第696話 次はロゼッタとフラーミナの番!




 カタリナが終わると次はロゼッタの番だ。


「よろしくなロゼッタ」


「よ、よろしくお願いします!」


「そんなに硬くならなくてもいいぞ?」


 ロゼッタは少し緊張しているようだな。

 ちょっと硬くなっている。


 ロゼッタの装備は白銀を基調とした騎士鎧。クラス対抗戦のときより少し豪華になっていた。

 攻撃担当のエステルやアイギスとは違い、いかにも硬そうなアーマーを前面に装着している。肩、腕、スカートの両端にも金属のパーツを着け左手には大きなヒーターシールド、右手には、今は仕舞っているが武器は片手剣だ。


 同じ【姫騎士】でもエステルは両手槍、アイギスは片手槍と二人共槍なので、片手剣は新鮮だ。

 今までスラスト系で育成してきたが、今度はスラッシュ系で育てる事になるな。


「さて、ロゼッタには急遽【姫騎士】に就いてもらったわけだが、大丈夫だったか?」


「はい! 【聖騎士】より【姫騎士】の方がありがたいです! ゼフィルスさんには改めて感謝を!」


「硬い硬い。いつもカタリナやフラーミナと話すように気楽でいいぞ?」


「い、いえ、そんなわけには」


 3人で話すとき、ロゼッタは普通に敬語抜きで女子高生のノリで話しているのを俺は知っている。俺の事も普段は「勇者君」と呼んでいるみたいだしな。

 しかし、さすがにあのノリで話すのは難しいようだ、騎士だしな。

 まあ、徐々に慣れていけばいいさ。


「さて本題だが、ロゼッタはタンク兼アタッカーとして育成するが、問題無いか?」


「はい! 問題有りません!」


 ロゼッタは純粋なタンクでは無くアタッカーも兼任する。

 というのは【姫騎士】のSUPの制限が〈STR+5〉で固定されているためだ。

 毎回LVが上がる毎にSTR+5振られるので最終的にLV75の時点で【STR 385】以上になることが決まっている。

 これも織り込んでタンクとして育てないといけないわけだ。結構これが厄介で難しいんだよな。


 タンクとしてヘイトを集めるスキルを獲得しつつ、攻撃、防御のスキルを獲得してもらい、SUPも基本的には制限以外、なるべく防御に振ってもらう。

 もちろん三段階目ツリーが開放されたらロゼッタにも〈馬車〉を装備してもらう予定だ。四号車を作らないとな。


 ロゼッタの目指す先は〈上級姫職〉【天守護の騎士姫】だ。

 それも織り込んだ育成スケジュールを組んでいく。

 ふっふっふ。将来が楽しみだぜ!



 続いてはフラーミナ。

 垂れ犬耳が可愛らしい、一見ちょっとおとなしめに見える女子だ。

 しかし、割とカタリナやロゼッタのツッコミ役で元気いっぱいというイメージが強い。可愛い声で結構耳に残るのだ。

 大きなクリクリとした目をしているのと少々背が小さいのでロリぎみに見える。


 オレンジ系の軽装、というか学生服に近い服装備を着ていてセーターのような上に短いミニスカート、そして白とオレンジの大きなマントを装備している。

 武器は片手杖のワンド。左手は装備制限のために装備出来ない仕様だ。


「よろしくお願いします! ゼフィルス君に育成してもらえて光栄であります!」


「おう。こちらこそよろしくな。それでその語尾はいったい?」


「はい! 私は少し個性が足りないと思うのでパメラさんに相談に乗ってもらったところ、特徴的な語尾を付ければ個性が出ると言われたであります!」


「パメラに相談しちゃったのか」


 確かにパメラの「デース」は中々に個性的だ。

 個性を出したいという相談を思わずパメラにしてしまったというのも分からない話では無いが、少し人選ミスのような気がしなくもない。


「あの、やっぱり変ですか?」


 フラーミナは背が小さい。そんなフラーミナがうるうるとした視線で見上げてきます。

 可愛い。


「…………うーん。まあ今までのツッコミ担当の方がフラーミナっぽくはある」


 語尾が「あります」だと、ツッコミ役辛いぞ? 

 それにフラーミナのツッコミには助けられている。ギルドではツッコミ役というのは少ないのだ。


「そうですか? うーん、ではもうちょっと他に考えてみます」


「別にキャラ作りなんてしなくてもフラーミナはそのままで十分良いと思うけどな」


「ありがとうございます! ですが、このギルドには私よりすごい方が多いですからね。埋没しないよう自分のキャラを立てられるよう努力を重ねていきたいと思います!」


「そうか、頑張ってくれ。俺はキャラ作りを応援する!」


 ギルドメンバーが34人もいるのだ。埋没したくないという意思は分からないでもない。

 俺はフラーミナを応援した。

 とはいえ、がんばるのはキャラ作りだけではダメだぞ?


「では早速、職業ジョブの育成を始めようか」


「お願いいたします!」


 敬礼風に右手をおでこに当てるフラーミナ、可愛いんだけど。シェリアがときめいていたのも分かる。

 そう思ったが表には出さず、キリッとした態度で進める。茶化してフラーミナがやめてしまったら勿体ない。


「とはいえ以前の【群れの長】の完全上位版の職業ジョブだ。出来る事が増えただけで使い方はあまり変わらない。フラーミナならすぐに使いこなせるようになるだろう」


 フラーミナが就いたのは【犬力者けんりょくしゃ】。

 テイマー系の職業ジョブで最大6体のモンスターを引き連れ、基本は2体を戦わせる。

 また、戦闘中は自分の仲間であるモンスターを操り、強化も出来る。

 以前クラス対抗戦で戦った時のように防衛モンスターを指揮することも可能なので防衛にとても強い。


 またモンスター次第でオールマイティに様々な役割をこなせるのも大きな利点だろう。

 攻撃、防御、妨害、回復など多くの役割がこなせる。


 さらにテイマー系の楽しみ方はそれだけではない。

 なんとモンスターブリーダーの側面も持っている。

〈ダン活〉ではテイムしたモンスターは育成する事が可能だ。

 LVも存在しているし、規定値まで上げたら進化する個体もいる。


 一時期ゲーム〈ダン活〉時代にもモンスターマスターブームが起きた事があって、「最強のモンスターマスターは俺だ」決定戦とか称してテイマー縛りのギルドバトルなんかも流行っていた時期が合った。最後は怪獣大決戦になったアレは見ごたえがあった。

 つまりはいつの時代もモンスターマスターはロマンの固まりで人気の的だということだな。

 俺も一通り育成をしまくってやったぜ。


 ただモンスターは人とは違いステータス振りができないし、スキルは自動で覚えるなど色々と違うので、ただレベルを上げて進化させる、といった楽しみしか出来ないのが少し残念ではある。まあ、開発陣にそこも人と同じにしろと言ったら最悪人の立場が無くなってしまうので、棲み分けとしてこれくらいのバランスがちょうど良いのだろう。


 おっと話が脱線したな。


「フラーミナが今回連れてきたのは前言っていた2体か?」


「はいであります! 〈リーダーウルフ〉のルーちゃんに〈スーパーモチッコ〉のチーちゃんです。二人共出てきて!」


 フラーミナがそう言うと背中のマントがひらりと揺れて内側から〈リーダーウルフ〉と〈スーパーモチッコ〉が飛び出した。

 モチッコはともかくウルフはその巨体でどこに隠れていたというのか。物理的に不可能なしまい方、これはテイマー系の能力の一つだ。


 その名は『モンスター収納』。

 モンスターを収納し、自由に出し入れする能力だ。このスキルレベルが高いほどモンスターを連れて歩けるようになる。(最大6体)


 なんでこんなスキルが必要なのか。実はテイマー系は出しているモンスターの数に制限があるからだ。

 基本的に2体まで。

 3体以上出すとモンスターやテイマー本人にペナルティが掛かり弱体化してしまう制限が付いている。そりゃ何体でも戦わせる事が出来たら超強いからな、制限は仕方が無い。

 ちなみに1体のみだと逆に強化されたりする。


 しかし、2体しか持ち歩かないというのは勿体ない。

 何しろモンスターは種類によって特色がある。相手と相性が悪かったり、逆に良かったり。

 そう言うとき『モンスター収納』を持っているとモンスターをチェンジ出来るのだ。

 つまり、常に相手に有利で戦えるという意味である。

 非常に強力なスキルだ。絶対ゲットしておくべき。


 そしてフラーミナが収納から出したモンスターがこの2体というわけだ。


「チーちゃんは初心者ダンジョンで初めて仲間になった思い出深いモンスターなんですよ」


 そう言ってモチッコを持ち上げて頬ずりするフラーミナ。

 見た目はモチッコを少し大きく、そして桜色になっているモチッコ、これは〈モチッコ〉から二段階進化した〈スーパーモチッコ〉だ。

 こんな見た目だが、モチモチした弾力のあるタンクである。相手の足をトリモチで封じるなどの妨害も可能だ。

 スーパーと付いているが所詮はモチッコ、実はそんなに強くない。


 そうしてもう一体はお馴染みの〈リーダーウルフ〉。

〈ウルフ〉がLV15の時に進化出来るようになるツリーだ。なおモンスターは人とは違いLVがかなり上がりにくい仕様となっているうえ、進化するとLVはゼロにリセットされてしまう。

〈ウルフ〉はLV8のときに〈ウガウルフ〉、LV11のときに〈ルーガウルフ〉に進化できるが、それを我慢してのLV15の〈リーダーウルフ〉に進化させたようだな。


 フラーミナはこの他にも3体のモンスターを所持しているが、それはモンスター牧場というとある施設に預けられている。テイマーの強さは使役しているモンスターで決まると言って良い。後でそっちも見させてもらおう。

 ちなみに〈転職〉のときは牧場に全て預けていたらしい。


「へー、可愛いな。俺も触ってもいいか?」


「どうぞどうぞ! チーちゃんも喜びます!」


「プルプル」


 そう言って腕に抱いた〈スーパーモチッコ〉のチーちゃんを差し出してくるフラーミナ。


 そういえば、モチッコは斬った事はあるが実際に触るのはこれが初めてだった。

 いや、実際のモンスターに触るの自体初めてだったかもしれない。

 初めて触ったモチッコの感触は、なんかモチッとしていた。


 それはギルドハウスにあるモチちゃんぬいぐるみに非常に似た感触だった。

 あのモチちゃんぬいぐるみクオリティすげぇと、心の中で思った。




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