦戦することも無いな!


 召喚者である〈ワイト邪神官〉は〈グレーターデーモン〉を倒すまで攻撃できないため放置。

 初手で〈グレーターデーモン〉が魔法をばら撒いて来たがこっちにはシエラがいるので問題はない。MPも全回復状態なので回復に困ることも無い。

 知らないと疲弊したところの初手でいきなり潰れることがあるため要注意なのだ。


 初手をカバーしてもらった後は接近戦を選択、格闘戦でガツンガツンぶん殴り、目からビームまで出してくる巨漢を相手にシエラが盾で受け、時には流して受け持っているうちに俺たちも接近して攻撃しまくり、〈聖属性〉が効くので俺の〈天空の剣〉とラナの魔法を主軸にしてHPを削りまくった。


 接近戦だと〈グレーターデーモン〉の身体から闇系統のオーラが溢れ、強力な〈毒〉や〈火傷〉にするスリップ系の状態異常をしてくるため、近接アタッカーはかなり苦戦する事も多いのだが、ラナの回復力は〈毒〉と〈火傷〉には滅法強い継続回復なので相性がとてもよく、2回目ということもあって大した苦戦もせずに〈グレーターデーモン〉はエフェクトの海へ沈んで消えた。


 使役モンスターを倒せば召喚者を攻撃できる。

 続いて現れる〈邪神官〉は通常の単体で出てくるモンスター程度の強さのため、エステル、カルアの攻撃の連打であっという間にエフェクトの海に沈んで消えた。


〈銀箱〉を落とし、これは〈闇の覇符〉という闇属性魔法の威力を底上げする装備だった。

 メルトにでも渡すとしよう。


 41層からはボスのいないモンスター軍団と〈邪神官〉が続く、ウェーブ5はフィールドボス限定なので通常の階層は1ウェーブから3ウェーブがランダムに訪れる。

 20体×3ウェーブで最大60体だな。最低20体の時はラッキーだ。


 しかし、ランダムに出現する徘徊型ボスがネック。

 このダンジョンでは徘徊できないのでは? と思うかもしれないが、ランダムポップという方法を使い、低確率でポップしてくるので気が抜けない階層だ。

 どこかで必ず出会うため、常にHPとMPには気を配る必要がある。

 まあ、31層~39層に出現する場合、40層からショートカットして進むと出ないこともあるが、今回は出た。


 警戒していると、そいつは46層の3ウェーブ目で出現。

 名を〈ガウルバウメス〉という犬に似た爬虫系の姿をした悪魔だ。首が3つ、ケルベロスとは違いこっちは顔がトカゲに似ている。口を開けば闇のブレスを放ち、しかも3つの首が別方向へ撃つのだから侮れない。タゲ無視は怖い。


 ラナにはしっかり『聖守の障壁』を張ってもらって防いでもらい、聖属性を使ってガンガン攻めた。

 こいつも悪魔なので〈グレーターデーモン〉と同様聖属性に弱い。

 また〈祭ダン〉の徘徊型はダンジョンの特性上、奇襲も逃げもしないのでやりやすく、ドロップが良いので美味しいボスとして人気があった。ほぼ必ず出会えるため、出会ったら宝箱と思えが〈ダン活〉プレイヤーの常識だったな。


 徘徊型なのにこんなに倒しやすくていいのか? とも思うがおそらく開発陣もバトルタワー型ダンジョンなんていう、人によっては面倒に思うダンジョンでご褒美的なものを用意したかったのだろう、というのが〈ダン活〉プレイヤーの予想だった。


〈ガウルバウメス〉も相性的な意味で楽に倒すことが出来た。その後の〈邪神官〉も問題なく蹴散らし46層クリア。


 徘徊型のドロップは、これまた〈銀箱〉だった。パカリと中から出てきたのは、デフォルメした悪魔っ娘のイラストが書かれたブーツ。


「〈悪魔のダークブーツ〉だと? おいおい【悪魔】系にしか装備できない専用装備じゃないか」


 これはエリサに渡しておこう。専用装備は強いのだ。〈銀箱〉なのに〈金箱〉クラスの能力がある。これはラッキーだ!


 そうしてその後も順調にモンスターを蹴散らしながら進んでついに49層、そのウェーブ2を倒し、最後の50層へ繋がる門が出てきた事で歓声が上がった。


「やっと終わったわー!」


「長かったですね。あの数のモンスターを相手にするのは中々に骨でありました」


「10層で平均20ウェーブ、数にして約400体のモンスターだものね。このダンジョンの攻略者が極端に少ない理由も分かるわ」


「あと、1体。そしたら、カレー」


「おう、もうちょっとだからがんばれー。ただその前に休憩しようか」


「「「「賛成ー」」」」


 このダンジョンの攻略が遅々として進まない理由は今みんなが言ったとおりだ。

〈祭ダン〉はとにかくモンスターを倒す必要があるので色々とキツい。

 ちなみに詳細だが1層から19層まではウェーブ無しで1層につき10体、20層から39層までは1層につき1~2ウェーブで15体出る。そして40層から49層までは1~3ウェーブで20体出現してそれを倒せば最奥だ。なお最奥のボスは1体でウェーブは無しである。


 また30層は強制3ウェーブ、40層は強制5ウェーブと決まっていて、最後のウェーブはボス1体となっている。30層なら30体+ボス1体、40層なら80体+ボス1体だな。

 40層からガツンと数が増えて1パーティでは攻略が難しくなるんだよなぁ。

 本来なら〈祭ダン〉は複数パーティでの攻略が推奨されているダンジョンなんだ。

 まあ、骨が折れること折れること。

〈馬車〉でモンスターを全て蹴散らして進みたい。


 とはいえ今回は40層から出発したので何とか午後1時までに最下層まで来ることができた。

 これなら周回も可能、全員を中級上位ダンジョンの上限であるLV15まで上げることが出来るだろう。


空間収納鞄アイテムバッグ〉からレジャーセットを取り出して設置し、お昼を用意する。休憩ついでに昼食も済まそうという判断だ。

 最下層の転移陣は一方通行なのがネック。一度帰ったらここへ戻ってくるのにまたあのウェーブを体験しなくてはならない。そのため今日はお昼ごはん持参である。


「ねえ、ゼフィルス、ここもレアボスに挑むの?」


 用意しているとシエラからお呼びが掛かった。

 俺は振り向くともちろんと頷く。


「もちろんだシエラ。ここのレアボスはいい物をドロップするんだぞ~。上級でも活躍できる装備がわっさわっさだ!」


「わっさわっさ?」


「うむ。いっぱい手に入る。俺はここで装備を調えることを提案するぜ」


 シエラにわっさわっさは通じなかったようだ。それはともかく。

〈祭ダン〉は中級上位ダンジョンの最高峰。つまり装備も同じレベルのものが落ちる。それは上級でも活躍できるという意味でもある。上級装備もかなり性能がいい物が落ちるのだ。ここで周回し、装備を調ととのえるのが理想だろう。

 ということで俺はダンジョン週間中、ここを周回しまくりたいと思っていたんだ。


「いいわね! 私の装備も、最近ちょっと厳しいかなと思っていたのよ!」


「その、私もですね。受けるダメージがかなり大きくなってきたので装備の更新が必要ではないかと思っておりました」


 ラナとエステルも話に加わる。

 2人の言うことは尤もだ。

 というのも彼女たちの装備は〈姫職装備〉。

 つまりは〈姫職〉の初期装備だ。


 ゲーム〈ダン活〉では〈姫職〉をスカウト出来る名声値が溜まるころ、中級上位ダンジョンを攻略しているものなので、その後に加入する姫職の初期装備は中級上位ダンジョンがベースとなっている。

 強化すれば上級ダンジョンでも使えなくもないが、初期装備をいつまでも強化して使うのはあまりよろしくない。スキルや補助効果などがほぼ無いからな。

 そろそろ装備の替え時だろう。


「ここのレアボスは〈闇角獣やみつのじゅう・ブレンモール〉。通称〈ブモル〉。ミノタウロスに似た二足歩行、二対四本の腕を持った悪魔型モンスターだ。二本の両手に大剣を、残りの二本の手に杖を1本ずつ、計4本の武器を持っていて物理と魔法、両方を使ってくる」


「ここのボスは悪魔ばっかりね!?」


「まあ〈宵闇の祭壇ダンジョン〉だしな。名前の通り闇ッ気の多いモンスターが出るのさ」


 ラナのツッコミに闇ッ気が強いで答えた。

 持っている杖とかマントとか、マジ闇っぽいしな。

 ここは悪魔召喚の祭壇、ということでもあるのだろう。多分。

 ちなみに最後の〈邪神官〉はいない。レアボスポップのエフェクトと同時に〈ブモル〉が出現する。


「あと攻撃範囲が広いから、タンクだけじゃなく俺たち前衛も巻き込まれに十分注意だな。奴がバサッとマントを翻したら全体攻撃の前触れだ。防御姿勢で乗り切るか、防御スキルを発動すること」


「私も?」


「そうだな。ラナはRESがタンク並みに高いとはいえこのボスの火力は高い。できれば防御姿勢、もしくは『聖守の障壁』を発動しておいたほうが無難だ。ダウンを取られてボスのタゲが向いたら目も当てられないからな」


 ヒーラーを先に討ち取られるとか、タンクが討ち取られる並みに大変なことだ。

 一気にパーティが瓦解する可能性がある。


「分かったわ! こっちは気にしなくても大丈夫よ!」


「助かる」


 ヒーラーが自分で防衛してくれるのは本当に助かるからな。俺たち前衛陣は後方に気兼ねなく戦えるというのは本当にやりやすいんだ。その辺、ラナは分かっている。


「ゼフィルス、ボスのユニークスキルは?」


「おっと、それがあったな。〈ブモル〉のユニークスキルは近接に特化している物理攻撃だ。その名も『ブレンモール流・轟波二剣斬ごうはにけんざん』。二つの杖を捨て、持っていた大剣二つを二つの手で持ち、その無駄に盛り上がった筋肉をさらに盛り上げて振るい破壊するように斬ってくる豪剣だ。しかも大剣は二つあるから二撃目が続けてくるのが注意点、一撃目で防御スキルを破壊し、二撃目で直撃を狙ってくる。これが決まるとタンクでもやられる危険が高い。強力なユニークスキルだ」


 ――別名〈タンク二刀両断〉。

 一撃目が防御破壊性能を持っている厄介なユニークスキルだ。

 相手がユニークを発動した。それに釣られて単発の防御スキルを発動すると、一撃目を受けた時点で防御スキルが破壊されてしまうのだ。そして無防備な隙に二撃目がヒット。

 大ダメージは免れず、たとえ耐えたとしてもダウンする可能性が高い非常に危険な攻撃だ。


 対策は万全にしないとな。



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